利便性を向上させる細かな改良が充実
オーソドックスなセダン・ボディと、VWが『ヴァリアント』と呼ぶステーションワゴンに加え、パサート第三のボディ・バリエーションと言えるのが「オールトラック」。それは、ヴァリアントをベースに足回りやシューズの変更で車高をわずかに持ち上げ、専用のコスメティックによってアウトドアなイメージを強調した、いわばステーションワゴンとSUVのクロスオーバー的雰囲気に仕上げられたモデル。ちなみに、車名中のトラックは貨物車を示すそれではなく、様々な路面に対する適性の高さを意味するフレーズである。
先般実施をされたマイナーチェンジによるリファインのメニューは、他のパサート・シリーズと同様だ。すなわち、コクピット回りのデジタル化や、ADAS機能のアップデートなどがそのメインどころ。従来の前車追従式クルーズコントロール“トラフィックアシスト”は、同一車線維持機能のついた“トラベルアシスト”へと進化し、ステアリングを保舵していることを感知するセンサーが静電容量式に変わって、誤ったワーニングを示す頻度が減ったという細かな改良点もある。実際、ステアリングスイッチへのタッチひとつで動作を始めるこのシステムは、同種のものの中でもすこぶる使いやすい。見た目の変化としては小規模なマイナーチェンジだが、その内容はこうしてなかなか充実をしているのだ。
搭載する2リッターのターボ付きディーゼルエンジンに変化はないが、組み合わされるDCTが6速から7速仕様に変わっている。変速時のスムーズさがより増したように感じられるのは、こうして隣合うギア同士のステップ比が小さくなった影響もあるはずだ。
車高の変化は決して大きなものではないのだが、ドライバーズシートへと腰を下すと、確かにアイポイントが高くなっていることを実感する。一方、ステアリングを通じての路面とのコンタクト感は“普通のパサート”よりもやや希薄な印象を受けるのは気のせいだろうか?
端的に言って、「ディーゼルでヨンク」のパサートが欲しいとなったらオールトラックで一択。そうやって選んでも、普通のパサートヴァリアントでできないことは何ひとつないこのモデルである。
(河村康彦)
(車両本体価格:561万1000円~613万9000円)