EV化に向け急加速の欧州市場 現在売れているEVはどのモデル?ベスト10を発表!

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欧州市場を中心に、電気自動車(EV)への動きが加速している。2025年までにジャガー、2030年にはボルボ、フォード(欧州市場向け)が新車販売の全数をEVにすると発表。さらにGMも2035年までに全乗用車を、フォルクスワーゲンも2030年までに欧州販売の7割を、ランドローバーは2030年までに60%をEVにするとしており、もはやEV化は世界の潮流といえるだろう。各メーカーの動きを見ていると、今後はさらに前倒しになる可能性も高い。

では、その欧州では、現在どんなEVが売れているのだろう。市場調査会社「JATO Dynamics」が発表した20年12月の欧州のEV新車販売台数データをもとにランキングを見てみよう。(編集部)

【欧州市場・20年12月に売れたEVベスト10】

第10位 キア e-ニロ(3599台)

日本では馴染みがない起亜のSUVだが、なかなかカッコイイぞ

まず第10位にランクインしたのが、韓国キア製のEVクロスオーバーSUV。「ニロ」は2016年にキア初のハイブリッド専用車として登場したモデルで、ピュアEV仕様はその後に追加された。

64kWhの大容量バッテリーを搭載し、最大出力204psのモーターで駆動する。サイズはやや大きめのCセグに相当し、室内広さなど高い実用性も備えている。航続距離は約453kmで、英国での価格は約450万円~となっている。

 

第9位 フォルクスワーゲン e-UP!(3723台)

登場時はイマイチ感のあったe-UP!だが、航続距離が伸びて実用性も向上。人気モデルに。

VWのラインナップ中、最小となるのがAセグのハッチバック「UP!」。2013年にはEV仕様も追加され、2014年には日本でも発表された。

この「UP!」、ガソリン仕様も日本ではすでに販売を終了しているが、欧州では大幅改良を受け現在も販売中だ。2020年仕様としてアップデートされた新型e-UP!はバッテリーを変更することで7割以上大容量化し、性能を大きく向上。航続距離は従来の最大160kmから255kmとなり、都市型コンパクトEVとして十分な性能を備えている。

同時に価格も引き下げられ、ドイツ本国では約260万円。Aセグのコンパクトカーとしてはそれでも高い方だが、EVの中で見ると圧倒的に安い。セカンドカーとして最適なサイズで価格も手頃となれば、売れるのも無理がないところだ。

 

第8位 ジャガー I-Pace(4575台)

100%EVとなるジャガーのEV第1弾がI-PACE。プレミアムSUVとしても高い実力を誇る

ジャガーは2025年からEV専業ブランドとなることが発表されているが、そのジャガー初のEVとして登場したのが「I-PACE」。日本市場にも19年から導入済みだ。

EVとして専用設計されたクロスオーバーSUVで、フロント、リヤに搭載された2つのモーターで駆動、最高出力400ps、最大トルク696Nmを発揮し、0-100km/hは4.8秒とスポーツカー顔負けの高いパフォーマンスを発揮する。航続距離は438km。

価格は日本の場合で976万円から。欧州でのEVの売れ筋は400万円台に集中しているのに対し、この「I-PACE」のみちょっとクラスが別。言い換えれば、プレミアムEVの中で、現在最も人気があるのが「I-PACE」といえるだろう。

 

第7位 フォルクスワーゲン ID.4(4710台)

オーソドックスなクロスオーバーSUVのスタイルのID4。日本導入は22年以降が予定されている。

「ID.3」に続くフォルクスワーゲン・IDシリーズの第2弾。小型SUVだがID.3よりも少し大きく、VWのSUVでは「ティグアン」に近いサイズ。77kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は最大520kmという高い実力を備えている。

現在は導入記念モデルの「ID.4ファースト」の導入が行われており、通常のカタログモデルの納車は3月からスタートする。この初期限定車は600万円以上と少々高いが、標準モデルは400万円台から。国によっても異なるが、ドイツでは補助金も入れれば370万円程度になるというから、これから販売を伸ばしそうだ。

 

第6位 フィアット 500(5051台)

EVになった新型「FIAT500」。日本には21年中の導入が予定されている

日本でも人気のFIAT500(チンクエチェント)だが、2020年のモデルチェンジでEVとして生まれ変わった。当面は旧型のエンジン版も併売されるが、今後はEVのみとなる予定だ。

販売台数は、このEV仕様のみのもの。バッテリー容量24kWhのエントリーモデルと、42kWhの上級モデルがあり、42kWh仕様で航続距離は約257km。航続距離はやや短く、都市内の日常移動用という位置付けである。価格もEVとしては手頃で、42kWh仕様でも300万円台だ。

 

第5位 日産 リーフ(5263台)

お馴染み日産リーフ。ライバルが多い欧州市場でも健闘している。

2018年には欧州全体で4万台以上を販売し、欧州EVのトップセラーとなったのが、このリーフ。現在は同クラスのライバルが増えたことでポジションは後退しているが、まだまだ健闘しているといえるだろう。

