メガクルーザーとハマーとハンビー

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WWⅡ中世界の戦場で活躍したジープは、いわば兵器である。
その利便性が認められて、日本の警察予備隊(現自衛隊)向けに開発したのがトヨタジープと日産パトロール。
が、自衛隊に採用されたのは、本家ジープをライセンス生産した三菱ジープだったから、商標権侵害でトヨタジープはランドクルーザーに。トヨタはジープを四輪駆動車の代名詞と思ったようだ。

もちろん欧米でも、ランドローバーやベンツ・ゲレンデワーゲンなどが登場。後発のダイハツ・ロッキー、小さいがスズキ・ジムニーを含めて、これをヘビーデューティ四駆、クロスカントリー型/クロカンなどと呼んでいる。

一方1981年、いすゞビッグホーン、次いで三菱パジェロの登場で街乗兼用四輪駆動車、いわゆる乗用四駆の花が一気に花開き、後追い続々出、その花は世界に広がった。これをシティー派クロカンなどと呼んでいた、

この一群の乗用四駆は、時を経て変化発展、SUVの名で今や世界的流行となった。ロールスロイス、ベンツ、レクサス、ポルシェ、マセラティなど、一昔前なら常識的に無縁だったジャンルの車にまであるのだから、流行とは恐ろしいものである。

それはそれとして、ヘビーデューティー四駆の方も、更に強力な車種が登場している。ジープと同様に出発点は米軍の兵器だろうが、1985年に登場したのがGMのハンビーで、中東砂漠での作戦用に開発と云われている。

米軍ハンビー/wikipedia参照:V8ディーゼル・6.2ℓ・190馬力・全長4840x全幅2160x全高1870㎜・車重2.3屯・最高速度125km・航続距離443km。シュノーケルと高位置排気管が見えるから窓下部ほどまでの水深なら走行可能だろう。

そのハンビーをベースに、俳優シュワルツネッガーの注文で92年に誕生したのがハマー…が、原油価格高騰のあおりで、4km/ℓという燃費の悪さから売上げ激減で、2010年で生産終了した。

ハマー:V8+ターボ・195馬力・4AT/5AT・全長4686x全幅2197x全高1956㎜・WB3302㎜・車重3~3.6屯。

一方で我が日本、自衛隊用に開発したのがトヨタの高機動車。和製ハマーの愛称も生まれた。もっとも米軍のは戦闘用だが、自衛隊向けは人命救助、災害救助目的と云っている。

そして民間用メガクルーザーも1996年に誕生した。が、回転半径9米ほどのハンビーに対し、日本らしい改良でメガクルーザーは5.6mと通常のSUVと変わらぬ小回り特性を持っている。その仕掛けは、油圧で逆位相になる後輪、いわゆる4WS/四輪操舵の採用だった。

96年、私は富士裾野のトヨタの試験場で試乗したが、驚異的走破力に驚き感心したのを憶えている。が、当時1000万円前後という高額車は、一部裕福な愛好家に売れただけで、あとは消防や公共団体がユーザーで、最終的に132台で2001年に生産終了した。

トヨタ富士試験場の泥濘路を走るメガクルーザー:直四ディーゼル・4104cc・155馬力・4AT/全長5090x全幅2170x全高2075㎜・WB3395㎜・車重2850kg/四輪Wウイッシュボーン・タイヤ37×12.50R175・8P/燃料108ℓ。(運転席は自動車評論家故川上完)

 

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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