ミニは永遠の美女

コラム・特集 車屋四六

ミニは広い居住空間を求め、車体四隅一杯に小径タイヤを置こうと10インチタイヤをダンロップに特注した。が、実走試験では操安性、乗り心地共に最悪で、商品化は無理と結論された。

が、そんなことでへこたれるようなイシゴニスではない。で、金属スプリングを諦め、考案したのがラバーコーンサスだった。

完成したミニは、床下からプロペラシャフトとデフが消えて軽量化に成功、大人四人の居住空間を確保していた。シトロエンやDKWは変わり者だったが、ミニ誕生でFWDは普通の車になった。

一方、東洋では66年にスバル1000、67年N360、72年ホンダシビック誕生と、FWD化の波は東西から世界に広がっていった。

59年誕生のミニは848cc34馬力から67年には997cc42馬力に向上、この時スライド式ドアガラスが巻き上げ式に進化、外付けドアからヒンジが姿を消した。

日本の軽自動車と比較して「な~んだ」という馬力も、トルクピークを低回転域にという使い勝手重視の手法をかたくなに守る欧州流と解釈すれば納得できるはず。

それでも90年代に入るとパワー不足が不満になるがローバージャパンが輸入のミニは人気者で、従来のミニファンに加えて、格好良く乗り回す女性ファンも獲得した。重いハンドル、硬い乗り心地、うるさい室内、そんなミニによく乗るものだと感心したものである。

時代遅れのミニ、それでも衰えぬ人気の魅力は、古風な可愛い姿にある。登場して半世紀経ても衰えぬ魅力…ミニは永遠の美少女のようだ。我慢しても乗ることがファションで、醍醐味なのだ。

ローバーミニ・メイフェア/42馬力とミニクーパー1300/55馬力の91年の私の試乗記を紹介しよう。両者4ATだが、シフトポジションにPがない「ミニ開発時ATなど念頭になかったからPギアが入る余地がない」という回答だった。が、翌年のミニクーパーにはPが新設されたから、よほど要望が強かったのだろう。

ローバージャパン輸入のローバーミニ:四速AT・エアコン装備で便利なダッシュボードの大きな棚が無くなった/大磯試乗会で

記事には「乗り味は相変わらず古典的・ノンパワーのハンドルをトラック運転手のように抱え込んで張り切れば昔懐かしいキックバックが顔を出す・アクセルON/OFFでトルクステアが加わり賑やかなハンドリングだが、それでもミニは楽しい」と。
そして両車の比較では:250kmほどの実走燃費13.5/クーパー13.6km/ℓ・0→100㎞加速20.27秒/16.77秒・0→400m加速22.55秒/21.53秒・室内騒音:アイドル52/55db・100㎞巡航78/76dbというレベルは地下鉄と同等…それでもミニは楽しいのだ。

廉価大衆車からプレミアムカーに変身したBMWミニ/クーパー:もうミニとは名ばかり大柄に成長したものだ

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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