独創的なスタイル・コンセプトが特徴の新機軸SUV マツダ・MX-30 試乗記

all 試乗レポート

エントリーのCX-3からフラッグシップのCX-8まで、それぞれ個性のあるラインナップを揃えるマツダのSUVに加わった「MX-30」。同社SUVの中で唯一MXを冠する名前だけでなく、観音開きドアやマイルドハイブリッドを採用したモデルとして、異彩を放っている。

このMXという名称は、海外ではMX-5と呼ばれているロードスターだけでなく、これまで発表されてきたコンセプトカーにも冠され、マツダの中で新しい価値を創造する革新的なモデルに与えられるものだという。

MX-30は、先日発売されたマイルドハイブリッドをはじめ、来年にはマツダ初のEV(電気自動車)、2022年以降にロータリーエンジンを発電機として活用したレンジエクステンダー仕様の投入も予定。今後は、豊富なパワートレーンも魅力の一つとなりそうだ。

ボディサイズは、全長4395mm×全幅1795mm×全高1550mm。プラットフォームを共有するCX-30とは全長と全幅が同一で、MX-30のほうが全高で10mm、最低地上高で5mm高くなっている。

エクステリアは、フロントグリルの下側から左右のヘッドランプへとメッキパーツがつながる翼のような「シグネチャーウイング」が採用されておらず、他のマツダ車とは異なる表情であるのが印象的。また、観音開きの「フリースタイルドア」によって、前方に大きく傾斜した太いDピラーや、2ドアクーペのようなフォルムを手に入れている。

インテリアは水平基調を強めることで、シンプルで開放感のある空間を演出。フローティングさせたセンターコンソール、インストルメントパネルのアッパー部、メーターフードなどにより、空間の軽さと連続感をより引き立てた。エアコン操作はタッチパネルを介して行う先進性のあるものだが、個人的には物理的なスイッチの方が使い勝手が良く感じられた。

また、クルマのインテリアとしては珍しいコルクが随所に使われている。斬新さと温かみ表現するだけなく、これはマツダの前身がコルクを生産する東洋コルク工業であることも示しているという。

フリースタイルドアはフロント82度、リヤ80度まで開けられ、ほぼ真横まで開く。後席へのアクセスも普通のヒンジドアのモデルと同様で、足元のスペースはCX-30と同様に、身長177cmの筆者が座っても膝前と頭上は握りこぶし1つ半ほどの余裕があった。ただ、前席の人がいなくなった場合、前席を畳みフロント・リヤの両ドアを開けるという手順を踏まないと、リヤドアが開かないのは難点。後席のスペースは十分ファミリーユースに応えるものだが、フリースタイルドアの使い勝手を考えるとパーソナルユースが最も適しているのではと思う。

■マツダSUVの中ではマイルドな乗り心地

「e-SKYACTIV G」と名付けられたマイルドハイブリッドは、2.0Lガソリンエンジンに24Vのベルト駆動スターター兼用の発電機「ISG」を組み合わせたシステム構成。シフトレバーは一般的なストレート式ではなく、Dレンジを後端、Rレンジを前端、Pレンジを前端から横方向へ突き当てる独特な形状を採用していることも特徴的だ。

今回試乗したのは2WD。走り始めてみると、マツダのSUVの中では乗り心地がマイルドな印象で、高速の継ぎ目などでの突き上げもほぼ感じさせなかった。軽快感やしなやかさはCX-30に譲るが、街乗りから高速走行まで安心感のある走りは、多くのユーザーに好まれる味付けと言える。この穏やかで癖のない乗り心地は、EV仕様でどのように変わるのか興味深い。

また、ISGを搭載するため、エンジンの再始動も素早く、振動や音も微小に抑えられているのはマイルドハイブリッドならではの美点と言える。ただ、走りの力強さや感覚は2.0Lガソリンエンジンとほぼ変わらず、特別感は希薄だ。加えて、多段化されたATを搭載する欧州車と比べると、高速域での再加速やキックダウンなどでエンジンが唸りがちになるのは気になる部分だ。

独創的なスタイルとコンセプトを持つMX-30。飽和状態になりつつあるSUV界に、新たな価値や魅力を提案するモデルとして、これからもその行方に注目していきたい。

 

 

 

 

Tagged