[東京オートサロン2020]トヨタ系の出展車を中心にイベントを振り返る

イベント コラム・特集

■とにかく熱気あるトヨタブース

 東京モーターショーの人気低下と存在意義が問われる一方、かつてはマニア向けでアンダーグラウンドな感じも漂っていた「東京オートサロン」は近年、国内外の自動車メーカーもブースを構えるようになり、人気アーティストのライブイベントや物品販売も盛んに行われるなど、年々来場者数も増加傾向にあり、2020年は3日間で約33万人(主催者発表)を記録したとのことで、1日あたりの来場者数はすでに東京モーターショーを上回っています。

オートサロンにてワールドプレミアが行われることも珍しくなく、外国のメディアの方も多数見受けられるなど、国際色も年々強まってきていると感じます。

今回、最初のプレスカンファレンスを開催した「トヨタGazoo Racing」のブースも「GRヤリス」の発表を待ち望んでいた人々でものすごい熱気、今年のオートサロンの盛況ぶりを予感させるスタートでした。

■注目は、トヨタ 「GRヤリスGR-Four」

 本会場でNo1の注目といって過言ではないのは、アンヴェールされたGRヤリス(GR-Four)。

ステージ上には実際に発売される GRヤリス RZ “High Performance”のプロトタイプが展示されており、スペックや価格も発表されました。

 

1.6リッターのターボエンジンにより272馬力を誇り、トヨタとしてはセリカGT-Four以来久々のフルタイム4WDシステムを登載。

また新世代プラットフォーム採用とともにドアパネルはアルミ製、ルーフにはカーボン(CFRP)を採用するなど、異素材を組み合わせるなど、非常に魅力的な仕様。

なお、プレゼンテーション中、「まだマスタードライバーである“モリゾウ”(豊田章男社長)からはOKが出ておらず鋭意開発中であること」も添えられていました。

 

出展:トヨタ自動車 GRヤリスカタログより

デビュー時のみ設定される特別仕様“1st Edition”が設定されることもアナウンスされました。

“1 st Edition “は2つのグレードで構成されており、ステージ上に展示されたRZ “High Performance”は、BBS社製のマットブラックに仕上げられた鍛造アルミホイールに、ハイパフォーマンスなタイヤ、ミシュラン「パイロットスポーツ4S」を採用、その他専用プレミアムスポーツシート、トルセンLSDなども備える本格派で「456万円」と、ベース車両との差は大きいものの、非常にコストパフォーマンスに優れていると感じました。

なお、これらをレスした通常仕様の“RZ”は「396万円」の価格設定となっています。

 

GRヤリスは今では珍しくなった「6速のマニュアルトランスミッション(MT)」を備え、非常にスポーティなクルマにもかかわらず、夜間の歩行者検知機能を登載した“プリクラッシュセーフティシステム”、先行車を追従しながらレーンキープ走行する“レーントレーシングアシスト”などトヨタの最新の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」を標準装備し、2018年以降、新型車に導入されているDCM(専用通信機)も備えた「コネクティッド」にも対応していることは、普段使いの面からも魅力的です。

しかしなんといってもそれほどの利益は見込めないと思われるにかかわらずGRヤリス専用パーツを多数投入し、「GR FACTORY」と呼ばれる専用の製造ラインを設けるなど、「面白い日本車がない」と言われて久しい中、非常に意欲的なモデルと思います。これまで「マニュアル(MT)がないから・・・」と言って敬遠していた人はもはや買わない理由がないと思えるほど。

なお、1月10日から6月30日まで期間限定で予約を受け付けることもアナウンスされています。

予約は10万円のデポジット(預り金)が必要で、Web申込後に正式な商談が行われるなど、趣味嗜好性の高い車として新たな販売方法にも注目ですね。

詳細はすでに公式サイトにアップロードされています。

http://shop.gazoo.com/shop/c/c1009/

それにしても社長と副社長の笑顔が素敵なプレスカンファレンスでした。車両の仕上がりにも期待しましょう!

