【河村康彦 試乗チェック】ポルシェ・タイカン〈ベースグレード車〉 1モーター+RWDの実力は??

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オプションのバッテリーで大容量化→航続距離延長という考え方も

ポルシェ発のピュアEV、『タイカン』のベースグレード車をテストドライブした。すでに『ターボ』『ターボS』、そして『4S』と2モーター式の4WDシステムを持つハイパフォーマンス・バージョンがローンチされているタイカン・シリーズだが、その中にあって実はこのモデルのみが1モーターの後2輪駆動仕様。

シリーズ唯一の後2輪駆動モデル

さらに、細かく見ると標準装備される駆動用バッテリーの容量も異なっていたりするのだが、少々ややこしいことにそこにはより大容量バッテリーのオプションが存在。今回テストドライブのモデルもまさにそれを選択していて、結果として『ターボ』や『ターボS』グレードが標準採用するものと同様の93.4kWh容量のバッテリーを搭載していた。

インストルメントパネル

シリーズ中では、モーター出力も最も抑えられるのがこの“素のタイカン”だが、そうは言ってもそこはやはりポルシェの作品だけあって、十二分な速さを実感。実際、0~100㎞/h加速タイムは5.3秒と発表されているのだから遅いはずもないわけだが、これが最速グレードの『ターボS』になると何と2.8秒と、”恐怖心すら沸く速さ”という事になってしまうのだ…。

前方トランクスペース
ゆとりの後方トランクスペース

理屈の上では4WDに及ぶはずもないトラクションの能力も、前述のようにモーター出力が見事に”調教”されていることもあってか、後2輪駆動だからといって不足を感じるようなシーンは皆無。もちろん、積雪路面にでも踏み込めばまたハナシは違ってくるのだろうが、現実にはそれよりも4WDモデルに対してより長い航続距離を実現できる方にメリットを感じる人の方が多そうだ。

ちなみに、WLTPモードでの一充電航続距離は、今回の大容量オプション・バッテリー搭載モデルで407~484㎞、標準バッテリー搭載モデルでは354~431㎞とそれなりに差が大きく、95万円強という大枚を支払ってまで大容量バッテリーをオプション選択したくなるのは、それによって300kWから350kWへと最高出力を向上させられるからというよりは、この航続距離延長の方に期待をしてという人の方が多そうな気がする。

大容量バッテリーで航続距離延長も手に入れた
国内の急速充電設備の大容量化も望まれるところ

低重心感がタップリでフラット感あふれる乗り味は、4WD仕様のタイカンが持つ最大の美点をそのまま踏襲という印象。一方、大出力充電設備の整備が遅々として進まない日本では、こうした大容量の駆動用バッテリーを持つピュアEVの使い勝手がどうにも悪いという大きなウイークポイントも、いまだ解決できていないのが残念だ。

(河村 康彦)

(車両本体価格:1203万円)

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