7年ぶりにフルモデルチェンジしたシトロエン・C4ピカソを箱根で試乗した。日本市場に導入されるのは「C4ピカソ」と「グランドC4ピカソ」の2モデル。従来、日本でC4ピカソと呼ばれていた3列7人乗りは、本国ではC4グランドピカソと呼ばれており、今回のフルモデルチェンジを機に日本も本国同様に3列7人乗りがC4グランドピカソを名乗り、あわせて2列5人乗りのC4ピカソが日本で〝正式〟デビューを果たした。
両モデルは単にシート数が異なるだけではなく、それぞれに個別のデザイナーを起用し個性あふれるデザインを持つ。
C4ピカソは、サイドウィンドウのクロームモールが特長的で、シトロエンの“C”をモチーフにし、サイドウィンドウを大きく取り囲む。全体にエッジの効いたアクセントを持たせ、スポーティさを強調している。一方、グランドピカソは対照的に穏やかで優しいラインを持つファミリーカーテイストにデザインされている。
開放感を謳うモデルも多いが、C4の場合は別格ともいえる。「上下の視界は最大70度」というフロントウインドウと、広大なフロントガラスのルーフがもたらす開放感は圧巻の一言で、頭上から光が降り注ぐ感覚はまるでジェット戦闘機のキャビンを思わせるよう。また、キャビンがガラスで覆われているので閉塞感がなく、前席だけでなく後席でも空と一体となってドライブが楽しめ、日常の生活に彩りを与えるだろう。
インテリアも斬新で先進的だ。過剰な加飾もなければファミリーカーにありがちな生活感を漂わせることなく、他車とは一線を画している。インパネ中央には上下2段式のフルデジタルのディスプレイ(上段12インチ、下段7インチ)があり、上段は速度や回転計、燃費などの情報を表示しつつ、デザインを角型や丸型など3パターンから選ぶことも可能。下段はエアコンやオーディオ、ナビゲーション等の操作を集約したタッチパネルとなっており、機能性も非常に高く直感的な操作が行なえ、物理的なボタンやレバー操作を廃することで未来感を演出している。
シートは、全席が独立した形状となっており、体が包み込まれ長時間の移動も快適に過ごせるだろう。シート表皮のデザインもユニーク。アシンメトリーのデザインは、乗る人が内側に向き会話がしやすいように工夫され、前衛的な印象を与えるとともに非日常感を醸し出している。
グランドC4ピカソはマルチパーパスとして、乗員人数や積載に合わせた多彩なシートアレンジが可能。さらに、3列目シートは収納可能で、ワンアクションの操作は女性にありがたい。2列目シートまでを収納すればラゲージスペースは最大2181㍑にまで拡大する。また、テールゲートは低く広いので、荷物の積み下ろしも容易に行なえる。
エンジンはBMWと共同で開発された1・6㍑ターボエンジンが搭載され、C4ピカソは、アクセルを踏めば小気味良く峠道をしなやかに駆け抜け、グランドC4ピカソでは、峠の登りでも7シーターの車重と1・6㍑という排気量を感じさせない加速をもたらし、マイルドでやさしいシトロエン独特の乗り心地を味わえる。トランスミッションはアイシンAW製「EAT6」で、省燃費と高い走行性能を両立した。エンジンの特性を含めた加減速やステアリングフィールとのバランスなどが、違和感なくピカソ独特の世界観で見事に統一されている。
安全装備面では、同社初となるアクティブクルーズコントロールやディスタントアラート、レーンデパーチャーウォーニングなどの機能も、エクスクルーシブグレードに標準装備。小さなリスクの芽を見逃さず、安全なドライブをサポートする。
マルチバーパスビークルとしての高い実用性を確保しながらも、シトロエンならではデザインセンスが随所に感じられ、強い個性を発揮している。数あるミニバンでは飽き足りないという方にはぜひ試乗をお勧めしたい1台だ。