コーナーリングはひと回り小さいモデルの感覚
ボディにシャシー、パワーユニットに至るまで、全てが新規に開発をされて話題になったマツダのブランニュー・モデル『CX-60』。2022年9月に販売がスタートしたマイルドハイブリッド・システム付きの3.3リッター6気筒ディーゼルエンジン搭載モデルに続き、2.5リッターの4気筒ガソリンエンジンをシステム内に加えたPHEVも発売が開始。早速テストドライブを行った。
新しいパワーユニットを搭載したとは言っても、外観上でそれが確認出来る点はごくわずか。左右のフロントフェンダーとテールゲート上のエンブレムに刻まれた”PHEV”の文字はその一例。さらにCX-60マニア(?)の目ざとい人ならば、これ以外のモデルが備える左リヤフェンダー上の給油リッドに加えて右側にも同様のリッドを持つことで、充電が可能なモデルであることを知ることも不可能ではないだろう。
マツダ車史上かつてなく上質な設えが特徴のインテリアも同様で、重箱の隅をチェックするように見ればセンターコンソール上にチャージモードを起動させるボタンがあるなどと指摘することも可能だが、基本的には「他のモデルと変わる部分はない」と紹介した方が適切。ただし、EV走行のモードを持つことなどで、メーターには専用のグラフィックが採用されている。
17.8kWhという容量の駆動用バッテリーから得られる等価EVレンジ(航続距離)は、WLTCモードで75㎞。そんなこのモデルに用いられるモーターは129kW≒175PSと大出力で、充電状況が良好である限りはそれなりにアクセルを踏み込んでも、簡単にエンジンが加勢に回ることはなく、それでいてEV走行時も日常シーンには十分と思える加速力を発揮してくれる。
興味深かったのはこうしてエンジンが始動していない状態でも、”トルコンレス”が話題となった8速ATによる変速感が明確に伝わってくること。それを含めてこのモデルの動力性能は、これまで経験をしたことのあるPHEVモデルのそれとはちょっと異なる印象。端的に言うと「EV走行時でもエンジン車を彷彿とさせる香りが漂う」のがこのモデルでのテイストなのである。
一方、通常時は殆ど必要ないと知りつつもことさらにアクセルを深く踏み込めば、モーターとエンジンが連携して生み出す加速の能力は驚くほどに高いもの。大柄なボディながらコーナリング時にも過大なロールを発生したり、強いアンダーステアに見舞われるようなこともないので、実際よりもひと回り小さなモデルの感覚で、次々と迫るタイトコーナーをクリアして行くことが可能だ。
こうして走りはなかなかと評価のできるモデルだが、相変わらず惜しいのはやはり終始上下動の目立つその乗り味。これだけは、本来このモデルが目指したような上質でプレミアムなキャラクターの持ち主に相応しいとは思えない。今回も、CX-60全体に残された最大の課題であるように受け取れることになった。
(河村 康彦)
(車両本体価格〈PHEVモデルのみ〉:539万円~626万4500円)