MGと云えば、耳にタコで「またか」と顔をソ向けそうな読者が目に浮かぶが、今回は本棚から見つかったMGAのコクピット解説図を元に、少し掘り下げてみたい。
まずレース写真は58年頃のカリフォルニア、サクラメント郊外の飛行場でSCCA開催のレース風景。MGAとアルファロメオが写っているが、両方共にDOHC同士だ。
MG―Aが正しいという人が居る。MGのA型だから”ー”が必要というのだろうが、手元のアメリカの資料ではMGA、また本家イギリスの資料でM・G・Aというのもある。社名の由来がモーリス・ガレージだから、こいつが本物かも知れない。
伝統のクラシック姿が売り物だったMG-Fを最後に、ジャガーXK-120以来アメリカ市場で好まれるスタイリングに変身したのがMGAだった。
が、スタイルは斬新でも、コクピット内には、良い意味で英国のスポーツカーらしい伝統のクラシックなレイアウトが残されていた。
MGAに初めて乗る人はハテ困ったという顔をする。ドアに取っ手がない「どうやって開けるのだろう」ということ。開けるには、先ず車内に手を入れて、ドア内側の紐を引っ張ればロックが外れる、MG伝統の仕掛けを知る必要がある。
X字型スポークのステアリングハンドルは、三本ずつのワイヤスポークで構成されている。路面からのショックを少しでも和らげようという魂胆で、英車には古くから使われた手法である。

ハンドル中心の、MG伝来の八角形エンブレムはホーンボタンではない。ホーンはインパネ中央の(13)を押す。その上部のメッシュ部は、後付装備のラジオのスピーカー用。
ラジオをオプションすれば、助手席前面MGマークの長方形部またはインパネ下部、ヒーターコントロール下部(12)などが定位置だった。
方向指示器の操作は、(24)レバーを左右どちらかに捻る。するとタイマーのスイッチが入り30秒程フラッシャーランプ点滅のあと自動停止する。その間(25)のランプ点滅で認識できる。
(1)はボンネットレリーズハンドル。上部の(2)を引けば下(3)のマップランプが点灯。スピーカーグリル左上部(4)はワイパースイッチ。(5)イグニションスイッチ。
(6)燃料計。(7)ウインドウオッシャー、(8)チョークボタン。グリル右上(15)ライトスイッチ、(19)フォグランプスイッチ、(16)水温と油圧コンビメーター、(18)手前に引くスターターノブ。
(26)速度計はトリップ+オド両メーターを内蔵する。その左、回転計は最高7500回転を表示。ちなみにレース場写真と図面は、MGAの中でも販売台数が少ないDOHC、英国流に云うならツインカム。
4MTのシフトパターンは表示の通り。間隔が狭い吊り下げ型アクセル、ブレーキ、クラッチは、ヒール&トゥがやりやすかった。クラッチペダル上のボタンはヘッドランプの上下切り替えスイッチ。当時はアメ車も皆この方式だった。
図面左上の囲みは、上がボンネットストッパーの外し方、下はシート後部トランクオープナーの位置。MGAのシートは薄っぺらで、路面に座るような心地だが、スポーティー気分を満喫できた。
MGAはMG-TFの後継として、55~62年までにトータル9万8970台生産され、そのほかに58~62年まで1723台のMGA(1588cc110馬力)ツインカムが生産された。
MGAのレース写真撮影の58年は昭和33年。日本には未だスポーツカーなどなく、スバル360やミカサツーリングが登場した頃。インスタントラーメン登場、若者はロカビリー、街ではフラフープ大流行。東京タワー完成、国産初ステレオレコード登場、都内にパーキングメーターが御目見得した頃である。
