【遠藤徹の業界ココに注目】電気自動車の普及が遅れている理由

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地球温暖化の対応策として、自動車については2030年代中に100%ガソリン車の全面廃止策が政府から打ち出されている。日産はじめ各社が新型電気自動車、燃料電池車を相次いで発売し、普及に躍起になっている。

しかしながら、現実は普及が遅々として進んでいないのが現状である。電気自動車でいえば、絶対的な車両代が高い、充電インフラが進んでいない、充電後の走行距離が短い、などが指摘されている。

ユーザーの立場から見れば、普及が進まないのは当然といえる。内燃機関車(ガソリン、軽油)と比較すればすぐに理解できる。ガソリンスタンドへ出向けば安く、短時間で手軽に給油できるし、車両価格が電気自動車よりも100万円以上も安いのだから、敬遠するのは当然といえる。

本格的に普及が進むとすれば、石油資源がひっ迫するといったような、大きな動きが発生するなどの十分条件が必要になりそうだ。ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車が普及すれば、石油消費が格段に減少し、資源の枯渇が大幅に先延ばしになるかも知れない。軽自動車は農村や過疎地で欠かせない足として普及している。山間部では細い道路を走行するのに便利だ。100%ガソリン車を廃止したら、軽自動車は生き残れないだろう。電気自動車に置き換わるとすれば、地方や山間部のユーザーは移動する足を失うことになる。

それを強行しようとする政治家は、国民の代表で活動する基盤を失う可能性がある。そうなればユーザーの活路は中古車に向かい、古いクルマがいつまでも走り続けることになるに違いない。どちらにしろ今後は難問が数多く待ち受けていることだろう。

(遠藤 徹)

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