住友ゴムは9月5日、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター 高橋幸生教授、理化学研究所、高輝度光科学研究センター 為則雄祐室長らと共同で、大型放射光施設SPring-8を活用して、物質の構造と化学結合状態をナノレベルで計測可能な技術（テンダーX線ナノスコープ）を世界で初めて確立し、リチウム硫黄電池材料に用いる硫黄化合物の可視化に成功したと発表した。
同技術を応用することで、現在開発を進めているリチウム硫黄電池での反応・劣化メカニズム解明による性能向上が期待できるほか、将来はタイヤ研究にも応用することで、より高性能なタイヤの開発につなげるとしている。
同社では、従来からタイヤの基本性能および性能持続性に大きく関与する硫黄について研究を行っており、タイヤ研究で培った知見を他の分野にも応用し、硫黄においては2011年から産業技術総合研究所と共同で、リチウム硫黄電池に関する開発を推進。
リチウム硫黄電池は、軽量かつ安全性に優れており、リチウムイオン電池の6～7倍の理論容量が期待できる一方、充放電のサイクル寿命が課題となっている。サイクル寿命を向上させるには硫黄化合物を高精度で計測する必要があるため、今回X線の波が揃っているテンダーX線を利用できるSPring-8を活用することで、テンダーX線ナノスコープを初めて確立。同計測技術により、硫黄化合物をナノレベルで可視化することに成功した。
同社は今後、同計測技術を2024年から運用開始予定である次世代放射光施設「NanoTerasu（ナノテラス）」で活用し、リチウム硫黄電池の動作環境下での計測および材料開発の早期実用化に取り組むほか、タイヤ研究において、ゴムと硫黄が結合した架橋構造のさらなる分析への応用が期待できることから、同社が掲げるタイヤ開発および周辺サービス展開のコンセプト「SMART TYRE CONCEPT」の主要技術の1つである「性能持続技術」の開発につなげると述べている。
