雪の山形でスバルAWDの安心・快適性を実感! スバル公道雪上試乗インプレッション

試乗レポート

※本稿は2019年2月に週刊Car&レジャーに掲載されたものです

スバルが月山周辺でフォレスターとXVを用いた雪上公道試乗会に参加し、雪中のロングドライブで、スバルAWDの「こだわりの冬季性能」を体感することができた。

世界の乗用車メーカーの中でも、スバルは強い個性とこだわりを持つメーカーだ。水平対向エンジンの搭載もその一つだが、ほとんどの車種がAWD(4WD)というのも大きな特徴である。ちなみに昨年国内で販売されたスバル登録車のうち、87.4%がAWD車となっている。

その先駆となったのが72年に国産初の乗用4WDとして発売されたレオーネ・エステートバン4WDである。以来、スバルAWDは特に雪国での生活の足として多くの支持を集め、現在に至っている。

さて、今回はそのレオーネ4WDの開発時に走行試験が行われた山形県・月山周辺で雪上公道試乗会が行われた。深雪、圧雪、アイスバーンと刻々と路面状況が変わる実際の雪道で、スバルSUVの実力を試すというものだ。ルートは山形駅付近から出発し、途中肘折温泉を通過、庄内空港でゴールするというもので、全体の走行距離は約200㎞。市街地から雪深い山中まで走ることとなる。

先に試乗したのはフォレスターの「Premium」。ガソリン2.5LのNAエンジンを搭載し、快適装備を充実した上級グレードだ。タイヤはブリヂストンのブリザックVRX2を装着。今冬で発売2シーズン目を迎えた最新スタッドレスタイヤである。

出発地点の山形市内の道路は雪はなくドライの状態。ただし気温は氷点下で非常に寒い。そこでまず活躍したのが、ステアリングとシートのヒーターだ。車内全体が温まるまでは時間がかかるが、直に触れる部分、つまり手と腰がすばやく温まることで快適に出発することができる。ちなみにフォレスターの場合、全グレードでこのステアリング&シートヒーターを標準装備している。シートヒーターは後席も含めて全席に装備しているので、後席乗員にもうれしい仕様といえるだろう。またエアコンも吹き出し口を下側に配置し、暖まりにくい足元を素早く温めるよう配慮されている。細かなところだが、そんなこだわりが雪国でのスバル人気を高めているポイントといえるかもしれない。

市内を抜け、山道に向かうと周囲に雪が見え始め、路面も徐々に雪で覆われていく。そしてしばらく走ると完全な圧雪路になるが、AWD+ブリザックは路面をしっかりと捉え、交差点での停止・発進やきつめのカーブでもきわめて安定感が高い。やや急な坂道での発進も気を使うことなく、安心して走ることができた。

試乗ルートの中継地点である肘折温泉が近づいてくると、いよいよ雪が深くなり、道路は雪壁で囲まれたような状態になる。今冬は雪が少ないというものの、さすがは歴代最深積雪ランキング(2000年以降/気象庁)で全国2位(2018年・445㎝)を記録した豪雪地だ。連続するコーナーを上がるにつれて路面環境も厳しくなり、アイスバーンの上に踏み固められた雪が乗るという滑りやすい箇所も少なくない。AWD+最新スタッドレスの組み合わせでも油断できない状況だ。

しかし、そういう場面でもフォレスターの安心感は高い。やや緊張する場面もあったが、挙動を大きく乱すことなく走破する。SUVならではの目線の高さで、先の路面状況が読みやすいことも、この安心感につながっているといえるだろう。

また、最低地上高が220㎝もあり、さらにXモードを備えているのも心強い。もちろん最低地上高150㎜程度の普通のクルマでもダメではない。雪国では除雪体制が整っているので、日常生活で困ることは少ないといっていいだろう。しかし幹線道路でも大雪の時は除雪が間に合わないこともある。また自宅前まで除雪車が入らない環境もあるし、駐車場は多くの場合、自力で除雪しなければならない。

そこでポイントになってくるのが最低地上高である。今回の試乗中は大雪に見舞われることはなかったが、試乗中、雪溜りとなっている駐車場を見ても不安を感じることがなかった。高い最低地上高とXモードは万が一の保険として、これがあるとないとでは心のゆとりが大きく違ってくる。

肘折温泉でXVに乗り換える。試乗車はe-BOXERを搭載する「Advance」グレード。タイヤは、これもブリザックVRX2を装着する。今度は酒田市内に向けて山を下って行く。

フォレスターに比べると重心が低いこともあって、乗り味はXVの方が軽快に感じられる。特にコーナーが連続する狭い山道は、XVが得意とするシーンといえるだろう。

加えて、滑りやすい路面でのe-BOXERの扱いやすさを実感。発進時や極低速域では、ガソリンエンジンの場合、アクセルを踏んでから少し遅れてトルクが立ち上がるため、大げさに言えば雪道や凍結路ではご法度の急加速気味になることが多い。これに対して、モーターがアシストするe-BOXERはアクセルオンと同時にトルクが発生する。このためアクセルを必要以上に踏みすぎることがなく、静かにスタートすることが可能というわけだ。

さらにe-BOXERは、搭載するモーターが小型のため、パワーも最高出力13.6ps、最大トルク65Nmと小さいことも雪道での扱いやすさにつながっている。スバルとしても意図したわけではないのだろうが、結果として雪道に最適なハイブリッドシステムになっているといえるだろう。特に交差点がアイスバーンとなることが多い寒冷地では、その恩恵をより感じることができるはずだ。

山を下りて酒田市内に入ると雪は消え、路面はドライに。ゴールである庄内空港まで街中を抜けていくが、ここで装着しているVRX2の静かさに改めて気づかされた。また走行時の安定性も高く、スタッドレスタイヤであることを忘れてしまうほど。ブリザックが雪国で圧倒的なシェアを誇っているのも納得である。フォレスター、XVの高い雪上性能に加え、最新スタッドレスタイヤの高性能も実感させてくれた試乗となった。(鞍智誉章)

写真提供:SUBARU

Tagged