四輪駆動車に特化したラインナップを揃えるランドローバーの中でも、圧倒的な悪路走破性と唯一無二のスタイルを持つ「ディフェンダー」。2015年末に、ランドローバーシリーズ1から続いた67年の歴史に一旦幕を下ろしたが、昨年のフランクフルトモーターショーで新型が公開され、日本でも今夏から納車が開始された。
新型ディフェンダーは、内外装デザインの大幅刷新をはじめ、ボディはラダーフレームからオールアルミモノコック、サスペンションは四輪リジッドから四輪独立懸架になったことが大きなポイントだ。
エクステリアは、先代の角ばったヘビーデューティーさが際立つスタイルに比べ、新型は力強さとモダンさを融合させたデザインが特徴としつつ、丸目2灯のヘッドランプやバックドアに配されたスペアタイヤ、リアクォーターパネルのアルパインライトなど、随所に先代へのオマージュも見られる。
インテリアは、奥行きのないダッシュボードや、ドアパネルのボルトといった構造物をあえて露出させ、クロカンらしい武骨なイメージを演出。インパネ周りの機器類ボタンは機能的に配置されており、使い勝手も良さそうだ。
ボディバリエーションは、5ドアのディフェンダー 110(全長4945mm×全幅1995mm×全高1970mm、ホイールベース3020mm)、3ドアのショートホイールベースとなるディフェンダー 90(全長4583mm×全幅2008mm×全高1974mm、ホールベース2587mm※欧州仕様)の2種類を設定。欧州では48Vマイルドハイブリッドやディーゼルも設定されているが、国内に導入されるパワートレーンは、直列4気筒2.0Lターボ(最高出力300PS/最大トルク400Nm)に8速ATの組み合わせのみ。今回はディフェンダー110に試乗する機会を得た。
実車を目にするとデザインの妙かスペック値以上に大きく見え、重みのあるドアやバックドアの操作感に驚かされる。悪路の走行や渡河にも対応するため最低地上高が218mm確保されている分、乗り降りも一苦労。特に家族に小さい子供や高齢者がいる場合は、オプションのサイドステップを装着することをおすすめしたい。
2列目シートは前席に比べると小ぶりだが、高さがしっかりと肩口付近まで確保されているので、しっかりと身体を預けることができ、長時間の移動も苦にならない。高い静粛性と合わせて、居住性は高いレベルにあると言える。
また、110にはオプションで3列目シートを装備でき、試乗車にも設定されていたが、こちらは大人が長時間座って移動するには狭く、あくまでも非常用と割り切った使い方が求められる。とは言え、3列目にもエアコンの送風口やUSBポートが設けられ、アルパインライトによって外からの視界も確保されており、3列目の居住性や快適性は疎かにはされていない。
■現代のクロカンに求められる性能を高次元で実現
ディフェンダーはぬかるみや雪道でも走れるオールテレインタイヤを装着しているため、オンロードでの不快な突き上げなどが心配されたが、それは杞憂であった。走り始めると街乗りから高速域まで常に安定した乗り味で、特に剛性感のある走りは特筆すべきポイント。約2.2tの巨体でも2.0Lターボエンジンはパワー必要にして十分で、加速性能でも不満を覚えることは無かった。
車高が高いので運転席からの視野は見下ろす形となるが、フロントガラスは車格に対しては小さめで、太いAピラーと大きなドアミラーによって、車両の左右に思いのほか死角が生じる。だが、高解像度の俯瞰カメラやセンサー類によって死角はほぼ補われているので、ボディ感覚を掴めばそこまで運転に難儀することはなかった。
ルームミラーはカメラ映像と鏡が切り替えられるタイプがオプションで用意されているが、通常のミラーのままだとバックドアのスペアタイヤの影響で視界が遮られるので、これは装着を強く推奨したい。ただ、ルーフのシャークフィンアンテナに取り付けられたカメラ位置の影響からか、バイクなどの小型車両がすっぽりと隠れてしまうシーンもあったので、このあたりの使用性の向上を今後期待したい。
また、オフローダーのためクイックなハンドリングではないが、操舵感は適度な重さで扱いづらさは無い。直進安定性が高いことに加え、ちょっとしたワインディングでペースを上げても、ロールを許容しながらもどっしりとした安定感のあるコーナリングを見せる。オフロードでの圧倒的な走破性だけでなく、オンロードでもしっかりと走る“現代のクロカン”に求められる性能を実現していた。