■会場は「スープラ」が満載?

今回のオートサロンで目立ったのはとにかく「スープラ」!

2019年初夏に発売されたにもかかわらず、長い納期待ちでまだまだ町中で見かけることもほとんどない新型「スープラ」ですが、オートサロンではもっとも展示台数が多いと思われるほど多く出展されていました。複数台のスープラを展示するメーカーもあり、2020年はスープラのカスタマイズ・チューニングが本格化するようですね。

その中でも、「TOM’s」が発表した、 「TOM‘s SUPRA」はカスタムカーではなく、実際に市販化されるということで注目を集めていました。

TOM’sは、BMWでの「ALPINA」、メルセデスでの「AMG」のようなブランド力の高いメーカーを目指すようです。

「TOM‘s SUPRA」は“レジェンドグリーン”と呼ばれるマットな特別色とカーボンパーツの組み合わせが特別感満載で、スーパーGTに参戦するGT500車両と同等のワイドなボディサイズ。出力もノーマルから120PSも上乗せされた460PS、最大トルクは59.0kgf・mを達成するなど、その車両価格に見合ったものになっているようです。なお、価格は1423万円(税別)、生産台数は「99台」とアナウンス。

インテリアもグリーンとブラックを基調とし、カーボンパーツが多数あしらわれています。

■驚きの「センチュリー」のコンプリートカーも

TOM‘sブースではもうひとつ驚きのコンプリートカー、「TOM‘s  センチュリー」の発売もアナウンス。

フルオーダーメイドのシート(ナッパレザー)を採用するなど内装のカスタマイズも魅力ですが、個性的なフロントバンパーや各部エアロパーツなど、一風変わったセンチュリーに仕上がっていました。

(基本スペックは変更なし)

限定36台、価格2816万円(税抜)を予定とのこと。果たして町中で見かけることはあるのでしょうか?

■人気のSUVカスタムカーも多数!

2019年の新車販売では「セダン不振」がさらに加速し、ついには歴史ある「マークX(マーク2)」の販売も終了するなど、セダンやワゴンタイプから、背が高く、都市部でも快適に走行できる「SUV」タイプのクルマへの移行が進んでいますが、東京オートサロンにおいてもスーパーカー、スポーツカーばかりではなく、SUVタイプのクルマのカスタマイズ事例が増えていることが感じられました。

その中でも人気だったのは、価格も比較的お手頃で日本カーオブザイヤーも受賞したトヨタ「RAV4」ではないでしょうか?

最近はアウトドアなどのキャンプブームということもあり、見た目のカスタムだけではなく、実用性を考慮したカスタマイズカーも見受けられました。

■レクサスの出展車は全体的に少数

GRヤリスなどで大変盛り上ったトヨタGazoo Racingブースですが、「GR」ブランドの車が多数展示される一方でレクサス車の展示はありませんでした。やはりスーパーGTのベース車両がLC500からGRスープラに変更されたことは大きいのでしょうか。

レクサスは2019年にRCFをマイナーチェンジし、「RCF “Performance Package”」を新設定しましたが、この車両の展示自体が少ないのは残念でした。ショーの中でも数少ない「新型RCF」の展示があったのはパーツメーカーのLEXON。

2018年、2019年とレクサスでは展示が目立ったレクサスLC(LC500/LC500h)も展示数が激減しています。

次の「F」モデルはレクサスLCの“F”仕様、「LC F」が有力視されていますが、それまでは寂しい状況が続きそうです。

目立っていたのは、例年LCのカスタマイズカーを展示しているアーティシャンスピリッツのLC500。

■メーカー系パーツブランドも精力的に出展!

