ジェイテクトは12月28日、転がり軸受の新規設計でモデルベース開発を取り入れ、設計期間短縮と性能向上を実現したと発表した。
近年、自動車の電動化が加速していく中、高速回転化やトルクの低損失化がより求められており、過酷な条件下で使用される軸受設計のために、ジェイテクトではモデルベース開発(以下「MBD」)を積極活用し、転がり軸受の設計期間を短縮するとともに、新たな付加価値を備えた新製品の開発を進めている。
高速回転で軸受を使用する場合、内部の各部品には大きな遠心力が作用し、通常回転時に比べ、非常に過酷な稼働状態となるほか、回転する玉の位置決めを行う保持器には、玉の進み遅れによる衝突力が繰返し作用する。高速回転下において、破損や焼付きが発生しない軸受を開発するためには、それらの作用力を正確に見積もることが求められ、ジェイテクトでは、軸受設計用の専用解析プログラムを自社開発し、軸受寿命や保持器耐久性などについて、設計者自らが事前検証することを可能とした。特に、主に保持器の耐久性評価に用いる軸受の動解析プログラムは、品種ごとに専用のモジュールを開発し、新開発の軸受についても迅速に開発できる体制を築いている。MBD化の推進により、従来2年程度要していた新しい軸受の開発期間を約1年に短縮することに成功した。
高速回転軸受の耐久性を保証するための新たな課題として、潤滑油が適切に供給されるのかどうかを事前に把握する必要があり、ジェイテクトは株式会社豊田中央研究所との協業により、石英ガラスで製作した軸受に特殊な蛍光剤を混入した潤滑油を流し込み、高速撮影システムで内部の油の流れ方を観察できる新しい試験装置を開発。これにより、世界で初めて20,000min-1の高速回転域における軸受内部の油流れを可視化することに成功し、高速領域特有の希薄潤滑状態を直接観察することが可能となった。これらの結果と油の流れ解析シミュレーションとの相関を取ることにより、軸受内部に流入する潤滑油の量を事前予測することが可能となった。
【カスタマーへの貢献】
- 品質の高い軸受製品を短納期で提供でき、カスタマーの開発期間の短縮に貢献
- カスタマーのユニット性能を向上させる軸受仕様を提案