バンコクで出会ったメルセデスベンツ190SL

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毎年3月末になればバンコク自動車ショーに出かける。2011年に出会ったのがベンツ190SL。1954年~63年間で2万6681台を生産し大半が米国に渡ったが、バンコクにも。

190SLは、重要輸出先である米国意識で開発、54年ニューヨークショーにデビューし、55年秋にハードトップが追加された。
当時ベンツの人気スポーツカーは300SLだったが、高額ゆえに高嶺の花。で、遠目には300SLと間違えるほどなのに、値段が約半値とあって人気者になった。
ちなみに日本では石原裕次郎の愛車で知られる300SLの米国値段が$6820なのに対して190SLは$3998だった。

メルセデスベンツ190SL:窓ガラス中央の鍍金の棒は高速になるにつれ増す幌の揚力に耐えるためのロッドで昔のスポーツカーには良く見られた/遠方にBMW502

米国で別名パーティーズカーと呼ばれた由縁は、大型車では帰りに誰かを送らなければならなくなるが、二座席なら夫婦で大手を振り{サヨナラ}が出来るからだった。

当時米国では時速100マイル/160㎞を超えればハイパフォーマンスカーと呼ばれた。190SLは173㎞だから当然合格。勿論スポーツカーとして人気も得たが、スパルタンな300SLに対して、こちらはツーリングも楽しめるGT。軽快なハンドリングと、乗用車に近い乗り味も兼ね備えるのが、人気の一因でもあった。
その違いは、300SLがレーシングカー同様にチューブラーフレーム構造だったのに対して、190SLは乗用車180型のフロアパンを流用し、2400㎜というホイールベースは同じでも、中身は別物、似ているのは姿だけということなのである。

アメリカンなインパネデザイン:ベッカー社製ラジオ/中方下にエアコン/ホーンリングは方向器兼用

全長4290x全幅1740㎜・WB2400㎜・車重1100kgで、ロードスター/幌/幌+ハードトップの三種があった。直四OHC縦置き1897cc・Wチョーク44ソレックスキャブ二連装・105馬力/5700回転・前Wウイッシュボーン/後スイングアクスル・四輪独立懸架・タイヤ6.40-13・4MT・0-100㎞加速14.5秒・最高速度173㎞。

ちなみに兄貴分の300SLは215馬力・0-100㎞加速7.0秒・最高速度235㎞(最終モデル260㎞)。ちなみに190SLのインテリアは乗用車感覚仕上げで、シートの座り心地も良かった。
エンジンのコンパクトさで稼いだゆとりで、座席後部の荷物スペースが広く、荷室も広く、実用性では300SLより上だった。インパネ周りはアメリカ好みで、ハンドルの鍍金ホーンリングは方向指示器兼用だった。日本でも評判が良く、よく見掛けたが、歌手三橋三智也が銀座通りを走る姿を憶えている。

大きなオーバーハングで荷室は広そう/上方はクライスラー300

 

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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