【河村康彦 試乗チェック】BMW・M135i xDrive 強心臓がもたらすダイナミックな走り

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最強バージョンだが寂しさも…

妙に語呂が良いこともあってか(?)、このところ事あるごとに耳にするのが「100年に一度の変革期」という昨今の自動車界にまつわるフレーズ。

もっとも、それは主に”電動化”や”自動運転化”といった事を示すのが一般的ではあるようだが、ここに挙げるのは“FF化”や”レスシリンダー化”といった変革。そう、ひと昔前にはブランド自体の特徴を示すキーワードでもあった『FRレイアウト』や『直列6気筒エンジン』の持ち主が次々と姿を消し、前述のような変革を遂げつつあるのがBMWの作品。今回紹介するのも、まさにそうしたこのブランドの昨今の立ち位置を顕著に表現している、日本では2019年8月に発表された3代目1シリーズである。

テストドライブを行ったのは、現時点での最強バージョンとなる『M135i xドライブ』。元来ならば、当然直列6気筒であろうと想定されるオーバー300PSを発する強心臓は、なんと4気筒のターボ付き。そして、”xドライブ”の名が示す通り4WD化されたシャシーは、こちらもかつてなら当然と思えたFRベースではなく、FFレイアウトからの発展形なのである。

300PSを発揮する直列4気筒2.0リッターターボ

どうやらこれらは、もはやBMWユーザーにも「駆動方式を気にする人などさほどいない」といった調査結果からの判断である模様。それでも、長年のファンにとってはやはり一抹の寂しさを感じるであろうことは確かで、そんな不安の声の払拭を狙ってか、サスペンションのチューニングなどにはFRレイアウトの持ち主同等以上のダイナミックな走りのテイストを実現させる工夫が盛り込まれているという。

実際に走り始めると、ステアリング操作に対する応答性は思いのほかシャープで驚かされるほど。さすがに6気筒エンジンならではのサウンドを聞くことは出来ないが、パワー…というよりもわずかに1750rpmから発せられる450Nmという太いトルクが実現させる圧倒的な速さに不満があるはずもない。

 

前輪は空気圧高めの指定

サイドウォール補強型のランフラット・タイヤを履くことに加え、やはり俊敏な走りの感触を実現させようという意図もあってか特に前輪タイヤの指定内圧が2.7barと高く設定されていたことから、フットワーク・テイストは思った以上に硬質。前述のステアリング操作に対する応答性の高さと相まって、その走りの印象がちょっとばかりせわしなく感じられたのも事実ではある。もちろん、その意図も分かりはするものの、やはり得も言われぬ寂しさも拭い去れなかった1台である。

(河村 康彦)

(車両本体価格:654万円)

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