N-BOXに死角あり!?軽スーパーハイトの先進安全装備比較

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手頃な価格と維持費の安さなどから、今や国内新車販売の約4割を占めている軽自動車。ボディ剛性の向上や安全装備の充実によって、一昔は低いと思われがちだった安全性も大きく向上している。今回は、軽自動車の中でも特に入れ筋となっているスーパーハイトワゴンのホンダ・N-BOX、スズキ・スペーシア、ダイハツ・タント、日産・ルークス/三菱自動車・eKスペースに搭載されている主要な先進安全装備を比較したい。(編集部)

 

■衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)

“自動ブレーキ”とも呼ばれている「衝突被害軽減ブレーキ」は、今や登録車だけに留まらず、軽自動車や商用車にも広く標準装備されている機能の一つで、基本的には全グレードに標準装備(レス仕様も有)されている。自車前方の車両や人を検知し、衝突回避を支援するという機能自体に大きな違いは無いが、検知できる対象物や作動上限速度は各車異なる。

 

・N-BOX

N-BOXの衝突被害軽減ブレーキは、約5km/h以上で走行中に自車との速度差が約5km/h以上ある車両や歩行者、人が乗車して移動する自転車に対して衝突するおそれがあるとシステムが判断したときに作動し、停止または減速することにより衝突回避や衝突被害の軽減を支援。作動上限速度は、車両・歩行者ともに100km/hとなっており、夜間でも車両・歩行者の検知を可能としている。

また前方・後方の誤発進や急加速を抑制する「誤発進抑制制御」機能は、今回比較するモデルの中で唯一ブレーキ制御がなく、警報による注意喚起に留まる。

・スペーシア

スペーシアの自動ブレーキ機能は「デュアルカメラブレーキサポート」と呼ばれ、約5~100km/hの速度域で走行中に前方の車両や歩行者を検知し、衝突不可避であると判断した場合は強力な自動ブレーキを作動させ、衝突回避もしくは被害軽減をサポートする。作動上限速度は、車両100km/h、歩行者60km/hで、夜間でも車両・歩行者検知も可能としている。

前方誤発進抑制機能は停車または徐行中(約10km/h以下)、前方約4m以内に障害物を検知している状態で、アクセルペダルを強く踏み込んだ場合、後方誤発進抑制機能は、停車または約10km/h以下で後退中、後方約3m以内に障害物を検知している状態で、アクセルペダルを強く踏み込んだ場合に作動する。

 

・タント

タントの衝突被害軽減ブレーキは、走行中に前方の車両(二輪車、自転車を含む)、歩行者を認識し、衝突の危険性があると判断した場合にドライバーへ注意喚起。さらに危険性が高まった場合には緊急ブレーキで減速する。作動上限速度車両 80km/h、歩行者50km/hで、夜間でも車両・歩行者を検知する。ブレーキ制御付誤発進抑制機能(前方・後方)も備えており、スペーシアの作動条件とほぼ同じとなっている。

 

・ルークス/eKスペース

ルークス/eKスペースの衝突被害軽減ブレーキは、走行中に前方の車両(二輪車、自転車を含む)、歩行者を認識し、衝突の恐れがある場合には、ドライバーの回避操作を促し、ドライバーが安全に減速できなかった場合にはブレーキをかけて衝突回避を支援する。作動上限速度車両 80km/h、歩行者60km/hで、夜間でも車両・歩行者を検知する。ブレーキ制御付誤発進抑制機能(前方・後方)も備えており、前進時(停車時含む)は車両や歩行者を検知している場合にも作動する。

 

■ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)

軽自動車でも急速に普及が進んでいる「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」は、アクセルとブレーキの操作を制御して、車間距離を維持しながら先行車に追従する機能。主に高速道路での使用となり、長距離移動の際にはドライバーの疲労軽減にも貢献する。

今回比較する車種はすべてACCが装備(一部非搭載グレード有)されており、スペーシア、タント、ルークス/eKスペースは全車速追従型になっている。中でも、ルークス/eKスペースは電動パーキングブレーキを採用しており、停止保持まで自動で行う優れものになっている。なお、スペーシアとタントは停止2秒後に発進する。

N-BOXのACCは速度設定の下限は30km/h以上で全車速に対応しておらず、この部分では他車より劣っている。

■車線逸脱支援

ACCと合わせて使いたいのが、車線逸脱を防止する機能だ。ハンドルから手を離すことはできないが、高速で使うと自動で車間と車線の中央を維持するので、擬似的に自動運転のような感覚を体感することができる。スペーシアを除く3車種は車線逸脱支援機能を持つが、スペーシアは車線逸脱時の警報のみで、元の車線に戻す機能は備えていない。

このほか、オートハイビームは4車種とも装備しているが、ハイビームを部分的に遮光し、対向車の眩惑を低減する「ADB(アダプティブ・ドライビング・ビーム)」は、タントとルークス/eKスペースの上級モデルに装備。登録車でもまだ普及が進んでいない装備で、先進性の高さも魅力となっている。

■先進安全装備で選ぶならタント、ルークス/eKスペースが優位

主要の先進安全装備を比較してみると機能に大きな差は見られないと言えるが、現在日本で一番売れているN-BOXに最良の先進装備が搭載されているわけではない。先進安全装備面だけでみると、現在軽スーパーハイトワゴンで唯一電動パーキングブレーキを採用する電動ルークス/eKスペースが一番充実していると言え、普段使いの街乗りから、レジャーなどでの遠出の際にも役立つ機能が多い。

ただ、下道中心で日常の足として使う場合には、ACCやレーンキープといった運転支援機能は使う頻度が少なく、誤発進抑制や歩行者検知機能などの方が重要と言える。デザインや燃費だけでなく、安全装備の充実度もクルマ選びで重要な要素になっているので、購入の際にはしっかりとチェックしたり、わからないことは販売員に聞いてみて欲しい。

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