日産、次世代のクルマづくりコンセプト「ニッサンインテリジェントファクトリー」を発表

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日産自動車11月28日、生産工場における次世代のクルマづくりに対応するためのものづくりコンセプト「ニッサンインテリジェントファクトリー」を発表した。

同コンセプトは、「未来のクルマを作る技術」、「最高品質の量産」、「生産現場の労働環境改革」という三つの柱を基に策定。日産の次世代のクルマづくりを支える生産技術として、国内の基幹工場の一つである栃木工場に約330億円を投じて導入するのを皮切りに、国内外への工場へ展開する。

ニッサンインテリジェントファクトリーについて坂本秀行副社長は「技術が進歩する中で自動車の生産を取り巻く環境は、少子化や人手不足により、工場の労働環境改革が急務。だが、100年前から生産システムのベースは変わっておらず、大きなマンパワーを前提とする従来の労働集約型からの脱却が必要だ」と重要性を述べた。

新技術を説明する坂本秀行副社長

さらに「これから作るクルマは電動化・知能化によって急速に複雑化している。一つひとつのシステムが複雑かつ、仕様の組み合わせが複雑になることから、生産工程の難易度が格段に難しくなることが容易に推察できる。生産技術の飛躍が、明日の日産の飛躍のための要になると考えている」と、次の新技術を説明するとともに期待を寄せた。

 

■未来のクルマを作る技術

現在生産されている クルマは、「電動化」、「知能化」、「コネクテッド」など、より高度で複雑な技術が搭載されるようになり、さらにこれからは生産工程の難易度が格段に難しくなると推察される。日産ではこれに対応するために「パワートレイン一括搭載システム」を開発した。

同システムは、電気自動車(EV)やe-POWER、ガソリン車のパワートレインユニットの組立を一括搭載。従来は、大勢の作業者が上に車体を吊って下側からモーター、エンジン、バッテリー、サスペンションを六つの工程で組付けていたが、首、肩、腰に負荷の高い作業姿勢を強いられていた。

新開発システムは、パレットの上に作業者がパワートレインの組立に必要な部品をセットするだけで、モーター、エンジン、バッテリー、サスペンションをロボットが組付けを行い、1工程で27通りの組合せに対応。作業者の負担減に大きく貢献する。さらに、高速ビジョンシステムによる画像認識によりクルマのボディを瞬時に測定し、0.05mmの精度で組付けすることで高い品質も実現している。

 

■最高品質の量産

従来は最高品質でのクルマづくりを行うには、高い技術を持った“匠”による手作業に頼る部分が多かったが、ニッサンインテリジェントファクトリーでは匠の磨き抜かれた技を数値化して、ロボットに移植。これによって、匠の技でしか生産できない最高品質のクルマを量産しながら、匠は更なる現場改善や、自動化できない感性品質、複雑化する技術への対応など、最高品質のクルマづくりを支えていく環境が整えられた。

これを実現するために開発された技術の一つが、シーリング塗布の自動化。これまで、車体パネルの接合箇所の水漏れを防止するシーリングは、施工する部位の形状が複雑なため、自動化が難しく、技能者の熟練した技術に頼っていたが、今回、匠がハケやヘラでシーリングの塗布をして仕上げる際の、力加減や動かす角度を数値化して、ロボットに伝承することで、匠の手の動きを忠実に再現することを可能とした。

さらに、デフギア、コックピット、ヘッドライニングといった工程も自動化することで、品質の均一化と作業者の重労働撤廃が可能となり、生産現場の労働環境も飛躍的に向上するという。

■人とロボットの共生がもたらす生産現場の労働環境改革

人には厳しい作業をロボットが助けることで、人が働きやすい環境を作っていく。女性や高齢者も活躍できる工場にすることで、働き方の多様化を加速させていく。

従来、金属製のボティと低温での塗装が不可欠な樹脂製のバンパーとは別々の工程で塗装をしており、今回、日産で新たに開発した水系塗料は、低温で難しかったボディ塗装における粘性のコントロールに成功し、ボディの低温塗装を実現した。これにより、ボディとバンパーの同時塗装が可能となり、CO2を25%低減させたほか、従来、塗装工程で空気中に残留した塗料は、水と混合され廃棄物となっていたが、水を一切使わないドライブースを採用することで、浮遊する残留塗料を100%回収し、鋳造工程にて鉄を生成する際に、不純物除去のために使用されていた補助剤の代替として、リサイクル活用する。

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