俊敏性を増したハンドリングがクルマとの一体感を創出 トヨタ・ヤリス(1.5Lガソリン)試乗記

試乗レポート

フルモデルチェンジを機にヴィッツから車名が改められるとともに、プラットフォームやパワートレーンが一新されたヤリス。先日はハイブリッドモデルのインプレションを紹介したが、今回はガソリンモデルに試乗し、その走りを確かめた。

新型ヤリスのパワーユニットはハイブリッドのほか、1.5L(最高出力120PS/最大トルク145Nm)と1.0L(最高出力69PS/最大トルク92Nm)と2種類のガソリンエンジンをラインナップ。今回は1.5Lモデルに試乗する機会を得た。

ハイブリッドとガソリンで特に内外装デザインに差異はなく、荷室や後席の使い勝手なども基本的には同じ。走りはじめてみると、ハイブリッドで感じられたパワフルさはないものの、発進用ギヤ機構付自動無段変速機の「Direct Shift-CVT」によって、出足の加速でもたつくようなことはなかった。試乗は常時大人3名乗車であったが、登り坂や高速での合流といったパワーが欲しい場面でもストレスの無い走りを見せてくれた。

CVTながらトルコンATのような変速フィールを持ち、従来のCVTのようにエンジン音だけ盛大で加速が伴わない“ラバーバンドフィール”がほぼ無いのも好印象。シームレスな変速フィールと、3気筒特有の振動やノイズも低く抑えられているのも特徴だ。

走行モードは3種類設定されており、街乗りの速度域では大きな差を感じないが、パワーを選択すると最大トルクを発揮しはじめる4000回転以降で力強く軽やかな加速を味わえる。

ヴィッツから大きく進化した点は、ハンドリングの良さだ。低速域では軽めの操舵感であるが、速度の上昇とともに手応えが増し、操作に対するレスポンスも良好だ。ワインディングでの身のこなしも軽やで、路面とタイヤの接地感も高い。クルマとの心地よい一体感は、国産コンパクトカーの中でも随一で、重厚感のあるハイブリッドモデルの走りとは一味違う魅力をガソリンモデルは備えていた。

一方で、乗り心地はハイブリッドモデル同様に低速域では硬い。特に、荒れた舗装路や橋脚の継ぎ目などからは明確に突き上げが感じられ、もう少し穏健なセッティングであって欲しかった。

アドバンスドパーク(高度駐車支援システム、オプション)を始めとする、先進安全装備の充実もヤリスの特徴。LTA(レーントレースアシスト)は、走行車線の中央をしっかりと走行し、従来のような車線内をふらつくような制御は見られなかった。もっとも、ヤリスの直進安定性は非常に高く、ハンドルに手を添えているだけでもクルマは真っすぐ走行する。ただ、電子パーキングブレーキを採用していないからか、ACC(アダプティブクルーズコントロール)とLTAが時速30km以下で作動しないのは残念な点。現在は軽自動車でも採用車種が増えており、高速を使うユーザーにとっては利便性も高まる機能なので、マイナーチェンジなどで全車速対応になることを願いたい。

 

 

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