【トヨタ・ノア/ヴォクシー試乗】高い実用性と爽快な走りを実現した理想のミニバン

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ファミリーユーザーを中心に高い人気を続けているのがミドルクラスミニバン。その代表がトヨタ・ノア/ヴォクシー、日産・セレナ、ホンダ・ステップワゴンとなるが、その中で今年はノア/ヴォクシーとステップワゴンがフルモデルチェンジ。ここ数年はSUVの新型登場が相次いだが、今年はミニバンが注目を集めることとなりそうだ。

そのような中で、今回は今年1月に登場した新型ノア/ヴォクシーに試乗。短時間のテストドライブだったが、乗り心地、使い勝手ともに大きく進化しており、その実力の高さには驚かされた。

新型ノア
新型ヴォクシー

さらに充実した快適な室内空間と便利な装備

現在のミニバンの主流はメッキパーツを多用したイカツイ系デザイン。ノア/ヴォクシーはその保守本流ともいえる存在だ。これに風穴を開けるべく新型ステップワゴンはプレーンな外観デザインを採用したが、新型ノア/ヴォクシーは王道路線に変更なし。先代からの流れをブラッシュアップさせつつも基本的には踏襲している。

このため一見すると、それほど大きく変わったようには見えないのだが、実のところそう思えるのは外見の印象だけ。骨格となるプラットフォームが刷新されたこともあって中身は飛躍的に進化しており、まさに新世代のミニバンと呼ぶにふさわしい内容を備えている。

まず運転席に座って感じるのは、視界の広さ。フロントピラーがスリムになり、またインパネの高さが抑えられたことで、これまで以上に開放感が向上している。特に斜め前の視界が大きく開けたことで感覚も掴みやすく、狭い路地でも運転しやすい。新型ではボディ全幅が拡大され全車3ナンバーとなったが、運転中にそれを意識することはなく、扱いやすさはこれまで通りだ。

横基調のインパネで、視界も広々としている

後席の広々とした開放感も従来以上。試乗車は2列目シートがキャプテンシートとなる7人乗り仕様だったが、シートを横移動させることなく後ろまでスライドできるので、アレンジも楽。3列目シートは片手で格納が簡単にできるようになったことに加え、シート自体の厚みを抑えたことで荷室の使い勝手も向上している。その上で3列目シートの座り心地も良く、常時3列を使うというユーザーでも満足できるだろう。最近は3列シートを備えるSUVもあるが、足元スペースの広さも含め、この点ではやはりミニバンとは比較にならない。

オットマンも備えられた2列目シート
3列目シートの座り心地も悪くない
展開・格納も簡単操作。ベルトで固定する必要もなくなった

モーターを使わず「からくり」で展開・格納するサイドステップなど、装備面でもアイデア満載の新型ノア/ヴォクシーだが、中でも注目できるのはバックドアだ。ミニバンはバックドアが大きく、背後のスペースに余裕がない駐車場では全開に出来ないことも多いため、これをいかに使いやすくするかはミニバンに共通する課題といえる。このため、例えばセレナではガラスエリアだけ開けられるハーフバックドア機能、ステップワゴンは新型では廃止になってしまったけれど、縦にも横にも開く「わくわくゲート」を採用するなど、各社様々な工夫を凝らしている。新型ノア/ヴォクシーではこれに対し、任意の角度で保持できる「フリーストップバックドア」を採用。バックドアを開きたい角度まで上げて、ちょっと押すとそこで止まってくれるので便利だ。またパワーバックドア装着車はボディ後端の両サイドに開閉スイッチがあり、クルマの横で操作が可能。開きたい角度でスイッチを離せばそこで止まってくれるので、狭いスペースでもスムーズに荷物を出し入れすることができる。

任意の角度で保持できる「フリーストップバックドア」

無駄のない動きとゆったりした乗り心地を両立

搭載するパワートレーンは、2Lガソリンと1.8LのHV。どちらも排気量は先代と同様だが、ガソリン車のエンジンは先代の「3ZR-FAE」から、ハリアーやRAV4にも搭載されるダイナミックフォースエンジン「M20A-FKS」に変更。最高出力、最大トルクを上げつつ燃費性能も向上させている。一方、HVはエンジン自体は先代と基本的に同じだが、モーターやバッテリー、パワーコントロールユニットなど、その他の電動モジュールが刷新された第5世代となる最新版を搭載。これまでトヨタの最新HVシステムは、まずプリウスから搭載されてきたが、今回はその通例を破って搭載されたということからも新型ノア/ヴォクシーへの力の入れ具合が分かる。これにより、WLTCモード燃費は23.4km/Lとなり、クラストップの燃費性能を実現している。

まずHVから試乗したが、ごく低速時から加減速が極めてスムーズなことに感心させられた。アクセルの踏み始めからトルクも力強く、フル乗車時であっても街中でパワー不足を感じることはまずないだろう。エンジンが始動した際も気になる音や振動はなく、ストレスを感じさせない。

また乗り心地も良好。硬すぎず柔らかすぎず、前席、後席とも快適だ。先代はボディ剛性の不足を張りのある足回りで補い、無理に挙動を安定させているような不自然さがあったが、新型ではTNGAプラットフォームの採用によってボディ剛性が確保されたため、しなやかな足回りとの組み合わせとなり、ドライビングフィールと乗り心地の両方とも満足できるものとなった。ステアリング操作に忠実に動き、段差を超えてもしっかりとショックを吸収、コーナーでも腰砕けになったり、変に突っ張ったりしないので、安心してドライブできる。ミニバンにありがちな余計な動きがなく、それでいてゆったりとした乗り心地は、これまでのミニバンでは実現できなかった理想形といえるだろう。

ガソリン車も基本的な乗り味は共通だ。発進時のスムーズさと、走行中の静粛性はHVには敵わないものの、同時に乗り比べなければ気にならないレベル。ガソリンのMクラスミニバンとして極めて高いレベルにある。日常で不満を感じることはないはずだ。

先代ノア/ヴォクシーの大きなウイークポイントだった先進安全・運転支援装備もトヨタ最新のものが装備されるなど、名実ともに最新ミニバンに生まれ変わった新型ノア/ヴォクシー。使い勝手はもちろん、運転する楽しみも含め、まさにMクラスミニバンの決定版といえるだろう。すべてのミニバンユーザーにオススメしたい超実力車である。(鞍智誉章)

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