日本市場同様、欧州でも標準と大容量バッテリー搭載の「e+」の二本立てで販売されており、「e+」は19年の発売開始から半年で受注8000台を超えるなど、高い人気を獲得している。

 

第4位 ヒュンダイ コナEV(1万1150台)

EVの価格を一気に引き下げた原動力の一つが、このコナEV。グリルレスの顔つきはちょっと独特なイメージだ。人気モデルだが、現在全車リコール中なので、今後はちょっとランクダウンするかも。

BセグメントのコンパクトSUV。欧州ではEVの他ガソリンやHVもあるが、台数はEVのみのもの。

日本ではなじみが薄いが2019年の北米カー・オブ・ザ・イヤーの「SUVカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、海外での評価は高いモデル。車名の「KONA」はハワイのコナで、そこからもわかる通り、もともとは北米を主戦場として登場したモデルである。

最大航続距離は約480kmで、価格は約450万円。コストと性能のバランスが良く、それも人気の理由といえるだろう。

 

第3位 ルノー ゾエ(1万6280台)

新型ゾエは初代よりも航続距離が1.3倍伸び、走行性能も強化。マルチに使える実用性の高いEVへと進化している

Bセグメントのコンパクトな5ドアハチバック。初代モデルは2012年に登場、19年にはフルモデルチェンジされ2代目モデルとなっている。

プラットフォームは先代の日産リーフと同じものを改良して採用しているが、デザインはルノー独自のもの。パワートレーンは、ルノーの新世代EVパワートレーンを採用し、最大出力136hpを発揮するパワフルなモーターを搭載している。バッテリー容量は52kWhで、航続距離は390km。価格は約400万円。

 

第2位 テスラ モデル3(2万4481台)

圧倒的なコストパフォーマンスを誇るMODEL3。日本でも人気急上昇中だ。

2番手となったのは、先に日本でも大幅値下げとなったテスラのEVセダン「モデル3」。標準グレード「スタンダードレンジプラス」の本体価格が、これまでの511万円から429万円となり、より人気が高まることは間違いないだろう。

ボディサイズは全長4694×全幅1849×全高1443mm。メルセデス「Cクラス」やBMW「3シリーズ」などと同じDセグメントに分類されるサイズで室内も広く、実用セダンとしても高いパフォーマンスを持っている。標準グレードの航続距離は430km。

エンジン車を含めた総合のランキングでもID.3に次ぐ3位となっている。

第1位 フォルクスワーゲン ID.3(2万7924台)

フォルクスワーゲン「IDシリーズ」第1弾として登場したID.3。今後はゴルフに代わる主力になるか?

堂々の第1位はVWのID.3。欧州では2020年秋からデリバリーが開始ということで、立ち上がりは順調なようだ。VWではピュアEVのサブブランドとして「ID」を導入したが、その第1弾となるモデルである。

ボディサイズは全長4261×全幅1809×全高1552mmで、ゴルフに近いサイズの5人乗りハッチバック。ベースモデルは58kWhのバッテリーを搭載し、WLTCモードの最大航続距離は420km。価格は約437万円から。

ピュアEVだけのランキングでトップだが、ガソリン車やディーゼル車などを含めた総合でもゴルフに次ぐ2位となっている。ゴルフは3万73台なので、その差は2076台と僅差であり、VWの力の入れ方を見ても、近いうちに逆転しそうである。

日本には2022年以降の導入が予定されている。

【航続距離400km台、価格400万円台が人気】

プレミアムブランドからも続々登場中のEVだが、ランキングを見ると欧州でも実用型のモデルが多く、航続距離400km台、価格も300~400万円台のコンパクトEVが販売の中心。そこは日本とあまり変わらない気がするが、それよりもいち早くEV化を言い出したこともあって、欧州のEVラインナップの充実ぶり、選択肢の多さには驚かされる。なにせ日本で現在発売されているのは、日産リーフ、ホンダe、マツダMX-30EV、レクサスUX300eの4車種しかなく、しかもリーフ以外は予定されている販売台数も少なく、事実上台数限定だ。盛り上がらないのも無理はない。

一方で、フィアット500やVW・UP!の台数も多いことから都市部でのセカンドカーとしての需要も多いようだ。三菱アイミーヴはパッとしないまま終わってしまったが、方向性としては間違っていなかったのかもしれない。

またベスト10圏外だが、アウディe-tronスポーツバックが1962台、ポルシェ・タイカンが1912台などプレミアムEVも健闘している。VW「IDシリーズ」の好調なスタートも合わせてこれらを見ると、欧州特有のカンパニーカー制度もEV普及の大きな後押しとなっていると推察できそうだ。そのため、今後はメルセデス、BMWなどの猛追も予想される。

またエンジン搭載車を含めた総合順位でも2位、3位がピュアEVというのも興味深い。日本ではまだまだ懐疑的に見る人も多いEVだが、欧州では確実にEV化が進展中。今後も急速に数を増やしていくことは間違いないようである。

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