気兼ねなく運転できるサイズ感に7名乗車実現のSUV メルセデス・ベンツ GLB250 4MATICスポーツ 試乗記

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NGCC(ニュー・ジェネレーション・コンパクト・カーズ)と呼ばれるコンパクトモデルを充実させ、ユーザー層の拡大に注力している近年のメルセデス・ベンツ。このNGCCに新たに加わったGLBは、3列シート7名乗車が可能なパッケージに悪路走破性も備えたSUVとして、大いに注目を集めている。

GLBのボディサイズは全長4650mm×全幅1845mm×全高1700mmで、国産SUVではトヨタ・RAV4、日産・エクストレイル、ホンダ・CR-Vとほぼ同じレベル。国内ではコンパクトと呼べる大きさではないが、他の多くの輸入車SUVに比べると運転しやすいサイズ感と言える。

エクステリアは、Gクラスに通じるスクエア基調なスタイルが特徴で、約200mm確保された最低地上高によって、悪路での走行面だけでなく、街中の駐車場やガソリンスタンドなどへの乗り入れでも気兼ねなく運転できることも魅力だ。

インテリアは、メルセデスのデザインコンセプトに則ったもので、ジェットタービンを模したエアコン吹き出し口や、64色から選択できるアンビエントライトなどが独自の世界観を表現する。

運転席と助手席のシートは張りのあるタイプで、運転姿勢が崩れることもなく、長距離を運転しても疲れを感じにくかったのが印象的だ。

2列目は60:40分割となり、140mmの調整が可能な前後スライド機構を備える。後ろにスライドさせれば足元空間は広くなり、前にスライドさせると荷室の積載性も高められ、フレキシブルに使える。座面が少し短いのが気になるものの、バックレストは40:20:40の分割可倒式となり、角度は8段階の調整が可能なため、長距離試乗中にサービスエリアでちょっとした仮眠をした時には重宝した。

GLBには3列目シートが備わっているものの、インポーターが「乗車時の安全確保のため、身長168cm以下の乗員のみが使用できます」とアナウンスするように、座面も小さく、160cm台前半の人であっても長距離の移動には不向き。あくまでも緊急用としての割り切りが求められる。

国内には、直列4気筒2.0Lディーゼルターボ(最高出力150PS/最大トルク320Nm)を搭載する前輪駆動の200d、直列4気筒2.0Lガソリンターボ(最高出力224PS/最大トルク350Nm)を搭載する四輪駆動の250 4MATIC スポーツの2種類が導入され、いずれも8速DCTを組み合わせる。今回は、ガソリンモデルに試乗した。

■静粛性と乗り心地の良さは特筆点

運転席に座ってみると、GクラスほどではないがフロントガラスやAピラーが立っており、スクエア基調のため見切りも良くアイポイントも高いので、ボディサイズの感覚はつかみやすい。最低地上高は高いが、乗り降りに苦労しない点も好印象である。

1800-4000rpmの広範囲かつ実用域で最大トルクを発揮し、走り出しから高速での再加速まで幅広いシーンで扱いやすく、8速DCTも淀みなくスムーズにシフトアップ。時速100km巡航時でも2000rpm以下で、エンジン音などもキャビンに届かず、車内の静粛性も高いレベルにある。

250 4MATIC スポーツには電子制御ダンパーが装着されていて、コンフォートモードでは路面からのショックをきれいに吸収し、乗り心地は上級セダンを思わせるほどでの快適性に満ちたもので特筆すべき点といえる。

スポーツモードを選択するとサスペンションが引き締められ、硬めの乗り心地となるが、キャビンを揺すられたり、同乗者が不快になるレベルではなかった。オフロードを走れる性能や走行モードを持つが、クイックかつ素直なハンドリングやフラットライドな乗り心地など、基本的なセッティングはオンロード志向である。

また、運転支援装備は、高速道路での自動車線変更とLKA(レーン・キーピング・アシスト)、全車速追従型ACCなど、最上級のSクラスと同等のものが装備されていることも大きなポイント。ACCの制御は、前走車に追いついた時の減速制御も不自然さが無く、レーンキープは車線の中央をしっかりとトレースし、操作感覚や運転支援の介入の仕方も含めて安心感のあるものになっていた。

対話型インフォテイメントシステム「MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)」も標準装備。「ハイ、メルセデス」をキーワードとして起動し、目的地設定、通話、音楽選択、メッセージ入力・読み上げ、気象情報といった多くのインフォテインメント機能の操作が可能だ。特に試乗中のナビ目的地設定では「なごやポートメッセに行きたい」と呼び掛けても、正式名称のポートメッセなごやを提案してくれるなど、初搭載されたAクラスのものと比較すると使い勝手も高まった印象。AIを搭載するインフォテイメントシステムならではのもので、これだけでもメルセデスを選ぶ価値はあるのではないだろうか。

国産・輸入車問わずSUVの新モデル投入が相次ぐ中でも、コンパクトクラスに3列シート7人乗りというコンセプトを持ったモデルは少ない。このGLBの登場で、メルセデスのSUVラインナップは間違いなく一層強固なものとなった。

 

 

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