使い勝手に優れたクロスオーバー
アルテオンのマイナーチェンジを機に追加された新ボディがシューティングブレーク。VW曰く「ステーションワゴンとスポーツカーのクロスオーバー」と言いたくなるキャラクターの持ち主ということで、なるほどなかなかスタイリッシュではある。
すらりと長く見えるボディは実はベースの5ドアモデルと同寸法。すなわち荷室容量拡大を目的に延長されたかに思えるリヤのオーバーハングも、実は全く変わっていないのに驚く。
一方で、こうして一見すると「見た目重視」のようにも思えるアルテオンのニューバージョンが、実際にはむしろ既存の5ドアをも凌ぐ高いユーティリティ性能を秘めていることにもまた驚かされる。例えば後方でのルーフの落ち込みが少ないため、後席乗降時の頭部の運びが楽だし、そもそもアルテオン自体が後席スペースにゆとりがあるモデルだったため、“シューティングブレーク化”をされた後も、やはり後席使い勝手の高さは大きな美点のまま。
また、元来大容量のラゲッジスペースはまさにステーションワゴンと同等以上のマルチな使いやすさを実現。決して見かけばかりのモデルではない事を証明してくれるのである。
テストドライブを行ったのは日本に導入される3グレードの中にあって、専用のボディキットやシートなどで少々スポーティなキャラクターが演出された「Rラインアドバンス」。20インチのシューズを履くゆえにさすがに路面凹凸へのあたりはやや強いものの、電子制御の可変減衰力ダンパーを標準で採用するサスペンションは、思いのほか滑らかにストロークする。最もソフトな「コンフォート」ではボディの動きがやや大きめに現れるので、個人的にはその上の「ノーマル」が好みのポジションとなった。
日本仕様のパワーパックは2リッターの直噴ターボ付き4気筒ガソリンエンジン＋7速DCTの組み合わせのみ。大柄で4WDシャシーの持ち主のため、車重は決して軽くはないが実際の力感は十分以上。静粛性もフラッグシップモデルに相応しい高さだ。
もはやSUVも食傷気味という人にとって、なかなか気になる存在であるに違いない。（河村康彦）
〈車両本体価格：624万6000円〉
