【発売から 1 年】なぜ売れている?トヨタ・ヤリスが支持されている理由

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トヨタを代表するコンパクトカーだったヴィッツが「ヤリス」に名称が改められ、発売されてからおよそ1年が経過した。昨年8月にSUVのヤリスクロス、9月にスポーツタイプのGRヤリスが相次いで投入。これらを合算したヤリスシリーズは、自販連(日本自動車販売協会連合会)が発表する車名別新車販売台数において、20年7月から21年4月まで10ヵ月連続で1位を獲得する人気ぶりを見せている。発売から1年を経た現在でも、高い支持を得ている理由を考察した。(編集部)

 

30.0km/Lを超えるハイブリッドの低燃費性能

パワートレインは1.0Lと1.5Lのガソリン、1.5L+モーターのハイブリッドを設定。中でも、ハイブリッドの2WDモデルで35.4km/L~36.0km/L、同4WDモデルで30.2km/Lという圧倒的な燃費性能は大きな魅力だ。

ライバルの日産・ノートは28.4~29.5km/L、ホンダ・フィットのハイブリッド(e:HEVは)27.2~29.4km/Lと、ライバルに比べておよそ7km/L上まわることからも、いかにヤリスの燃費が優れているかがわかる。

また、1.5Lガソリンモデルでも19.6~21.6km/Lと、コンパクトカーの中でも良好な燃費性能を持っている。

ホンダ・フィット

■約140万円という手頃な価格

 エントリーグレードのX“Bパッケージ”は139万5000円、安全装備の「トヨタセーフティセンス」を搭載するXは145万5000円と、ホンダ・N-BOXやスズキ・スペーシアなどと比べてもと割安な価格設定になっていることも注目ポイント。さらに、フィットは155万7600円、ノートは202万9500円とライバルと比べてもエントリー価格が安価な設定になっており、エントリーモデル購入の場合は乗り出し価格も約170万円前後と、セカンドカーや日常の移動手段としての用途がメインの場合は、購入のハードルも低い。シンプルなコンパクトカーが欲しい人から、装備が充実したモデルが欲しい人まで、幅広くカバーしているのはヤリスの大きな利点といえるだろう。

エントリーモデルでも200万円超えるやや高価な日産・ノート

■豊富なバリエーション

パワートレインは3種類あり、グレードは全18種類、価格は139万5000円~252万2000円、駆動方式やカラーバリエーションも豊富であることも魅力。例えばe-POWERのみの新型ノートは、走行距離が少ない人にはオーバースペックだが、その点、ヤリスは選択肢が多い。

さらに、ハッチバックのヤリス、コンパクトSUVのヤリスクロス、サーキット走行にも応えるGRヤリスと、ヤリスシリーズ全体で幅広いニーズに対応するのも強み。異なるキャラクターの中から最適なモデルを選ぶことができるので、幅広いユーザー層をカバーすることが可能だ。

 

■新世代プラットフォームがもたらす軽快な走り

新しいヤリスは“すべてをゼロベースから作り上げた”という新世代のGA-Bプラットフォームを採用。最軽量モデルでは1tを切る940kg~1090kgを達成するとともに、重心高を15mm低下させ、ボディのねじり剛性は30%以上強化した。

加えて、ガソリンエンジンのCVTには、発進用ギヤを備えて効率化を高めた「Direct Shift-CVT」を採用。CVTながらトルコンATのような変速フィールを持ち、従来のCVTのようにエンジン音だけ盛大で加速が伴わない“ラバーバンドフィール”がほぼ無く、シームレスな変速フィールと、3気筒特有の振動やノイズも低く抑えられているのも特徴だ。さらに、1.5リッターエンジンの2WD車には6速MTも設定し、実用性が求められるコンパクトカーにおいても、走りの楽しさを演出している。

 

■充実した先進安全装備

エントリーグレードを除いて、トヨタセーフティセンスを標準装備する。昼夜の歩行者、昼間の自転車運転者の衝突回避を支援する「プリクラッシュセーフティ」がさらに進化。トヨタ車として初めて、右折時の対向直進車や右折先の横断歩行者なども検知して自動ブレーキが作動するようになった。

また、低速走行時の事故予防をサポートする「低速時加速抑制」機能をトヨタ車初採用。レーダークルーズコントロール、レーントレーシングアシスト、リヤクロストラフィックオートブレーキ、ブラインドスポットモニターもトヨタのコンパクトカーとして初搭載している。

また先進のアドバンスドパーク(高度駐車支援システム)の実用性の高さも特筆できる。駐車は苦手という人でも安心して運転できるのもヤリスの優れたポイントだ。

さらに先日行われた一部改良では、時速30km以下で作動しなかったレーダークルーズコントロールは、車両停止状態まで前車追従可能な「全車速追従機能」を実装。プリクラッシュセーフティに緊急時操舵支援機能を追加し、さらに機能を強化させている。

 

■前席重視の割り切りパッケージング

ボディサイズは全長3940mm×全幅1695mm×全高1500mm(4WD車の全高は1515mm)となっており、5ナンバーサイズで狭い路地などでも取り回しのしやすさは美点の一つ。ただ、後席は足元空間に余裕が無かったり、乗り降りが難しいといった難点もあり、室内空間は明確に前席重視で、ここは前席と後席のバランス型だったヴィッツとの大きな違いだ。

これらの点からも、ヤリスはファミリーユース向けとは言えないが、1人または2人乗りのパーソナルカーとして明確なコンセプトを打ち出していることも買いやすい理由だ。

ノートはe-POWERのみの設定で価格は高くなり、フィットも先代と大きく変わったデザイン面で好みが分かれている。また、軽自動車の動力性能では満足できないユーザーも、ヤリスであれば軽自動車と大きく乖離のない価格設定になっており、こういった部分もヒットに繋がっている要因といえるだろう。

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