戦前戦後の車の変遷3

all コラム・特集 車屋四六

ジープと云えば、四輪駆動車/4WDの元祖と思われているが、そうではない。ジープは4WDの代名詞的存在ではあるが、実は米国陸軍が慌てて作った兵器だったのだ。
1939年/昭和14年、ポーランドを急襲したドイツ軍機甲師団の電撃作戦、その中に悪路を走り回る車に米国陸軍が注目した。
VWベースのキューベルワーゲン(50.435/~’45)やシュビンムワーゲン(14.313/~’44)、ストゥーパ(14.000/’36~’42)、アウトウニオンホルヒ(12.000/’36~’43)、ダイムラーベンツ(378/’37~’41)だった(括弧内総生産数/製造期間)。

VWキューベルワーゲン:四駆ではないが後輪荷重大/前輪荷重小のビートルベースらしくサンドバギーのように砂漠も悪路も縦横に走り回ることが出来た。もちろん独軍には四駆も多種あった。

慌てた米軍は、1940年6月19日概略仕様を決定…それに応募したのはフォード、ウイリス、そしてアメリカンバンタム社だった。
が、ことは緊急で7月22日基礎図面を提出したバンタムが8月5日に契約し、9月23日にプロトタイプを納入した。この間わずか49日、さすが自動車王国ならではの早業である。

アメリカンバンタム試作四輪駆動車/ジープの原型。

が、バンタムは小会社、大企業の政治的根回しが成功したのか、発注はウイリスとフォードに決まり、45年8月の終戦までに、ウイリス361.349台、フォード277.896台生産というのだから、さすが自動車王国のなせる技だった。

が、米軍が注目する以前に、いち早く必要性を感じていたのが自動車では後進国日本の陸軍。四輪起動車と呼ぶ4WDを既に装備していたのである…その名称は95式小型乗用車。

日本の兵器の通例で、正式採用されたのが1935年/昭和15年、ということは当時の年号で皇紀2595年ということで、95式だが、通称は{くろがね四起}日本内燃機が量産していた。

95式小型四輪起動乗用車/写真提供日本自動車博物館:通称くろがね四起として陸軍に正式採用され活躍した。

 

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

Tagged