【BYD・ATTO3試乗】上質な乗り心地とリニアな加速を誇る高実力EV

all 電動車 試乗記

中国最大のEVメーカーBYDが、日本でも乗用車販売を開始する。その第1弾の一つが、ミドルクラスSUVのEV「ATTO3」。今回はこのATTO3に短時間ながら試乗できたので、その印象をレポートしよう。

フロント周りはスッキリとしたデザイン

BYDはミドルサイズSUVとしているが、ボディサイズは全長4455×全幅1875×全高1615mm。トヨタ・カローラクロスやスバルXV、BMW・X1、ボルボXC40辺りに近い大きさで、少し大き目のコンパクトSUVといったところ。奇をてらわないスッキリとした都市型SUVのスタイルで、走りの良さを感じさせるデザインだ。

リヤもオーソドックスなデザインで好印象だ
タイヤはコンチネンタルの「エココンタクト6Q」を装着。サイズは235/50R18

特徴的なのは室内のデザイン。インパネ周りのデザインは、トレーニングジムをイメージしており、その発想が面白い。センターのエアコン吹出口やシフトレバーはダンベル、左右に伸びる中央のパネルは筋肉をイメージしたというからユニークだ。またドア下部のポケットには3本の赤いロープがあり、荷物が落ちないようになっているが、これはギターの弦を表現しているのだという。

インパネのデザインは特徴的。センターの白い部分の筋は「筋肉」をモチーフにしているという
ドアのデザインも独特。赤いロープはギターの弦をイメージ

 

メーターはステアリングコラム上に配置。やや小さいが視認性は悪くない。スタートボタンや各種の操作系は中央のシフト周りにフラットに配置しており、全体にコンパクトにまとめられたデザインとなっている。中央部の大型ディスプレイは試乗時はエアコンやオーディオなどの表示だけでナビ無しの状態だったが、発売時にはCarPlayも接続できるようになる予定だ。またウインカーとワイパーのレバーは、国産車と同じ左ワイパー、右ウインカーにローカライズされている。

室内空間は広く開放的。後席も頭上、足元とも広く、ファミリーユースでも満足できる空間となっている。また荷室は床の高さを2段で変更可能。後席を倒した時にフラットにすることもできるので、実用性も優れている。

シートの座り心地も良好。赤いステッチがスポーティな印象を高めている
後席のスペースも広く、居住性で不満はない

キビキビとしたシームレスな加速が心地よい

今回は有明周辺をごく短時間試乗しただけだったが、それでも素性の良さは十分に感じることができた。

全体の乗り味は、欧州車を思わせるもの。カッチリとした剛性感の高いボディにしなやかな足回りの組み合わせで、コーナーでも安定感が高く、乗り心地も極めて上質。大き目の段差を越えてもショックを巧みに吸収し、心地よくドライブが楽しめる。またステアリングの操舵感も切れ味がよく、余計な動きがないのも気持ち良い。

EV専用のプラットフォームを採用し、バッテリーはBYDが得意とするリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを床下にフラットに搭載している。ボディ自体の全高はそこそこあるが、重心が低いため動きは素直でフラつくこともない。なおバッテリーの容量は約58kWhで、航続距離は約485km。都市型SUVとしては十分といえるだろう。

そして感心させられたのが、非常にリニアな加速感だ。最高出力は150kw(約200ps)、最大トルクは310Nmで力強いのはもちろんだが、そのパワー/トルクの出方が非常に自然で、かつアクセルの踏み量に対する反応が速いので運転しやすい。今回は高速道路での試乗は出来なかったので、あらゆるシーンで満足できるかは断言できないが、少なくとも街乗りで不満を感じることはない。

フロントに搭載されるモーター。小型のため、ボンネット内はかなり余裕がある

目を見張る中国EVの完成度

失礼ながら「中国車」というと、安かろう悪かろう、といったイメージを持つ人も多いとは思うが、この「ATTO3」は、いい意味でそのイメージを裏切ってくれる。先に上陸した韓国のヒョンデ「IONIQ5」もそうだが、その充実ぶりには目を見張るものがあり、日米欧の自動車メーカーにとって大きな脅威ともなるだろう。特にこれからEV市場で追撃を開始する日本メーカーにとっては、良い刺激になるに違いない。

ATTO3の正式発売は来年1月からの予定だが、大いに楽しみである。(鞍智誉章)

Tagged