ちょうどいいボディサイズに、SUVの使い勝手とハッチバックの機動性を融合 VW・T-Roc 試乗記

試乗レポート

日本ではトゥアレグの販売終了以降、ミドルサイズの「ティグアン」のみであったフォルクスワーゲン(VW)のSUVラインナップが拡充されてきた。昨年末に導入された「T-Cross」に続き、今回新たに導入された「T-Roc」は、VWの主力モデル「ゴルフ」に近いボディサイズであることが特徴。日本の道路環境に適した大きさに、SUVの使い勝手とハッチバックの機動性を融合したモデルになっている。

エクステリアは、ヘッドライトと一体感のあるラジエーターグリルによりワイドさを強調。大型エアインテークとアンダーボディガード、リアディフューザーによりSUVらしい力強さを表現している。

ボディサイズは全長4240mm×全幅1825mm×全高1590mmで、弟分のT-Crossより一回り大きい。ただ、ラゲッジスペースはCピラーやリヤウインドウの角度が寝ているからか、T-Rocは445LとT-Crossより10L少なくなっている。

パワートレーンは、直列4気筒2.0Lディーゼルエンジンターボ(最高出力150PS/最大トルク340Nm)に7速DSGを組み合わせ、駆動方式は2WD(FF)のみとなる。VWジャパンの説明によると、兄貴分のであるティグアンの販売8割をディーゼルモデルが占めていることから、T-Rocはディーゼルのみになったという。ティグアンは1.4Lガソリン(FF)と、2.0Lディーゼル(4WD)、T-Crossは1.0Lガソリン(FF)が設定されており、SUV3兄弟の中でもうまく棲み分けができている。

■豊かなトルクで街乗りから高速まで器用にこなすディーゼルエンジン

2.0Lディーゼルターボは1750~3000回転の常用域で最大トルクを発揮するので、街乗りでも扱いやすい。走り出しの加速感は穏やかに感じられるが、スピードに乗ればどの速度域においてもパフォーマンスに不足はなし。高速の追い越し時や登坂路といった、もう一段階上の加速がほしい場面での力強い走りは、ストレスを感じさせない。低回転から豊かなトルクを持ちながら、中速域からの加速やエンジンの吹け上がりもガソリン車を思わせるスムーズさで、ガソリン車からの乗り換えでも違和感を覚えることはないだろう。

全体的な挙動は穏やかだが、乗り心地は基本的にフラットで、VWのモデルに共通する剛性感のある走りはT-Crossでも健在。ノーマルやエコでもアクセル操作に対するレスポンスに不足は感じられないが、スポーツモードに切り替えるとハンドルの操作感やアクセルレスポンスも向上し、スポーティな一面も持ち合わせている。

 また、試乗車のR-Lineには、電子制御ダンパーのアダプティブ・シャシー・コントロール(DCC)が装備され、コンフォート、ノーマル、スポーツといった走行モードの選択に応じたサスペンションセッティングが可能。スポーツモードでは引き締められた足回りによって、乗り心地が硬くなりキャビンに振動を伝えるが、不快というレベルではなく、どのモードでも不満を覚えることはなかった。

一方で、車内の静粛性に関してはそれほど高くなく、2800回転を超えた当たりからディーゼルらしい音が車内に入ってくる。街乗りの速度域ではDSGの素早いシフトアップによってあまり感じなかったが、高速域での再加速では顕著であった。同じエンジンを搭載するティグアンのディーゼルモデルの試乗時では、静粛性の高さが好印象であっただけに、少々物足りなさを感じた。

とはいえ、ネガティブに感じられたのは静粛性の部分ぐらいで、その他は総じて高いレベルにある。後席は大人2名がゆったり座れる広さを確保していて、ファミリーユースにも適している。コンサバティブで保守的なゴルフとは異なり、洗練された都会的な雰囲気を持つT-Rocは、VWを代表する人気モデルに成長していきそうな予感だ。

 

■動画で内外装デザインを紹介

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