家族で行こう! きままにクルマ旅(2020年4月)
群馬・碓氷峠と横川で 急勾配を克服した鉄道技術とその遺構を巡る

レジャー ドライブ コラム・特集

文・写真:編集部

東京から長野まで鉄道で移動する場合、現在最も速いルートが北陸新幹線だ。並行して在来線の信越本線(しなの鉄道)も走るが、地図を見ると横川駅~軽井沢駅間が途切れている。このわずか1駅の空白区間には、旧中山道の頃から難所といわれて碓氷峠が横たわり、明治26年に開業した鉄道も、この峠を越えるには苦闘の連続だった。

鉄道は金属製のレールの上を金属製の車輪で走るため、急な斜面では車輪が滑り出して坂を登れなくなってしまう。しかも、碓氷峠越えの鉄路は、66.7パーミル(1000m水平に進むと66.7m標高が変わる*1)という急勾配。この難所を克服するため、アプト式鉄道*2と専用の蒸気機関車が採用された(横川駅~軽井沢駅所要時間:75分)。明治45年には、電化され電気機関車が走るようになった(同:49分)。アプト式鉄道は昭和38年まで使用され、以降はアプト式を使わない新ルートを峠越え専用の強力な電気機関車が列車を牽引した(同:17分)。こうして信越本線は、東京から長野~上越方面を結ぶ国内の主要鉄道ネットワークの一つになった。

平成9年、さらなる大量・高速輸送を可能にする北陸新幹線が長野まで部分開業し、信越本線の横川駅~軽井沢駅間は廃線に。往時の賑わいは消えたが、横川駅と碓氷峠周辺には急勾配を克服した鉄道技術の数々が史跡として残されている。特に明治時代に建造物は、近代国家として急成長を続ける当時の日本の姿を今に留めているようで、鉄道ファンならずとも訪れてみたい場所だ。空いていれば、都心から高速を利用して2時間弱、碓氷峠へとクルマを走らせた。

*1:現在、付近を走る北陸新幹線の安中榛名駅~軽井沢駅間の勾配は30パーミル前後。
*2:2本のレールの間に歯車のように刻みをつけたレール(ラックレール)を敷き、機関車も左右の車輪の間にラックレールと噛み合う歯車を持つ。機関車の歯車とラックレールが噛み合うことで、急勾配の登り/下りを安全に走行することができる。ラック式鉄道ともいう。

 


目次

・ 碓氷峠鉄道文化むら 大人から子供まで楽しめる鉄道のテーマパーク
・ アプトの道 66.7パーミルの鉄路を歩いて実感する
・ 碓氷第三橋梁(通称:めがね橋) 芸術的なレンガ造りの4連アーチ橋
・ ご当地ランチ 「峠の釜めし(おぎのや)」 旅情あふれるやさしい味
・ 旅グルマ紹介 マツダ・CX-30

 


碓氷峠鉄道文化むら
大人から子供まで楽しめる鉄道のテーマパーク

峠越えの鉄路を作り上げた人知の数々と、その“格闘”の変遷を詳しく知ることができるのが、JR信越本線・横川駅駅前、旧横川運転区跡にある碓氷峠鉄道文化むらだ。

碓氷峠鉄道文化むら

線路の先にあるのが…碓氷峠鉄道文化むらだ

鉄道資料館ではアプト式鉄道建設の貴重な資料や展示物、HOゲージの鉄道模型が走る一大ジオラマ等で知ることができ、実際に使われていた検査・修理用車庫(鉄道展示館)には、アプト式の専用電気機関車(ED42)が展示されている。このほか、屋外にはアプト式の専用レールの実物をはじめ、旧国鉄時代に全国で活躍した電気機関車や特急車両(189系)、客車を展示。中には乗り込める車両もある。

碓氷峠鉄道文化むらの検修車庫

検修車庫内で車両も展示される(鉄道展示館)

