グッドイヤー 2種類のオールシーズンタイヤの雪上性能をチェック! 

試乗レポート

最近話題のオールシーズンタイヤ。初めて、聞いたという方もいるかもしれないので、本題に入る前に、タイヤの種類について簡単に説明しておこう。タイヤは、いわゆる走るシーンによって、夏タイヤ(サマータイヤ)、スノードライブ向けの冬タイヤ(スタッドレスタイヤ)と呼ばれる2タイプがある。しかし、夏タイヤとわざわざ季節を指定しているものの、実は、雪がある路面以外ではくのが夏タイヤとなっており、雪国であってもメインとなるのは夏タイヤとなっており、冬タイヤは雪国に住んでいる人、もしくは出掛ける機会が多いユーザー向けのタイヤとなっている。

つまり、オールシーズンタイヤはそのすべてを網羅する、いわば、欲張りなタイヤだ。ただし、オールシーズンタイヤといっても、実は国、地域によって、与えられた性能が少々異なっており、北米マーケットではM+S(マッドアンドスノー)という表記により泥と雪にも対応できることをと謳っている一方で、ヨーロッパではスノーフレークマーク表記を用いて、雪にも対応できることを謳っている。これは、その国や地域の路面事情によって違いがあるためだ。ちなみにこのM+Sまたはスノーフレークマークがついているオールシーズンタイヤは、高速道路における冬タイヤ規制でも走ることができる(全車両チェーン装着規制では不可)。

オールシーズン、スタッドレス、ヘビーデューティ4WD向けまで幅広いラインナップを誇るグッドイヤー

もちろん、オールマイティを謳うがゆえに、 少し前までは、たとえSUVでも、クロスオーバーでもスポーティなテイストが強く好まれる日本において、オンロード性能をマイナスに捉えるユーザーも少なからずいた。雪を走れるか、よりも、日常で頼りなさが露呈しないか、のほうを多くのユーザーは気にしていたのだ。今回紹介するグッドイヤーのオールシーズンタイヤは日常におけるスポーティさや快適性をしっかりと作り込んだ上に、スノー性能を向上させており、日本でも多くの人が満足できる性能を手に入れている。

■乗用車用は2種類のオールシーズンタイヤをラインアップ

グッドイヤーからリリースされている乗用車用のオールシーズンタイヤは、ベクターフォーシーズンズハイブリッド(以下ベクター)とアシュアランスウェザーレディ(以下ウェザーレディ)の2タイプだ。すっかり日本でもお馴染みとなったベクターは欧州で開発され、最近、聞くようになったウェザーレディは北米で開発されたという経緯があり、性能としては先に紹介した北米と欧州で求められるキャラクターの違いがデザインされているものの、その違いは性能としてはあまり大きくはなく、日本においてはタイヤサイズの違いとして展開されていると捉えていい。

ベクターフォーシーズンズハイブリッド

今回はこの両タイヤのスノーにおける性能を、スキー場の駐車場に設定されたコースにてチェックすることになった。しかし、当日は、この暖冬ゆえにかろうじて積もっていた雪も暖かな陽射しによって溶け、路面はシャーベット中心、かつ、走っていくうちに駐車場の砂利が露出するなど、いわゆる凍結といったシーンはチェックできなかったことをお断りしておきたい。

少し前のオールシーズンタイヤは溝の深さが、いわゆる夏タイヤよりもあるために、ラフロードを走れることを謳う一方で、雪性能、日本では分かりやすく浅雪において対応できた。言い換えると、路面に雪がない状態からの降雪時(つまり路面が凍結していない状態)では対応できるものの、日本のように凍結した上にそこがスタッドレスタイヤでツルツルに磨かれてしまったようなシーンでは、不足がある、そんなキャラクターだった。

しかし、この両タイヤはさらに凍結路でのグリップが期待できそうないわゆる波タイプのサイプを採用しており、それでいながらブロックの倒れ込みを防ぐ3Dワッフルブレードとすることで、日常性、いやいや、スポーツ性能とスノー性能をハイバランスさせている。

■年数回の降雪に対する備えとして有用

結論を先に述べてしまうと、想像していた以上に雪でも使えることを確信した。スラロームで的確な操縦性をもたらして理想のラインを走らせることができたし、コーナーであえてドリフトさせた際にはコントロールのしやすさを覚えた。さらにストレートでは直進性がしっかりと感じられ、ドライと変わらないような安心感を覚えたほどだ。コースは、最後はもはやダートのような路面となっていたが、そういったシーンでもしっかりとグリップ感が得られ、ハンドリングにおいては愉しさを感じた。そう、安心感だけではなく、愉しさがあったこと、これがグッドイヤーのオールシーズンタイヤのアドバンテージだと思った。

アシュアランスウェザーレディ

ここまでグッドイヤーの乗用車用オールシーズンタイヤは、多くの人が満足できるキャラクターになっていることをお伝えしたが、実は、乗用車系だけではなく、ヘビーデューティ4WD向けの泥や岩場といったシーンを走るマッドタイプと呼ばれるタイヤにもグッドイヤーはオールマイティさをプラスしている。

ウェザーレディは非対称のトレッドパターンとすることで重量のあるSUVでも操安性を確保

それは、そのトレッドデザインに反して、乗用車的な快適さやハンドリングを求めるというベクトルだが、さらにグッドイヤーでは波サイプデザインをプラスして、スノーにも対応できるスノーフレークマークを実現。このタイヤも同コースでチェックしたが、今回のシャーベット(半ばダート)といったシーンでは、そもそも得意としている泥(排出することが肝心)に対する性能が高いこともあり、グリップ感が明確に伝わってくる、つまり、ハンドリングに愉しさがあったことをお伝えしておきたい。

ただ、覚えておきたいのは、オールシーズンタイヤの雪性能がアップしたからといっても、やはりスタッドレスタイヤには敵わないシーンがあるという事実は変わらないこと。つまり、冬シーズンになると、路面には雪が常にあり、アスファルトが顔を出すことが少ない、そんな地域では冬はスタッドレスタイヤがお勧めだ。

しかし、冬シーズンに数回降る、降っても翌日には溶けてしまう、そんな地域であれば、グッドイヤーのオールシーズンタイヤを是非お勧めしたい。1年を通じて、はきっぱなしでいられることは、タイヤ交換の手間がかからない上に、使わないタイヤの置き場所に困らない、といったメリットも多くある。そして、何よりも1年を通じて、不足を感じることがない、そんなアドバンテージがあるからだ。

[吉田直志]

四輪駆動車専門誌、デジタルカルチャー誌の編集部を経て、フリーライターに。現在は新型モデルの評価を軸に、自動車雑誌のほか、ファッション誌にも寄稿。

Tagged