新型「ヤリス 」プロトタイプ試乗、高い実用性と走りの心地よさを両立

試乗レポート

10月16日に世界初公開された新型ヤリス。東京モーターショー期間中はMEGAWEBに隣接するお台場のヴィーナスフォートに展示されていたから、実際に目にした人も多いだろう。ただしこの新型ヤリス、正式発表は12月、そして発売は来年2月ともう少し先になる。というわけで、現在は開発の最後のツメ、最終段階というところだ。

さて、この正式発表・発売に先行して、今回はそのプロトタイプに袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗することができた。

結論からいえば、この新型ヤリスには大いに期待していい。その素性の良さ、特に走りの実力の高さには驚かされた。長年親しまれた「ヴィッツ」から車名を変更したのも納得である。そのぐらい大きく進化している。

■機能的なインテリア

ボディサイズは全長3940㎜×全幅1695㎜×全高1500㎜。現行ヴィッツに比べ全幅、全高は変わらず、全長は5㎜短くなった。世代が変わるにつれてボディサイズが大きくなるモデルが多い中で、従来と同等のサイズとしたのはうれしいところ。取り回し性が犠牲にならないからだ。

一方でホイールベースは40㎜拡大されて2550㎜。タイヤを四隅に配置することで、走りの質を向上させるとともに、理想的なドライビングポジションを取ることが出来るようになった。もちろん、これはスポーティなデザインにも寄与している。

フロントから見た新型ヤリス。精悍な顔つきだ
力強さを感じさせるリヤのデザイン
新型ヤリスのサイドビュー

インテリアは、スッキリとまとめられたインパネがまず目に入る。伸びやかな直線基調で広さを感じさせるとともに、クリーンな印象も与えている。見やすい新設計のデジタルメーターや小径のステアリングホイールを採用することで全体のバランスが調整され、コンパクトカーのインパネにありがちな目の前の圧迫感がないのも好印象だ。

直線基調でまとめられたインパネ周り
メーターは文字も大きく視認しやすい

またインパネの高さが抑えられていることで、前方の視界も広い。安心して運転に集中することが可能だ。ただ斜め後方はやや死角が大きく、これは少し気になった。

ステアリングからシフトやブレーキのレバー、各種ボタンなど、操作系は自然に手が届く位置に配置されている。ヴィッツでは奥側にあって使いにくかったドリンクホルダーの位置も手前側に移され、使いやすくなった。また小物を置く場所がわかりやすく、かつ充実しているのもうれしいところ。助手席前のグローブボックスの中にはティッシュの箱がそのまま入るように設計されているなど、細かな部分まで工夫がなされているのも実用コンパクトならではの配慮といえるだろう。このクラスでは運転席のみオートが普通のパワーウィンドウのスイッチが、全席オートになっているのも見逃せない。日常での使い勝手でストレスを感じることはなさそうだ。

助手席側の収納スペースも充実している

反面、上質感という点では、正直少し寂しいかな、といった印象。もちろん上級グレードではインパネ上部にソフトな素材を用いたり、ドアトリムのファブリック面積も拡大するなど頑張っているのだが、装飾が控え目なこともあって全体としてはおとなしい。特にシフトレバー周りは実用車然としており、ここはちょっと残念な部分。新世代感のあるデジタルメーターやディスプレイオーディオ周りとの落差が大きいのだ。

ドアトリムはファブリック面積を拡大、ドアハンドルは凝った造形だ
シフトレバー周りは少々寂しい。ちょっと残念なポイント

 

■前席優先だが、後席の居住性もしっかり確保

室内のパッケージは前席優先。ボディサイズはヴィッツとほぼ同等のまま、前席のスペースを拡大したことで、後席スペースは少々狭くなる。ただし実際に後席に座ってみれば、見た目ほど窮屈さは感じない。足元、頭上ともそれなりに余裕があることに加え、シートにも厚みがあり、座り心地が良い。大人4人での乗車でも日常的な範囲なら快適に過ごせそうだ。荷室のスペースも必要十分なサイズがあり、実用上困ることはないだろう。なお荷室の床は2段階で高さが調整可能。この機能はRAV4などにも採用されているが、調整できる高さはRAV4よりも大きく、より実用的である。

後席は窮屈そうだが、意外としっかり座れる

前席に座ってみると、足元空間が広くなったことがすぐに実感できる。足元スペースの狭いヴィッツでは運転姿勢がアップライト気味になりがちだが、ヤリスでは自然な姿勢で運転席に座ることができるのでラク。ペダルも踏みやすく、これも運転のしやすさにつながるポイントだ。

前席は適度なホールド性と乗り降りのしやすさのバランスに優れている

また特筆できるのは、初採用された「イージーリターンシート」。これは自分のシートポジションを記憶させると、位置をスライドさせても簡単に元の位置に戻せるというもの。要するに電動パワーシートのメモリー機能と同じなのだが、ヤリスでは価格的にもパワーシートの装備は難しい。そこで、これをメカで実現したというのがこのシートだ。