66.7パーミル標識
アプト式線路

66.7パーミルを示す標識とアプト式の線路/昭和38年まで使用されたアプト式の線路

電気機関車ED42
電気機関車ED42の歯車

アプト式専用の電気機関車ED42/この歯車でラックレールを噛む

旧国鉄時代の電気機関車

旧国鉄時代に全国で活躍した電気機関車

鉄道模型ジオラマ

横川駅周辺や碓氷峠を再現した大きなジオラマの中を模型電車が走る

また、旧信越本線の下り線を利用したトロッコ列車(有料)が運行され、近隣の日帰り温泉施設「峠の湯」まで、ゆったりと“鉄道旅”も楽しめる。さらに、施設の外周を巡る蒸気機関車とディーゼル機関車の「あぷとくん(有料)」や、場内を巡る「ミニSL(同)」に乗ることで、平成生まれのお子さんも“蒸気機関”の鼓動や息づかいを体験することができる。

何より、この施設の特徴ともいえるのが、平成9年まで横川~軽井沢間で列車を牽引した碓氷峠専用の電気機関車(EF63)の運転体験ができること(学科講習も必要、要予約)。“峠のシェルパ”の異名を持つEF63をこの手で操れるのはマニア垂涎の体験といえる。

あぷとくん

あぷとくん。写真はディーゼル機関車

電気機関車EF63

このEF63の運転体験ができる

碓氷峠鉄道文化むら 【住】群馬県安中市松井田町横川407-16 ☎︎027-380-4163 【料】中学生以上500円、小学生300円、小学生未満は大人1名につき2名無料 【時】9:00~17:00(11月1日から2月末日は16:30まで) 【休】火曜日および年末年始が休園日(火曜日が祝日の場合は翌日が休園、8月中の火曜日は開園) 【P】104台 【マップコード】292 598 882*30

 

アプトの道
66.7パーミルの鉄路を歩いて実感する

明治26年に開業した横川駅~軽井沢駅間のアプト式鉄道は、11.2㎞の区間に26カ所のトンネルと18カ所の橋があった。その廃線跡のうち、横川駅から旧熊ノ平駅までの約6㎞の区間がアスファルトで舗装された遊歩道として整備されている(一部には当時の線路も残る)。横川駅側の入り口は碓氷峠鉄道文化むらの脇にある。

ウォーキング・トレイル アプトの道起点
アプトの道の線路

横川駅側のスタート地点/アプトの道は一部線路も残っている

明治26年から昭和38年まで、アプト式の蒸気機関車や電気機関車が走ったルートなので、66.7パーミルという急勾配を徒歩で実感できるほか、横川駅に近い旧中山道の碓氷峠の関所跡や、峠を走る電気機関車に電力を供給するため建設された旧丸山変電所(明治44年建設、国重要文化財)といった史跡もある。レンガを貼り合わせたトンネル内の壁面はレトロ感満点。高さ31mを誇る碓氷第三橋梁からの眺めなどを楽しみながら散策できる。

遊歩道なので終日利用可能だが、遊歩道には照明もなくトンネル内の照明も18時に消灯されるので日中の散策を。

碓氷峠関所跡

旧中山道時代の碓氷峠関所跡

旧丸山変電所

旧丸山変電所もレンガ造りだ

旧熊ノ平駅近くのトンネル

旧熊ノ平駅の近く。トンネルが連続しているのがわかる

旧熊ノ平駅の変電施設
信越本線の線路

旧熊ノ平駅は昭和38年に廃止。廃止後は変電施設が残った/昭和38年から平成9年まで使用された信越本線の線路

アプトの道 【住】群馬県安中市松井田町横川 【休】通年終日利用可 【P】旧熊ノ平駅、碓氷第三橋梁、碓氷湖に駐車場あり

 

碓氷第三橋梁(通称:めがね橋)
芸術的なレンガ造りの4連アーチ橋

横川駅~軽井沢駅間に18カ所ある橋の中で、もっとも大きな橋が碓氷第三橋梁(通称:めがね橋、国重要文化財)だ。全長91mの橋は切り立った渓谷を横断。3基の橋脚がそそり立ち、隣り合う橋脚と美しいアーチで結ばれる4連アーチ橋は、まるで古代文明の水道橋を思わせ、芸術的にも見える。高さ31mの橋上(アプトの道)からは碓氷湖方面の眺望も素晴らしい。

