【河村康彦 試乗チェック】ポルシェ・マカンGTS スポーツカーメーカーが作るSUVとは

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一級のスポーツカーと同等の怒涛のスペック、街乗りは望外のしなやかさ

2021年の会計年度内に史上初めて30万台超という世界販売台数を記録するなど、もはや単純に”小メーカー”とはいえなくなりつつあるポルシェ社。その中でも、9万台に迫る記録を作り、今や「ポルシェのナンバー1ヒット車」となっているのが、カイエンの弟分という立ち位置で2014年にデビューをした『マカン』だ。

マカンはポルシェの年間販売30万台達成のけん引役となったモデルでもある

ここに紹介するのは、フェイスリフトやエンジン出力向上などのリファインを受け、日本では2021年7月から販売されているその最新バージョン。『GTS』は、3グレードが用意をされるそんなマカンの中にあっても、頂点に立つモデルとなる。

7速DCTとの組み合わせでフード下に搭載されるのは、2.9リッターのツインターボ付きV型6気筒エンジン。440PSという最高出力値は従来型のそれを60PSも上回るデータで、0~100㎞/h加速タイムは4.3秒、最高速は272㎞/hと、その動力性能は完全に一級スポーツカー・レベルを誇る。

440PSを発揮する心臓部

そんな怒涛のスペックに恐れおののきながら(?)スタートをすると、想定外のしなやかさに驚かされるのがそのフットワークのテイスト。標準装備のエアサスペンションはデフォルト設定のノーマルモードでは思いのほかダンピングが弱く、そのふんわりとした乗り味に「これで”GTS”を名乗るのはどうなのか?」と一瞬そんな印象を抱かされてしまうほどだ。

その上に目を転じると……フードにはヘッドライトの“穴”も用意されユニークな造形

ところが、ワインディング・ロードへと差し掛かってスポーツモードを選択すると、まずアクセルオフ時の排気サウンドに、バブリング音が混じるなど走りの雰囲気が一変。同時にサスペンションのストローク感もグンと引き締まり、小径ステアリング・ホイールの効果もあって何ともシャープなハンドリング感覚を味わわせてくれることになる。

ハイパワーの走りを支えるホイールは21インチ。レッドキャリパーがただ者でない感を醸し出す

前述のようにエンジン出力は圧倒的。が、それを不安なく路面へと伝えてくれるトラクション能力の高さは、もちろん4WDシステムの採用あってこそ。一方で、だからといって自在なハンドリング感覚が失われることはなく、むしろSUVとしては特筆に値するほどのシャープさを提供してくれたのには、テスト車に”トルクベクタリングプラス”のアイテムがオプション装着されていたことも無関係ではなさそうだ。

こうして、街乗りシーンを中心とした高級車としての乗り味と、まさに”SUVのスポーツカー”という表現がピタリと決まるダイナミックな走りを両立しているのがこのモデルの仕上がり。ここまでの高いレベルでまとめられると、「さすがはポルシェが作ったSUV」と誰もが認めざるを得ないことだろう。

(河村 康彦)

(車両本体価格:1235万円~)

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