オートサロンには、TRDやモデリスタ(トヨタ系)、NISMO(日産系)、モデューロ・無限(ホンダ系)なども出展していますが、気になるのは今後のTRD・モデリスタの行方。

GRヤリスの「GRパーツ」からはすでに「TRD」や「モデリスタ」のブランド名やロゴが消失していて、「トヨタカスタマイジング&ディベロップメント」の文字がカタログに小さくあるだけ・・・今後はどうなっていくのでしょうか?

そんな中、モデリスタは人気のミニバン、ヴェルファイアのカスタマイズパーツ装着車両を展示していました。

MODELLISTA ヴェルファイア

また、TRDとモデリスタは共同でコンセプトカーを展示。パーツの向こう側から透けて見えるようなライティングなど、これらの技術を用いたパーツが登場することに期待ですね。

Ambivalent “RD” PRIUS PHV CONCEPT

 

■スバル/STI 新型レヴォーグプロトタイプSTIも注目!

GRヤリスの1時間半後に同じく世界初公開された、「新型レヴォーグプロトタイプSTI」も人気を集めていました。

スバルとしては珍しい“”電子制御ダンパーを採用。二面性のある走りを実現しているとのことで登場が楽しみです。

■オートサロンならでは?レクサスLS500かと思いきやLS460?

自動車メーカーにはできないカスタマイズとして(好みは分かれると思いますが)旧型車両を「新型車風」にカスタマイズするのも定番です。

たとえば、一見新型のレクサス「LS500」なのですが・・・

なんと内装は懐かしい、前モデルまで設定のあった「LS460」。

つまり、外装を新型である「LS500」風に交換している事例(リヤもかなり再現されていました)ですが、旧型となった車を新型の雰囲気にしてしまう・・・これも大変味のあるカスタマイズ事例ですね。こういった展示物もオートサロンならではと言えます。

■オートサロンは昔のクルマも思い出させてくれる!

近年、かつての人気車が高額でオークション取引されるニュースが見受けられます。

その流れもあるのか、いわゆる「旧車」の人気も高まり、メーカーが当時のパーツを復刻して販売したり、修復(リストア)する事業を開始するなどの動きも見られます。

今回のモーターショーでも、「ホンダ」が人気を博した2シーターオープンカー「S2000」のパーツを復刻するプロジェクトの展示があるなど、オートサロンの魅力はかつて人気を誇ったクルマにも光を当てることにあるのではないでしょうか。

会場にはロッキーオートが制作した、名車・トヨタ2000GTのレプリカモデル「R3000GT」なるスゴイクルマも・・・

現代の技術で当時の名車を再現するのもオートサロンの魅力とも言えますね。

■電動化や自動化でもカスタマイズは不滅?

2019年に開催された東京モーターショーでは、「エコ」や「自動運転」、「所有から共有」など自動車の今後の未来を見据えた展示が中心でしたが、東京オートサロンは一転、まだまだガソリン臭やエンジンサウンドを感じさせる、昔からの自動車ファンが熱くなる展示がメインだったと感じました。東京モーターショーでは出展しなかった海外自動車メーカーの出展もありましたし、コンパニオンの存在も賛否はあるものの華を添えており、ショーの盛り上がりに貢献しているのはいうまでもありません。

環境への対応などのため電動化や自動化が進む自動車業界ですが、東京オートサロンには何十年も前のカスタマイズカーが展示されていたり、現代の技術を用いた復元プロジェクトなどもあり、仮に電動化や所有から共有が今後ますます進んだとしても個性的なクルマは今後ますます存在感を残すでしょうし、工業製品の中でも数少ない「愛」がつく製品である「車」はまだまだ多くの人に愛され続けるに違いないと感じた2020年のオートサロンでした。

[なまっくす]

レクサスを中心としたクルマについてのんびりきままにレポートをしている「のんびりなまけにっき」の管理人。

既存メディアがあまり取り上げないようなマニアックなネタも満載。

 

のんびりなまけにっき2 http://www.namaxchang.com

 

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