碓氷第三橋梁

美しいアーチを持つ碓氷第三橋梁。明治末期には橋の上を蒸気機関車が走る姿が見られた

近づいてみると、橋脚から欄干まですべてレンガ造りであることがわかる。日英の技師が設計し200万8000個というとてつもない数のレンガが使われた。当時の土木工事水準の高さもうかがい知れる。

横川駅からアプトの道で約4.8㎞、または国道18号線旧道を利用しクルマでもアクセス可能。なお、アプトの道はここから1.2㎞先が折り返し地点の旧熊ノ平駅だ。

碓氷第三橋梁 【住】群馬県安中市松井田町坂本地内 【休】通年終日利用可 【P】22台(眼鏡橋駐車場) 【マップコード】292 684 515*26

 


ご当地ランチ
峠の釜めし おぎのや 旅情あふれるやさしい味

峠の釜飯

峠の釜飯定食

碓氷峠鉄道文化むら・横川駅を訪れたなら、やはりランチは峠の釜めしを。信越本線開業時(明治18年)から駅前に店を構えるおぎのや本店では、昭和33年に横川駅の駅弁として誕生した“峠の釜めし”が食べられる。発売当時から変わらない益子焼の土釜に入った釜めしは、秘伝のダシで炊き上げたごはんの上に、しっかりと味の染み込んだ鶏肉を中心にごぼう、しいたけ、くり、うずら卵、あんず等、彩りのよい具がたっぷり並ぶ、手作り感あふれるやさしい味だ。

本店では、単品の峠の釜めし(1100円:消費税込み、以下同じ)の他に、味噌汁と力餅(一口サイズの餅をこしあんでくるんだもの)がついた峠の釜飯定食(1300円)、自家製麺の麺類がつく山菜小そば・小うどん定食(1400円)等が用意されている。

横川駅は平成9年まで、これから碓氷峠を上る列車、下ってきた列車がそれぞれ電気機関車を連結/解放するため停車時間が長めだった。窓が開く列車は窓越しに、窓が開かない列車はホームに降りて出発時刻を気にしながら買い求めた、という旅の記憶を持つ方も少なくないはず。凝った容器に入った温かい駅弁は横川駅名物となり、人気は全国規模になった。

おぎのや本店

横川駅とおぎのや本店

横川駅前の本店の他、上信越自動車道・横川サービスエリア店(上り線)や国道18号線沿いのドライブイン(横川店)等でも峠の釜めしを食べることができる。

おぎのや(本店) 【住】群馬県安中市松井田町横川399 ☎︎027-395-2311 【時】10:00~16:00(土日祝日は9:00から) 【P】あり(本店を除く) 【マップコード】292 628 024*05

 


旅グルマ紹介
マツダ・CX-30 ドライバーとクルマの一体感がより強く

マツダ・CX-30

マツダ・CX-30

今回の旅グルマはマツダの最新クロスオーバーSUV「CX-30」。しかも、マツダが独自開発の燃焼技術により、ディーゼルエンジンのように低速域からクルマを力強く前に推し進める力が得られる、新世代ガソリンエンジンの“スカイアクティブ-X”を搭載したタイプだ。

アクセルペダルを踏んで、やや間をおいて加速が始まるということはなく、新世代エンジンの効用でタイムラグのない加速が始まる。高速道路(関越道~上信越道)では快適そのもの。2名乗車では、上り坂のパワー不足も感じず静粛性の高さが際立った。

このクルマらしさが顕著に現れたのは、急カーブが連続する国道18号線の旧道だった。減速~ステアリング操作~加速を何度となく繰り返すが、加速だけでなく、ブレーキもステアリングもドライバーの操作とすべて同調され、気づけばクルマが身体の一部になったような感覚になり、気分良く18号線旧道を駆け抜けられた。

マツダ・CX-30 X L Package 【パワートレーン】直列4気筒1997㏄+モーター(マイルドハイブリッド) 6速AT 【最高出力】180PS/6000rpm 【最大トルク】22.4kgm/3000rpm 【WLTCモード燃費】16.8km/L 【ボディサイズ】全長4395mm×全幅1795mm×全高1540mm 【価格】347万7100円~

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今回の立ち寄りスポットマップ

※「マップコード」および「MAP CODE」は、株式会社デンソーの登録商標です。
※ナビの機種によっては、高分解能マップコードに対応していない場合があります。

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