MX-30は「MAZDA3」「CX-30」に続くマツダの新世代商品群第3弾として登場した新型クロスオーバーSUVだ。車格としては先発のCX-30と同じで、パーソナルユース向けのモデルといえる。
ただし、マツダのSUV系車種の車名は「CX」で統一されているが、新モデルはこれを用いず、コンセプト的なモデルに使われる「MX」としている。実際の発売は前後したが、先行してEVとして発表されていたモデルでもあり、マツダとしては新たな方向性を探る実験車的な意味合いが強いことがうかがえる。
ボディサイズは、プラットフォームを共用するCX-30とほぼ同じ。全高はMX-30が10mm高いが、全長・全幅・ホイールベースは同数値。他社ではトヨタ・C-HRやホンダ・ヴェゼルに近いサイズとなる。
搭載するパワートレーンは、「e-SKYACTIV G」と呼ぶPE-VPH型2Lガソリンエンジンにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドシステム。モーターは最高出力6.9ps、最大トルク49Nmのもので、発進・加速時などにエンジンをアシストするタイプ。ただしモーターの出力が小さいため燃費性能に対する効果は限定的で、同エンジンを搭載するCX-30の15.4km/L(WLTCモード・2WD車)に対して、MX-30は15.6km/Lとなっており、0.2km/L上回るだけに留まっている。なお、2021年1月にはEV仕様が追加される予定だ。
販売面では、新規顧客の獲得を狙っている。マツダはデザインの統一化を進めてきたが、その反動として顧客層の固定化が課題となっている。このため、これまでのラインナップとは異なるデザインや個性を新モデルに与えることで、新たな需要を取り込み、ユーザー層を広げていくことがMX-30に与えられた役割といえるだろう。また今後の電動化戦略を見据える上での大きな試金石ともいえそうだ。
また、価格設定も新たな試みを導入している。従来マツダは標準グレードでも装備を充実させることが多かったが、MX-30では上級装備はオプション扱いとすることで、FFで242万円から、4WDで265万6500円からとスタート価格を下げている。したがって見掛け上の価格は安いが、人気のある装備を加えていくとそれなりに価格が上昇することになるが、それに対するユーザーや販売店の反応も注目されるところである。
月販販売目標は1000台。先行したCX-30の月販目標は2500台だから、個性派モデルとしては現実的な数値目標だといえる。しかし、現在のコンパクトSUV市場は競合モデルが多い激戦区であり、また観音開きのフリースタイルドアを採用するなど使い勝手の面でも個性が強いだけに、狙い通りにいくかは難しいところ。一部はCX-30との食い合いも生じそうだ。ただ、このモデルでの感触が良ければ、今後のマツダの商品戦略やデザイン戦略もより明確なものとなり、国内販売の見通しも明るいものになるだろう。(鞍智誉章)