2022年1月にマイナーチェンジしたアルピーヌA110のA110 GTと、A110 Sを比較試乗しました。見た目の変更は小さいながらも実はかなり商品力が増した新型A110の魅力をレポートします。
外装・内装はほぼ変更なしだが、A110GTが魅力的
今回のマイナーチェンジでは見た目の変更はほとんどなく、前期型ではA110リネージと呼ばれていたグレードがA110 GTへと変更になり、それに伴ってバッヂが変わった程度です。今までのリネージでは、内装や装備は充実していたものの、出力&トルクがトップグレードのA110 Sより抑えられていたので、よりホットな走りと上質な内装の両方を手に入れたいというユーザーの声に答えたのが今回のA110 GTとなります。A110 GTではトップグレードのA110 Sと同様、出力は前期型の292PSから300PSへと向上、トルクも320Nmから340Nmへと引き上げられていながら、シャシーはA110 Sのシャシースポールほど固められていない通常の足回りとなっており、乗り心地と快適性、そして痛快な加速性能も有した日常使いもOKなスポーツクーペに仕上げられているのが特徴です。
内装においても、A110 Sではフルバケットシートで背もたれも固定式、高さもボルトを外して調整しなければならないなど、スパルタンな仕様になっているのに対し、A110 GTではシートはサベルト製のセミバケットシートで角度や高さも調整可能、シートヒーターまで完備されています。さらにFOCALのスピーカーやサブウーファーまで搭載しているので日常使いをするならやっぱりGTが良いのではと思います。ただ、そんなA110 GTでも相変わらずドリンクホルダーは一つも付いていません。これはフランス特有の文化だと思いますが、さすがに日本で使うならドリンクホルダーくらいは欲しいところ。ディーラーオプションとしてでも純正品を開発すれば、装着率100%に近くなるのではと思いますが…。
Apple CarPlayとAndroid AUTOをようやく採用!
今回のマイナーチェンジで一番実用性が上がった点が、CarPlayやAndroid Autoに対応したことではないでしょうか。今まではセンターディスプレイはあるものの、ラジオや車両情報しか表示できませんでしたが、ようやくCarPlayなどに対応することで地図を表示できるようになりました。他のクルマでは当たり前にできることが、A110ではようやく採用となったことで、日常使いから知らない土地の遠出までをストレスなくこなせるようになったのは大きな進化ではないでしょうか。
他メーカーのクルマが無線でCarPlayなどに接続できるのに比べると、未だ有線接続しかできませんが、それでも普通にナビとして使えるようになったのはありがたいです。
パワー・トルクともに向上、それでも扱いやすいドライブフィールに舌鼓!
アルピーヌA110では1.8L直4エンジンをミッドシップに配置して後輪を駆動させるMRレイアウト。今回のマイナーチェンジでギアボックスをハイパワー&トルクに対応したことで、最高出力300PS/6,300rpm、最大トルク340Nm/2,400rpmまでパワー・トルクとも向上しています。
A110のサスペンションは前後ともにダブルウィッシュボーンとなっており、ラリーで培ったダンパーINダンパーのハイドロリック・コンプレッション・ストップを採用することで、粘り強い足回りと乗り心地をうまく両立しているように感じました。箱根ターンパイクで行われた試乗会へは、私の愛車であるBMW M240i xDrive Coupeで赴いたのですが、明らかにA110 SやA110 GTの乗り心地のほうがまろやかでした。
エキゾーストサウンドもチューニングしてあるらしく、耳の後ろから聞こえる野太いエンジン音とバブリングは否が応でも心が高揚してしまいます。ついついアクセルを開けて走ってしまいますが、それでもMRだからといってピーキーな挙動をすることはなく、地面に吸い付くようなハンドリングが心地良いです。ベースのA110の車重は1,100kgしかなく、GTでも1,130kg、Sでは1,120kgに抑えられているので、それでいて340Nm(A110では320Nm)の豊かなトルクを2,400rpmで発生させるので、アクセルを開けなくてもひらひらと舞うようにコーナーを駆け抜けていきます。
MRレイアウトなので前輪に荷重がかからないゆえの軽快なハンドリングと、後ろから蹴られるような加速感は病みつきになりそう。出来ることならこのままターンパイクを抜けて伊豆まで行きたい気分に駆られました。
今回、ベースのA110に試乗することは出来ませんでしたが、A110 GTとA110 Sの乗り比べをすることが出来ました。どちらも痛快で気持ち良いのですが、より車重が軽くシャシースポールを採用するA110 Sのほうが路面に吸い付く感覚が強まっていました。A110 Sのほうがタイヤサイズも10mmほど拡幅されているので、ステアは重く感じるかと思いきや、意外にもGTのほうが重厚感を感じるステアフィールで、一方のA110 Sのほうは操舵感が軽いのに接地感はしっかりあり、どこまでも踏んでいける安心感がある印象でした。
シャシースポールを採用するA110 Sはバネレートがスタンダードシャシーの1.5倍に高められているので、硬い足回りになっているかと思っていましたが、実際に乗ってみると全然硬さは感じず、むしろ会場まで乗ってきたM240iのほうが硬かったほど。ダンパーINダンパーは伊達じゃないなと痛感しました。
実は価格はAWDのM240iのほうが安いくらいで、A110が811万円から。A110 GTで893万円、A110 Sが897万円となっています。すべてをこの1台で済ませるにはちょっとまだ不便なところもありますが、セカンドカーとして週末にドライブに行くにはこれほどFUNで粋なクルマはないのではと思いました。これもまたフランス車の為せる技なのかもしれませんね。
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[ドラヨス]
月間100万PVのブログ「ワンダー速報」と、登録者数24万人、月間750万再生以上(2022年6月現在)のYouTubeチャンネル「ワンソクtube」の管理人。
クルマ買うチューバーを自称し、2か月に1台のペースでクルマを購入してレビューするスタイルが好評。
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