前回に続き、ダイムラーベンツの美しい本からの引用で楽しいポスターを拾ってみよう。
先ず1907年/明治40年のリトグラフで、細密に描かれているベルギーのアルデンヌ・サーキットを疾走するのはダイムラーメルセデス130馬力レーシングカー。優勝はベルギー貴族カーター男爵で、全行程597粁の平均速度は92㎞だった。
この車の原型は1901年型メルセデスシンプレックス35PSから進化した、03年登場の9.2ℓ60PSか12ℓ90PSだ。その60PSは名手カミーユ・ジェナツィの操縦でゴードンベネット杯に優勝し、その直四SV9.29ℓ・65馬力/1100回転は時速128㎞をマークした。
もっともこの頃ダイムラーは1900年に早逝、開発に腕を振るっていたのはマイバッハ。が、マイバッハを嫌うW.ロレンツの社長就任で1907年に退職し、ツェッペリン伯爵と組み航空エンジン開発製造を始めるのである。
で、カーター男爵のメルセデスは、マイバッハ最後の作であろう。
二枚目はメルセデスのスポーツカー14/30hp車と見上げる飛行船はツェッペリン、年代は1910年。
前回紹介したようにダイムラーの夢は発明した発動機の陸海空での活躍だったように、1900年飛行成功のツェッペリンLZ1の発動機はダイムラーだった。で、ポスターは1907年だから、搭載機関は未だマイバッハ開発のダイムラー発動機のはず。
さて、絵のメルセデスは14/30PSとあるが、同時代にレーシングカーから派生の45/50PSが存在するから、メルセデスでは安価な軽量スポーティー車だったと思うが、手元に詳細資料がないので諸元御容赦を。
三枚目は、1913年のメルセデス37/90PS。この時代までは未だチェーンドライブ駆動で、V字型のラジェーターは1911年頃から使いだされたもの。上部両側にスリ-ポンテッドスタを配している。
このダイムラーの夢、陸海空を表すスリーポインテッドスターは、1909年商標登録申請、1911年に認可されている。
このメルセデス37/90PS車は、直四・9.5ℓ・90~95馬力、最高速度115粁だが、速いのが好きというマニアは、飛行機用の150馬力に換装したりしたと聞く。
車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。