【河村康彦 試乗チェック】BMW・iX 車重2.5t超を感じさせぬシャープな加速

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BMWでありながら全くの“別モノ”感が満点

巨大な“キドニーグリル”を備えた顔つきから、それがBMWの作品であることはひと目で理解ができるものの、実はそれ自体は開口部を持たない言わば”張りぼて”のアイテム。ステアリングホイールは何と六角形で、いわゆるメーター・クラスターは存在せずドライバーズシート目前に展開されるのはバイザーレスの超横長ディスプレイ…と、極端にいえばこれまでのこのブランドの常識は何ひとつとして通用しないのが、2021年11月に日本での販売が開始をされた、ピュアEVの『iX』だ。

開口部がないキドニーグリル
従来のスイッチ類操作はパネル操作に変わった

ちなみに、現在のところそこには『xドライブ40』と『同50』という二つのグレードがあって、今回テストドライブしたのはより大容量の駆動用バッテリーと、より大出力を発する後輪用モーターを搭載した50モデルの方。ただし、2022年頭にラスベガスで開催された”CES”の会場でBMW車にとって重要な『M』の文字を冠したさらなるハイパフォーマンス・バージョン『iX M60』も発表されているので、いずれこちらもラインナップに加えられる可能性は濃厚だ。

最小回転半径が6mと、乗る人を選びそう

全長×全幅サイズは4955×1965㎜と巨大で、ホイールベースはちょうど3m。それゆえ、最小回転半径も6mと大きいので、まずはこの時点で”乗る人を選ぶクルマ”ということになりそう。ちなみに、車両重量も2.5トンを超えるのでこの点も要注意。パレット式自走式共に、2.5トンまでという制限が付くところが少なくないからだ。

まずは、コクピットドリルを受けてからでないと走り出すことすらままならない(?)ので、ひと通り説明を受けた後にようやくのスタート。前述のごとく重量級ではあるものの、ピュアEVの例外に漏れずアクセル操作に対する挙動の追従性は、すこぶるシャープで加速感も軽快。0~100㎞/h加速はわずかに4.6秒というので、それも当然ではあるわけだが。

ステアリングホイールは円形ではなく六角形

「しかし、何でわざわざ六角形なんだろう」と違和感満点なものの、ステアリング操作に対するクルマの動きはスムーズでこちらは違和感なし。ちなみに、このモデルでは「映画音楽作曲家が手掛けた」と称される”アイコニック・サウンド・エレクトリック”なる走行効果音が電子的に発せられるものの、それがアイドリング音(?)までを奏でるのにはびっくり。

ラゲージスペースは深く大きく取られている

かように、何とも興味深いモデルではあったものの、しかし「これは本当にBMWが作りたかったクルマなのであろうか?」と、そんな疑問が最後まで拭えなかったというのも正直なところではあった。

(河村 康彦)

(車両本体価格:1070万円~1280万円)

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