日産、世界初の電気自動車生産ハブ「EV36Zero」に10億ポンドを投資

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日産は7月1日、欧州におけるカーボンニュートラルの実現に向け、世界初の電気自動車(EV)生産のエコシステムを構築するハブとして、新たなプロジェクト「EV36Zero」を公開した。

 

同社はEV36Zeroにより、サンダーランド工場を中心にカーボンニュートラルへの取り組みを加速させ、ゼロ・エミッション実現に向けて、新たに360度のソリューションを確立する。同プロジェクトには、日産とエンビジョンAESC、そしてサンダーランド市議会によって10億ポンドが投資され、EV、再生可能エネルギー、バッテリー生産という相互に関連した3つの取り組みによって、自動車業界の未来の青写真を示している。

現在サンダーランドでは、「キャシュカイ」「ジューク」「リーフ」などの車種を生産し、その多く(約70%)を欧州諸国に輸出、約20%を英国内で販売、約1 0%を南米、オーストラリア、北欧、南アフリカなど、世界各地の市場に輸出している。

プロジェクト公開に際し、日産の社長兼CEOの内田 誠氏は、「日産はライフサイクル全体でのカーボンニュートラル実現を目指し、EVの開発・生産だけではなく、車載バッテリーの蓄電池としての活用や、二次利用など、包括的な取り組みを行ってきたパイオニアです。今回の決定はその一環であり、これまで、社内で様々な検討を重ねてきました。このプロジェクトは、欧州におけるカーボンニュートラルの取り組みを大きく加速させるものです。ここで得られた経験・ノウハウを他の地域にも共有し、グローバルでの競争力を高めていきます。今後も日産は電動化における強みを活かし、お客さまと社会に価値を提供しつづける企業を目指していきます」と語った。

また、英国のボリス・ジョンソン首相は、「日産がサンダーランドで新世代のEVを生産すること、そしてエンビジョンAESCがギガファクトリーを建設すると発表したことは、英国とその北東部の高度に熟練した労働者に対する大きな信頼の証です。この地域には30年以上の歴史がありますが、今回の発表はまさにEV革命の重要な瞬間であり、今後何十年にもわたって未来を約束するものです。これらのコミットメントは、環境に配慮した多くの雇用を創出し、英国の産業を活性化するとともに、人々が気候変動へ影響を与えることなく、手頃な価格かつ持続可能な方法で移動できるようにしていきます」と述べた。

【新世代クロスオーバーEV】

日産は10億ポンドの投資の一環として、最大4億2,300万ポンドを投資し、新世代のクロスオーバーEVを英国で生産する。この新世代EVは、同社の強みであるクロスオーバーの知見と、世界で「リーフ」を50万台以上販売してきた実績をもとに、新たな時代にふさわしいスタイリングと効率性、バッテリー技術を備え、EVへの乗り換えを促進する。

新世代EVはグローバルカーとして設計され、サンダーランド工場で生産を行い、欧州市場にも輸出される。アライアンスCMF-EVプラットフォームをベースとし、最大年間10万台の生産が可能。サンダーランド工場では909名、英国内のサプライチェーンでは4,500名以上の雇用が創出される。今回のプロジェクトにより、同工場への累計投資額は50億ポンドを超え、さらに今回の投資には以下の内容が含まれる。

  • ベッドフォードシャー州クランフィールドにある日産テクニカルセンター・ヨーロッパでの研究開発
  • 英国のサプライヤーのEVへの移行を支援
  • 工場の競争力強化と環境改善
  • 将来の技術に対応する日産の従業員の技能開発

その他の生産拠点は現時点では未定となっており、価格や技術など新世代EVの詳細については販売開始に向け順次発表を予定している。

新世代クロスオーバーEV(イメージ)

【次世代EV用電池】

エンビジョンAESCは、2012年に「リーフ」の生産を現地化するため設立したバッテリー工場をサンダーランドで運営しており、9年間にわたって英国で「リーフ」および「e-NV200」にバッテリーを供給してきたノウハウを有している。これまでに同工場で生産されたセル、モジュール、パックは、44カ国で販売した18万台以上のEVに搭載され、品質、性能、安全性、信頼性、コストにおいて、グローバルなベンチマークレベルに達している。

同社は、日産の新世代EVにバッテリーを供給するため、4億5,000万ポンドを投資し、サンダーランド工場に隣接するインターナショナル・アドバンスド・マニュファクチャリング・パーク(IAMP)に、再生可能エネルギーで稼働し、次世代バッテリーを生産する、英国初のギガファクトリーを建設する。

新工場では、航続距離と効率性を向上させるためにエネルギー密度を30%向上させた新しい第5世代のバッテリーセルを採用するなど、英国で生産されるEV用バッテリーのコスト競争力を向上する。同バッテリーは、日産の新型EVに搭載され、高度な技術を搭載した車両部品やコンポーネントの継続的な現地化をサポートする。この取り組みにより、将来的にバッテリーコストの低下につながる。

【ゼロ・エミッション車とゼロ・エミッション生産】

サンダーランド市議会は、このエコシステムを活用し、年間55,000トンの炭素を削減する100%再生可能な電力の「マイクログリッド」を実現するプロジェクトを主導している。当初の計画では、日産の既存の風力発電や太陽光発電の設備に加えて、最大で10基の太陽光発電設備を建設することで、132MWの発電量を見込んでいる。また、英国の送電網からの再生可能エネルギーとあわせ、日産と隣接するインターナショナル・アドバンスド・マニュファクチャリング・パーク(IAMP)にある自動車関連企業に「安定した」100%クリーンな電力を供給する。

同プロジェクトは、8,000万ポンドの投資を見込んでいるほか、日産/エンビジョンAESCバッテリーを二次利用した1MWの蓄電システムも計画されている。この蓄電システムにより、昼間に発生した余剰電力を別の時間に使用することで、送電網の需要バランスを取ることが可能となる。

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