【河村康彦 試乗チェック】ホンダ・シビック タイプR 鈴鹿のフルコースで実力をいかんなく発揮

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コーナーで躊躇なくアクセルを踏み込んでも乱れずに加速

ホンダが9月に発売した新型『シビック タイプR』をテストドライブした。舞台はこのモデルにとって”聖地”とも言うべき鈴鹿サーキットのフルコース。お膳立ては万全だ。

まさにこのモデルにふさわしい、鈴鹿サーキットのフルコースでテストドライブ

265/30とファットで薄いシューズや、それをカバーするべく膨らんだフェンダー。さらに、ベース車よりも10㎜低い全高にリヤのウイングなど、専用デザインのボディキットなどによって、そのエクステリアのデザインはいかにもハイパフォーマンスな走りのモデルらしい迫力が満点。それでも、ちょっと”ガンダムちっく”とも思えるほどエキセントリックなルックスだった先代に比べると、個人的には「これならば大人が乗っても恥ずかしくないな」と受け取れる仕上がりにまず、好感を抱くことができた。

エキセントリックだったルックスも少々落ち着いた

インテリアはシートやカーペット、シートベルトなどに深紅のカラーをあしらった仕上げが大胆。同時に、アルカンターラ巻きステアリングホイールやステンレス製ペダル、アルミ製シフトノブの採用などで各部の上質感もなかなか高く、こちらも好印象だ。

上質でありながらクルマとの一体感を高揚させるインテリア

2リッター4気筒エンジンが発する最高出力は、先代比10PS増しとなる330PS。ターボ付きユニットゆえ、そんな数字をさらに上乗せしようと思えばそれは比較的簡単に可能であったはずだが、「そこは余りピーキーな性格にしたくなかったこともあって」とは開発陣のコメント。実際、絶対的な加速力や回転上昇に伴うパワーの伸び感などにまったく不満はなかったし、一方で前2輪駆動モデルでありながら少なくともテストドライブを行ったドライの舗装路面ではトラクション能力に不足を感じることはなかったという、高い次元で巧みにバランスされていたことも事実だ。

最高出力330PSまで引き上げられた2リッターターボエンジン
オプション設定のタイヤが装着されていた。ブレーキキャリパーも赤

サーキットでのテストに備え標準装備品(ミシュラン パイロットスポーツ4S)よりもドライグリップ力の高い、オプション設定のタイヤ(パイロットスポーツカップ2コネクト)に交換されていたこともあって、コーナリング限界はすこぶる高い。

ノーズヘビーが避けられないFFレイアウトの持ち主ながら目立ったアンダーステアは発生せず、同時に後輪の接地感も高いので、ガンガンとアクセルを踏み込んで行けるのが仕上がりの良さを実感させる。ヘリカルLSDが効いて、コーナリング中のアクセルONでも前輪内側がだらしなくホイールスピンしてしまうような場面も皆無だ。

 

タイプR用のターボチャージャーを装着

センターコンソール上のスイッチで最もハードな『+R』の走行モードを選択すると、アクセル操作に対する応答性がシャープになり、ステアリング操舵力が重さを増すと共にダンパーの減衰力がグンと高まるが、完全舗装の行き届いたこのサーキットではこれが良くマッチ。ただし、一般道やサーキットでも荒れた路面では恐らくわずかなギャップでも跳ねてしまいマッチングは良くなさそうだ。

赤い「R 」のバッジは、ピュアスポーツの証

それにしても電動化が叫ばれるこのタイミングで、こうしたモデルが出てきてくれたことは嬉しい限り。久々にエキサイティングな”エンジン車”を心ゆくまで堪能することができた。

(河村 康彦)

(車両本体価格:499万7300円)

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