一時は国内から姿を消したRAV4が、今春復活。本格的な4WDシステムを持つミドルクラスSUVとして人気を集めている。その源流となるのが94年に登場した初代RAV4だ。今回はコンパクト・クロスオーバーSUVの祖ともいえるこの初代RAV4が、どのように紹介されたのか見てみよう。
<週刊Car&レジャー 平成6年5月21日発行号より>
■トヨタのRV「RAV4」登場
トヨタが新提案するコンパクトRV「RAV4」は、アウトドアをめざす都会派のキミが自由に、個性的に生活をエンジョイするためのクルマ。カローラ店からは「RAV4L」、オート店からは「RAV4J」のネーミングで、待ちに待ったあのRAV4がデビューした。
RAV4L(またはRAV4J、以下省略)のチェック・ポイントは3つ。その1「アクティブでキュートなフォルム」、その2「オンロードでもオフロードでも楽しめる確かな走り」、その3「お洒落なセンスと遊び心の室内」に集約されるといえるだろう。
・エクステリア
外観は、海や山に、また都会のファッション・ゾーンにもマッチするフォルム、“見ていても楽しい雰囲気”がフレッシュに伝わってくるもの。3695×1695×1655㎜のコンパクトなサイズに、従来のクロカンタイプのワイルドなフィーリングを保ちながら、個性を主張するフロントマスク、スポーティな感覚で脈打つような曲面構成のパネルと大型プロテクションモールを配し、アーバン感覚を際立たせるニューフェイスRVなのだ。ボディカラーには、ブライトブルー、ダークグリーン、ダークブルー、ファインレッドの4色を設定するとともに、ボディ下部をすべてグレーに統一し、全車ツートーン風のお洒落な外観を演出している。なおオリジナル装備としてツインサンルーフ、バンパーガード、16インチ×6.5JJアルミホイールなどのオプションを用意している。
・インテリア
RAV4Lの室内空間は明るく楽しいリゾート感覚がいっぱい。張り出した大型のアッパークラスター、そして各種機器のシンプルで機能的なレイアウトがRV感覚いっぱい。そして、見切り線の少ないタイトなコクピット周りは、スポーティ感覚でいっぱいなのだ。
シートは、従来のクロカンRVでは難点の乗降性を重視したシート高設定がうれしい。加えて、前後スライドの可動範囲を大きくとったドライバーズシートは、女性のドライビング・ポジションを配慮したもの。
もちろん、RVならではのフルフラットをはじめとする多様なシート・レイアウトが楽しめ、トランクスペースを有効に使ったアウトドア・アイテムの積載も十分可能だ。このほか、センタークラスターをはじめとする小物入れ、ドアポケット、クォータートリムのカップホルダー、クォーターウインドウ下部のデッキサイドボックスなどの収納スペースを確保している。
快適装備には、マニュアルエアコン、パワーウインドウ、バックドア連動ドアロック、電動リモコンミラー、マップランプなどを標準装備している。
・パフォーマンス
アーバンロードを軽快に走る、そしてアクティブな遊びに熱中する。そんな都会派、行動派にふさわしいRAV4Lに要求されるものはフレキシブルな性能にある、と言える。
パワーユニットには、高速での卓越した走行性能とオフロードでの力強い走破性を実現するため、2Lツインカム3S-FE型を搭載。シーンを選ぶことなく、軽快で楽しい走りを実現するとともに、10・15モード燃費で11.0km/L(AT車)という実用・経済性と静粛性をも確保して、これまでのクロカンとはひと味異なる快適なクルージングが楽しめるものだ。
もちろん、RAV4LはRVに必要機能ともいえるフルタイム4WDとし、MT車にはメカニカルロック式を、AT車にはEC-ハイマチック式を採用する。またサスペンションそのものは、フロントにマクファーソンストラット式、リヤにダブルウィッシュボーン式を採用する4輪独立懸架方式。4WDの機能はそのままに優れた操縦性・走行安定性、そして快適な乗り心地をも両立させる新開発サスペンションだ。
このほか、さらに走行安定性・安全性を高めるトルセンLSD、Gセンサー付ABSをオプション設定している。
<解説>
いわゆるクロカン4WDではなく、かといって普通のコンパクトカーでもない、当時としては新ジャンルのクルマだけに、どう扱ったらいいのか困惑ぶりが紙面レイアウトからもうかがえる。「ハート直撃“ラヴ”コール」などという意味不明な見出しがますます痛々しい。現在ならクロスオーバーSUVの一言でニュアンスが伝えられるが、当時はそんな便利な名称はなかったのだ。
それはさておき、初代RAV4は発売と同時に大ヒット。大柄なクロカン4WDは男性中心だったが、コンパクトなRAV4は女性からの人気が高いのも特徴だった。登場時は2ドアのみだったが、翌年にはホイールベースを延長した5ドアの「RAV4 V」も発売され、さらにファミリー層へも人気を広げることとなった。
イイトコ取りの独創的ともいえるRAV4だが、翌年にはホンダから初代CR-Vが登場し、市場を二分。CR-Vの登場で独走に待ったが掛けられたRAV4だったが、強力なライバルの出現で市場はさらに勢いを増す結果となった。