走り・使い勝手・安全装備全てが充実 SUBARU・レヴォーグ 試乗記

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これまでテストコースやサーキットといったクローズドの環境下で、その性能を体感したSUBARUの新型レヴォーグだが、いよいよ公道で試乗する機会がやってきた。高速道路、ワイディング、一般道といったあらゆるシーンで、2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した実力を確かめた。

今回の試乗車は、STI SportにアイサイトXを装備する最上級グレード。STI SportのみZF(ザックス)製の電子制御可変ダンパーを搭載し、協調制御を行うドライブモードセレクトを採用するが、エンジンは全グレード新開発の水平対向4気筒1.8L直噴ターボ「CB18」となり、細かい意匠、足回りと走行モード以外は他のグレードと比較して大きな違いはない。

走り出して見ると直ぐに進化が感じられたのは、静粛性の高さだ。市街地の速度域ではエンジン音が室内に届くことはほぼなく、アイドリング中も静かで振動なども微細。この辺りの質感はスポーティなワゴンというより、上級セダンといっても差し支えないレベルに仕上がっていた。

乗り心地は、街乗りの低速域では不快な突き上げなども感じなかったが、首都高走行中は橋の継目や、ギャップを乗り越えたときのボディの揺れが大きめで、走行モードをノーマルからコンフォートに切り替えてもあまり改善しなかった。ただ、もう少しスピードレンジが上がる郊外の高速道路では、ボディの揺れが上手く収束されていて、首都高で感じたほどの揺れはなかった。静粛性が良く感じられた分、乗り心地の粗さが目についた印象であった。

搭載される1.8Lターボ(最高出力177PS/最大トルク300Nm)は、1600-3600rpmの常用域で最大トルクを発揮し、走り出しから高速域での再加速まで申し分のない加速を見せてくれる。先代は1.6L2.0Lがラインナップされそれぞれ持ち味が異なっていたが、新開発エンジンは快適な走りからスポーティーな走りまで、幅広くカバーするバランスの良さが魅力と言える。

ハンドリングは中立付近の遊びがやや気になるものの、扱いやすさを重視しながら、程よい操舵感のあるもので応答性も良好。さらに、新型レヴォーグはスバル車で初めて「2ピニオン式」のステアリング機構を採用することもあり、操舵に対するレスポンスやクルマの動きも軽快感が高いことは特筆すべきポイントだ。

ドライブモードセレクトはコンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツ+、インディビジュアルの五つから選択が可能で、スポーツ+にするとアクセルレスポンスも高まり、足回りが引き締められる。ただ、同じような走行モードを選べる輸入車などと比べると、それぞれの変化幅が小さく、個人的にはスポーツ+はスポーティな味付けを求める向きには、物足りなさを感じられるのではと思った。

また、ブレーキの停止保持を行う「オートビークルホールド」のボタンが、物理ボタンではなく、タッチディスプレイを介して行うのは面倒であった。レヴォーグの方式だとシステムを起動させるのに2ステップ必要で、電動パーキングブレーキと停止保持のスイッチがセットになっている一般的なレイアウトの方が使いやすい。

長距離移動での疲労軽減に貢献するアイサイトX

高速道路ではアイサイトを試してみる。まず驚いたのは、検知の早さと精度の高さ。起動させてから車線と前走車を直ぐに認識し、しっかりと車線の中央を走る。加速では、前走車がいなくなった途端、ACC作動時の設定上限速度までの急加速が無い一方で、加速の緩慢さを感じさせない絶妙なバランス感覚を実現していた。

加えて、減速においては前走車の寸前までシステムがブレーキをかけず、我慢できずにドライバーが先にブレーキを踏んでしまうということがほとんどなく、自然な減速で不安や恐怖を感じさせなかった。アイサイトXは地図データと衛星がリンクしてカーブや料金所を認識することで、速度の加減速制御はいずれも極めて自然なフィーリングになっていた。これは、同乗者に何も言われなければ、制御だと気づかないといって差し支えないレベル。まさににこの新機能の真髄を体感できる出色の出来栄えと言えるので、ぜひ試乗でその性能を体験してほしい。

さらに、新型レヴォーグではステアリングタッチセンサが採用されたことで、高速の直線でステアリングを保持していないと見なされ、システムがキャンセルされるといったシーンが格段に減った。軽く握っているだけでもOKなので、その都度キャンセルされるというストレスは無くなったことは、長距離移動が多いドライバーにとっては嬉しいポイントと言える。従来のアイサイトも良くできているが、時速50km以下でのハンズオフ機能を含めて、35万円(税別)のアイサイトXを選択する価値は十分にある。

細かい部分で気になる点があったものの、充実した先進安全装備や走行性能が光るレヴォーグ。今はSUVが全盛だが、SUVに負けない高い使い勝手も魅力の一つなので、多くの人におすすめできる1台になっている。

 

 

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