自動車はレースで・飛行機は戦争で速くなる

コラム・特集 車屋四六

さてシュナイダー杯自動車レースが開催されていた頃、ヨーロッパのレースをモース70馬力で走り回っていた米国の富豪がいた。「こんな面白いことは米国でもやらなきゃ」とポンと大金を投げ出したのが、大富豪のバンダー・ビルトだった。

で誕生したのがバンダービルト杯レースで、1904年ロングアイランドの第一回バンダービルト杯に世界の強豪が集まった。優勝はクレマンバヤール80馬力を押さえたパナール90馬力。第二回がパナール120馬力を押さえたダラック80馬力。いずれにしても、これが米国での本格的自動車レースの始まりだった。

パナールGPカー1906年:122hp・最高速度155km/h。

一方、ゴードンベネットは、自動車レースが一段落すると飛行機レースを始めた。第一回は1910年、ニューヨーク100㎞周回レースで、優勝はブレリオ100馬力…タイム1時間1分4.74秒=平均速度約100km/hだから、未だ自動車の方が速かった。

もちろん飛行機もレースで速くなるのだが、飛躍的影響を与えたのがWWⅠの戦闘機。軍用機とは必要悪だが、たちまち発動機出力が二倍以上に進化した。

その飛行機の速度進化は、1909年、カレー・ドーバー間40㎞、世界初英仏横断飛行成功のブレリオの飛行時間=約30分=平均速度75km/h。それから8年、ニューヨーク・パリ間5809㎞、世界初大西洋横断のリンドバーグ・ライアン機の飛行時間=33時間29分=平均速度173km/hだが、これらは長距離飛行でレースではない。

ライアン・スピリットofセントルイス大西洋横断機/アムステルダム空港の複製:全幅14米x全長8.4米・空重量975kg・発動機ライトホワールウインド231馬力・最高速度214km/h。

レースとなれば、リンドバーグの世界初大西洋横断飛行と同年のシュナイダー杯レースでの優勝機、英スーパーマリンS5/ネピアライオンⅦA/900馬力の平均速度=514.3km/h。

スーパーマリンS5/1927年シュナイダー杯優勝:全幅8.15m、全長7.32m、空車重1215kg、発動機ネピアライオンⅦA900馬力、記録速度514.3km/h。

戦争で機械が進化するのは周知の事実で、ジープに機関銃はWWⅡの米軍だが、WWⅠでサイドカーに機関銃で機動性を発揮したのはドイツ軍だった。

WWⅠで登場の新兵器装甲車は、英海軍の開発というのが腑に落ちないが、その威力が認識されると、ロールスロイスやランチェスターの装甲車が続々と戦線に送られた。
アラビアのロレンスが、ロールスをベースにしたように、装甲車の土台はほとんどが高級車。ベルギー軍はミネルバ、ドイツ軍は200馬力のベンツというようにである。

その理由は簡単、厚い装甲、機関銃や大砲でガッチリ重くなる車に必要なのは、とびきり頑丈なシャシーと髙出力発動機だったのだ。

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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