【第41回JAIA試乗会レポート①】BEVであることを意識させない穏やかな走り プジョー・e-2008GT

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輸入車のインポーターで構成される日本自動車輸入組合(JAIA)は、輸入車の魅力を広く発信すべく、自動車メディアやジャーナリスト向けに毎年試乗会を開催している。昨年は新型コロナの影響で残念ながら中止となってしまったが、今年は2月1日~3日の日程で無事に開催。当編集部も参加し、気になるモデルを試乗チェック。そのレポートを数回に分けてお届けします。

・プジョー e-2008GT


電動化戦略の核としてBEVの拡充を加速させる欧州ブランド。メルセデスは「EQ」、BMWは「i」、アウディは「e-tron」、VWは「ID.」といずれもBEVの新シリーズを立ち上げ、新たなブランド構築をスタートさせている。一方でやや異なるアプローチを見せているのがフランス勢で、プジョーもその一つ。既存のモデルラインにBEV仕様も加え、ガソリンやディーゼルと並列する一つの選択肢としているのが特徴だ。

今回試乗した「e-2008」も同様。1.2Lガソリンターボを搭載するコンパクトSUV「2008」のBEV版という位置付けだ。エクステリア、インテリアも基本的に共通で、グレードも「アリュール」と「GT」の2本立てで同一。BEVは特別なものではなく、あくまでパワーユニットの1つというわけである。ちなみにガソリン車の「2008」の最高出力は130ps、最大トルクは230Nm、BEVの「e-2008」は最高出力136psで最大トルクは260Nmで、パワー、トルク値もほぼ同等。ただし車両重量はバッテリーを搭載する分、e-2008の方が約330kgほど重い。搭載するバッテリー容量は50kWhで、WLTCモードの一充電走行距離は360kmとなっているから、どちらかといえば近・中距離用BEVといえるだろう。

室内デザインもガソリン車と同様。メーターの表示以外でBEVを意識することはない
シートの座り心地も良く、乗り心地に不満はない

実際に走らせてみると、意外なほどBEV感がない。間違えてガソリン車を借りてしまったのかと思ったほどだ。BEVはアクセルを踏むと同時に鋭い加速をみせるモデルが多いが、e-2008はガソリン車同様、わずかなタイムラグの後、緩やかに加速を開始する。走行モードを「スポーツ」にすると加速に力強さが増すが、それでも速さはほどほどで、基本的な味付けは変わらない。

したがってガソリン車、ディーゼル車から乗り換えたとしても、まったく違和感がない。違うのは燃料を入れるか、充電するか、ということと、走行時の静粛性だけだ。プジョーとしてはBEVへのスムーズな移行を可能にするとともに、加速を緩やかにすることで航続距離を伸ばしたかったのであろうし、また、あえてモーター駆動感を強調する時代は過ぎたということかもしれない。

ボンネットの下にはエンジンに代わってモーターが収まる

ともかく、e-2008の走りは日常の中で普通に使うのに最適なセッティングといえるだろう。街中でアクセルをベタ踏みするような機会はほとんどないし、わずかに踏んだだけでも急加速するのではかえって運転しにくい。反面、シートに押し付けられるようなモーター駆動ならではの強烈な加速感がBEVの魅力と捉える人には不向きである。

乗り味はやや硬めで、これもガソリンの2008と似た傾向だ。車両重量が増している分だけ安定感が増しているが、ブレーキの操作感やコーナーリングでの挙動も自然で運転しやすい。スタイルはともかく走りに関してはクセがなく、全体に無国籍風な感じだが、これも実用車としては美点といえそうだ。(鞍智誉章)

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