【河村康彦 試乗チェック】アルピーヌ・A110 人とクルマの一体感が濃厚なMR

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電動化中心の欧州から、走りを心底楽しめるモデルが再上陸

F1チームにもその名前を聞くことができるルノーの子会社アルピーヌ。2021年から”ルノー・スポール”を吸収するカタチで現在へと至るこのブランドから2017年に発表され、日本でも2018年から発売されていた、2シーターのミッドシップ・モデル『A110』に一部改良が施され、2022年6月に再度発売をされた。

事実上の”マイナーチェンジ”となる今回のリファインだが、すでに完成されているということか外観の手直しは皆無。

A110 GT

新構成となった3グレードのうち、ベーシックグレードを除く『GT』と『S』に48PSと20Nmが上乗せされた300PS/340Nmを発する新エンジンを搭載することや、アップル・カープレイ、アンドロイド・オートに対応するマルチメディア・システムを採用したこと。さらに、フロントスプリッターとウイングタイプのリヤスポイラーから成る”エアロキット”が設定され、それを装着すると250㎞/hで作動するスピードリミッターが解除されることで、275㎞/hという最高速をマークする点などが見どころということになる。

 

レザーシートやカーボン、アルミ材などを用いた内装を採用し、「グランドツーリングを楽しみためのグレード」と紹介される『GT』でスタートすると、まずゴキゲンなのが街乗りを想定した走りでも、大いにその恩恵が感じられる軽やかでバランス感に富んだテイスト。特に飛ばさなくても、自身を中心に交差点を曲がって行くようなミッドシップ・モデルならではの快感を味わえる。まるでブレーキディスクを足の裏で直接挟むようなペダルのタッチも、本格スポーツカーらしい醍醐味が十分だ。

クローズドコースでの走行性能を追求したグレード、A110 S

そこから、サスペンションをさらに強化し、モノコック・バケットシートを採用するなどで「クローズドコースでのパフォーマンスを追求したグレード」という『S』に乗り換えると、スポーティな雰囲気はさらに向上。今回の試乗車にはよりサーキット走行に適したハイグリップなタイヤが特別に装着されていたが、それでもさほどスパルタンではなく、十分に日常使いができそうな乗り味だった点も好印象。妙なショックやノイズを発することのないDCTの変速制御の巧みさにも感心した。

ルームミラー越しの後方視界はややタイトだが、それを除けば優れた視界の広がりや、全長×全幅が4205×1800㎜と日本でも取り回し性に優れ、”着る感覚”さえが得られる人とクルマの一体感に富んだ印象もこのモデルならではの美点。もはや”電動化”にしか興味がないのか? と思わずそんな愚痴すら言いたくなる最近のヨーロッパ発の、”掘り出し物”感に溢れる1台がこのA110という存在なのである。

(河村 康彦)

(車両本体価格:811万円~897万円)

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