【河村康彦 試乗チェック】ランドローバー・レンジローバー ファーストエディション オフロード性能がさらに向上

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“スーパー”ユーティリティビークルと呼びたくなるオン/オフ走行性能の高さ

まだ”SUV”などという呼び名の無い1970年に、ゴージャスさも身につけた4WDオフローダーとして初代が誕生。以来、そんなカテゴリー中でも世界的なハイエンド・モデルとして君臨を続けるレンジローバーが、4回目となるフルチェンジを遂げて日本への上陸をスタートさせた。

ボディはスタンダード・ホイールベースと、全長とホイールベースが200㎜ずつ長いロング・ホイールベースの2タイプを設定。今回は、4.4リッターのV8ツインスクロール・ターボ付きガソリン・エンジンを搭載したスタンダード・ホイールベースの、日本発売の初年度のみ生産をされる『ファーストエディション』をテストドライブした。

心臓部はV8 4.4リッターエンジン

従来型も”巨艦”ではあったものの、新型ではそのサイズをわずかながらもさらに拡大。スタンダード・ボディでも5mを超えていた全長は60㎜ほど延長され、全幅はついに2mの大台を突破。標準装備の電子制御式エアサスペンションには4WSシステムが組み込まれ、5.5mという最小回転半径を実現させたのはそのサイズからすれば「頑張った」と言うべきだろうが、それでも走り慣れた道がいつもよりちょっと狭苦しく感じられたのは事実だった。

SUVとしての利便性も一級

当然、日本ではこうしたモデルをゆとりを持って収める白線枠を備える駐車スペースも限られるだろうが、所有ユーザーの多くは、そうしたタイトな場所へと出掛ける際には、それに適したもっとコンパクトなモデルの用意もある、という事なのかも知れない。

走り始めればその加速感は、2.7トンに迫る重量を忘れさせるほどに強力かつ軽快。圧倒的なのはその静粛性で、特にロードノイズの遮断は見事のひとこと。一方、時の流れと共に稀有な存在になりつつあるV8エンジンが放つサウンドがなかなかスポーティ。実はBMWから供給されるというその出自を思わず意識してしまうことになる。

かくして、際立って上質な仕上げのインテリアに囲まれつつオンロードでの走りは、まさにハイエンドの高級車そのものという雰囲気だが、レンジローバーという名を踏襲しているからには、今回も誰にも譲れない圧倒的なオフロード走行のポテンシャルも秘めているに違いないもの。

テストドライブでは、その片鱗すらも試すことができるシーンはなかったものの、”テレインレスポンス2”の名で用意をされる走行モードには、極悪路にまで対応する八つのバリエーションが準備され、ドアミラーに装備したセンサーで水深を検知し限界が近づくと警告が発せられる最大渡河水深は何と900㎜という大きさ。

その他、後輪左右間のスリップを制御してオフロード性能を高める電子制御式のアクティブロッキング・リヤアデファレンシャルなど、生涯必要に迫られることはないというユーザーも少なくないと思われるディバイスも迷わず装備している点に、”本物”としての拘りを感じさせられる。

このモデルにもSUVという記号を当てはめるなら、その”S”の文字は間違いなく「スーパー」を意味するもの――そんな事を感じさせられる世界屈指の1台なのである。

(河村 康彦)

(車両本体価格:2307万円)

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