バンコクで出会ったRRコーニッシュ

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それまでの一品製作的コーチワークから脱し、自社製ボディーで量産されるシルバードーンが1949年に誕生して、次ぎの量産モデルは55年登場のシルバークラウド、そして次のシルバーシャドーの登場が1965年だった。

シルバーシャドーは77年迄生産されるが、71年になると次世代量産モデルであるコーニッシュの登場を迎える。で、前回バンコクで出会ったロールスロイスに次ぐ第六弾が、RRコーニッシュである。

このコーニッシュ・コンバーティブルは1978年型。その年式を推定出来るのがバンパー。77年迄のバンパーはバンパガード、いわゆる鰹節が縦に二本あり、78年からは鰹節がなく横一本のストレート・バンパーが装備されているからだ。

このバンパーは、例の5マイルバンパー。米国の新規制、5マイル以下の衝突なら、元の形状に復元しなければいけないという規制で、各国がスタイリングで頭を悩ませたものだった。

バンコクのコーニッシュの78年という年代は、日本では昭和53年、戦後の疲弊経済から回復し、自動車業界には一年間で14車種の新顔新型が登場したが、その顔ぶれは、トヨタスターレット、三菱ミラージュ、三菱ギャランとエテルナ、三菱ギャランΛとエテルナΛ、サバンナRX-7、ダイハツシャルマン、セリカXX、日産パルサー、トヨタターセルとコルサ、フェアレディーZ、コロナ、マツダカペラ、ホンダプレリュードである。なお前年の新登場は16車種、日本の自動車業界は元気溌剌だった。

ちなみに、バンコクのコーニッシュの諸元は、全長5170x全幅1820x全高1470㎜・ホイールベース3050㎜・車重2320kg・V型八気筒OHV・6750cc+SUキャブレター二連装・三速AT。

スタイリングでは、フロントバンパー下部に空力向上のスカートが張り出し、インパネ上部がクラッシュパッドで覆われている。
素晴らしいウッドのパネル、インテリアのトリムに内装シートは上質なコノリーレザーだが、痛みが全く感じられないので、RRに送り返してレストアされたものと推測される。

RRならでは美しく仕上げられた木製のインパネとドアトリム・特別の牧場で飼われ無傷の革に仕上げられるコノリーレザーのインテリアとパワーシート。インパネ上部にクラッシュパッド。

断熱効果が高いブ厚い幌は電動開閉、パワーステアリング、パワーウインドー、エアコン、至れり尽くせりのRRならではのコーニッシュ・コンバーティブルだった。
そんなコーニッシュが生まれた78年、日本の自動車保有が遂に2000万台を突破成田空港オープン、池袋サンシャイン落成、自動車輸入関税ゼロに、巷ではインベーダーゲームが流行りディスコブーム、カーラジオからは♪君の瞳は10000ボルト♪時間よとまれ♪Mrサマータイムなどが流れる、日本は元気で楽しい時代だった。

 

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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