文・写真:岩田 一成(キャンピングカーライフ研究家)
急速に広がる「多様性」への気づき
昨年4月の緊急事態宣言から1年以上経過した現在も、新型コロナウイルス感染症の脅威が続いている。そんな中、キャンピングカーに対する注目度は高まる一方だ。
これまでのようにコアユーザーが中心ではなく、もともとキャンピングカーに縁のなかった幅広いユーザー層にも、キャンピングカーの多様性に対する“気づき”が急速に広がっている。それが、現在のキャンピングカー人気を後押しする大きな要因だ。
そもそも、「キャンピングカー」というと、一般的にどんなイメージを頭に思い浮かべるだろうか。これまでは、「キャンプをするためのクルマ」「旅行をするためのクルマ」というレジャー専用車のイメージを持つ人がほとんどだったと思うが、実はそうした使い方はキャンピングカーというマルチパーパス・ビークルの一側面に過ぎない。
「移動できる家」という独自の個性を活かし、遊びや仕事、防災など、さまざまな用途に活用できること。その「多様性」こそがキャンピングカーの真の魅力であり、ほかのクルマにはない唯一無二のアドバンテージでもある。
「動く家」であることの優位性
普通車にはないキャンピングカーの優位性は、生活するために必要な設備が車内に備わっていることだ。生活エリアの中心には、テーブルを挟んで食事や休憩ができるダイネットスペースが確保され、家と同じようにゆったりと就寝できるフラットなベッドスペースも用意されている。給排水設備を備えたキッチンで自炊ができるほか、トイレ&シャワールームを完備している車両も多い。
それらの設備に加えて、快適なキャンピングカーライフを支えているのが、生活に必要な電力をまかなうサブバッテリーシステムだ。キャンピングカーには、車両のバッテリーとは別の「生活用電源」(サブバッテリー)が備えられているため、照明や冷蔵庫など電気を必要とする機器を使用することができ、車内のコンセントで家庭用電化製品も使える。
「くつろぐ」「寝る」「電気を使う」「調理をする」など、生活に必要な要素を車内で完結でき、しかもプライベート空間ごと移動もできるキャンピングカーは、まさに“動く家”。その優位性は、アウトドアや旅行などのレジャーはもちろん、ビジネスや防災、コロナ禍における隔離施設としてなど、あらゆるシーンで役立つ。
コロナ禍のキャンピングカー活用法
レジャー用途でのキャンピングカーの優位性は数えきれないが、コロナ禍でキャンピングカーが注目されているのには、どのような理由があるのだろうか?
まず、どんな場所でもプライベート空間を確保できる特性を活かして、新型コロナウイルスの感染を防ぎながら旅行を楽しめること。公共交通機関を使わずに目的地まで移動できるのはもちろん、トイレが装備されている車両なら、公衆トイレを使わずに車内で用を足すことができ、車内のシンクで手洗いやうがいをすることで感染を予防できる。
食事は自炊をするか、テイクアウトした料理を車内で食べ、夜はベッドでゆったりと就寝。生活のすべてを車内で完結できるキャンピングカーなら、不特定多数との接触を避けながら安心して旅行を楽しめる。
移動オフィス、テレワークの拠点として利用できるのも、キャンピングカーのメリットだ。車内にはテーブルとソファが完備され、コンセントでスマホやノートパソコンの充電も可能。Wi-Fi環境さえ整えれば、車内が快適なワークスペースに早変わりする。クルマが止められる場所であればどこでもオフィスになるので、思い切って自然の中に出かけて、窓から景色を眺めながら仕事に励むのもいいだろう。
多目的に使える最強のツール
キャンピングカーをどのような用途に使うかは、人それぞれ。キャンプや旅行の宿泊手段にするもよし、釣りやカヌー、登山、サーフィンなどアウトドアの拠点にするもよし、写真撮影や無線、工作など趣味を充実させる部屋にするもよし。ユーザーのライフスタイルに合わせて、どんな使い方にも対応できるのが、キャンピングカーの最大の魅力だ。
ここ数年は、防災シェルターとしてもキャンピングカーに注目が集まっている。家族が寝られるベッドがあり、スマホを充電したり家電を使用したりできる生活用電源があり、キッチンやトイレも完備されている。普段はレジャー用としてフル活用し、災害時は避難所として利用。普段からキャンピングカーに水や食料を備蓄しておけば、万が一の災害に対する安心感はさらに高まる。
自宅の敷地に駐車できる環境なら、キャンピングカーを“離れ”としても利用可能だ。自宅のコンセントからAC電源を接続すれば、エアコンや冷蔵庫、テレビ、電子レンジなどを家と同じ感覚で使用できる。自宅のWi-Fiを接続すれば、スマホやタブレットも使い放題で、インターネットテレビも見放題。ノートパソコンで、仕事も快適にこなせる。
「プライベート空間が確保されていて、お互い気を使わずに済む」という理由で、キャンピングカーを来客時のゲストルームや、子供が友人と勉強やお泊まり会をする際のプライベートルーム、趣味を楽しむホビールームとして活用しているユーザーも多い。
キャンピングカーは、可能性が詰まった最強のマルチツール。レジャー、ビジネス、防災シェルター、自宅の離れ……。どう使うかは、乗り手のニーズやライフスタイル次第だ。
プロフィール
岩田 一成(キャンピングカーライフ研究家/ライター/HOT MIND代表)
1971年東京都生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業・ 8年間の出版社勤務を経て2003年3月に独立。同年4月より、編集工房『HOT MIND』代表として編集業務の請負を開始。ライター・エディターとして、自動車専門誌を中心に様々なジャンルの雑誌・ムック製作に携わる。取材・インタビュー経験は3000件以上。座右の銘は、『商人ではなく、常に最前線に立つ職人であれ!』。