小柄な人の場合、自分のシートポジションだとシートが前過ぎて邪魔になり、乗り降りしにくい。そこで降りる時はシートを後ろに下げてからドアを開けて降車、再び乗車したら今度はシートを前にスライドさせて自分のポジションに戻す、という使い方になる。これは地味に面倒くさい作業だ。

このイージーリターンシートは、この時の煩わしさを解消するものだ。操作は簡単で、通常のレバーで自分のポジションを決めたら、シートをスライドさせたい時はその前方にある専用レバーを引くだけ。ポジションを戻すときは自動的に自分のポジションで止まるので、細かな調整をする必要もない。

なおシートのスライドは目視せずに操作するが、その際に間違えないよう、専用レバーは指を入れて操作する形になっている。あまり目立たない装備だが、価格を抑えながら必要な機能を実現するというのも、実用コンパクトカーならではの進化といえるだろう。

イージースライドシートの操作レバー。前端に指を差し込んで操作する

 

■高度駐車支援システムにも注目

最新モデルとなるだけに、先進安全装備も充実している。予防安全機能では「トヨタセーフティセンス」を全車に標準装備しているが、レクサスも含めたトヨタ初の機能として「プリクラッシュセーフティ(交差点シーン対応)」を搭載。これは右折時に前方から来る対向直進車や、右左折後の横断歩行者も検知し対応するというものだ。

またトヨタのコンパクトカー初の機能として、プリクラッシュセーフティの夜間歩行者検知が加わったほか、「レーダークルーズコントロール」と「レーントレーシングアシスト」も搭載。ただしレーダークルーズコントロールは全車速対応ではなく、時速30キロ以上に限られるのがちょっと残念なところではある。

一方、注目なのはトヨタ初の機能として搭載された、高度駐車支援システム「Advabnced Park(アドバンスド・パーク)」。駐車支援システムはこれまでにもあったが、この新システムの凄いところは、白線のない駐車場でも設定可能というところ。実際に体験してみたが、操作は非常に簡単。駐車したい場所の前に車を止めてスイッチを押すと、画面上に枠が表示されるのでそれをメモリするだけ。あとはハンドル・アクセル・ブレーキをクルマが自動制御して駐車するから、ドライバーはシフト操作をするだけでOKだ。駐車スペースは画面上で簡単に微調整することができる上、縦列駐車にも対応、また駐車スペースにメモリした時とは反対側から進入した場合でも認識されるので、実用性が高い。ちなみにメモリは3個所まで登録することが可能だ。

 

■気持ちのいい走り

新型ヤリスが搭載するパワートレーンは3種類。1.5Lと1Lのガソリンと、1.5L+モーターのハイブリッドとなる。このうち今回は1.5Lガソリンとハイブリッドに試乗。ハイブリッドは2WDと4WD、ガソリンは2WDでCVTと6MTをそれぞれ試乗することができた。

まず全体に感じたことは、走りの面でストレスがないということだ。その大きな要因は、ボディの剛性が高く余計な動きがないこと。低速域から高速域まで、意図通りにクルマが動くので気持ちよく、また不安がない。真っすぐ走りたい時は真っすぐ走り、曲がりたい時は曲がりたい分だけ曲がってくれる。当たり前のことなのだが、これがきちんとできるクルマは案外少ない。ヴィッツも例外ではなく、操舵に対して余計な動きや遅れが大きい傾向があった。これだと無意識のうちに常にハンドルを修正しながらの運転となるから、短時間の運転ならともかく、長時間の運転ではストレスになる。運転中、ずっと余計な緊張感が続くからだ。

新型ヤリスの場合、そこに遅れや余分な動きがないため、気を使わずに済む。と同時に狙ったライン通りにクルマが動いてくれるというのは単純に楽しい。人馬一体といえばマツダになってしまうが、目指す到達点は新型ヤリスも同じである。

同時に、アクセルのレスポンスの良さも大きく向上した部分。踏み始めからスムーズかつフラットにトルクが出てくるので心地よい。今回、この点で特に進化したと感じたのは1.5Lのガソリン車。1.3Lから1.5Lに排気量が拡大されたことで立ち上がりのトルクが30%も向上しているのに加えて、ボディも軽量化されているのだから、それも無理ないところだ。さらに新型TNGAエンジンは低回転・高トルクの特性を持つから、スペック以上にキビキビした走りとなる。

一方で力強さという点ではハイブリッドが上回る。単純に言えば1.5Lエンジンにモーターが加わるのだから当然なのだが、ヴィッツHVでは重さがパワーを相殺し、あまり走りに余裕は感じられなかった。それが新型ヤリスでは、パワーが増したことに加えてシステムが軽量化されたこともあり、スムーズな走りを実現している。加速時や減速時のフィーリングも自然で違和感がなく、自分のリズムに乗って走ることが出来る。

また重量バランスが最適化されたのも大きなポイント。ヴィッツの場合は途中からハイブリッドが追加されたため調整しきれずステアリングへの反応が鈍かったが、新型ヤリスではそれがなく、ハイブリッドでも軽快な走りが楽しめる。さらに4WDは発進時の安定感が高まり、これも心地よい。トルクを無駄にすることなく、きちんと真っすぐにクルマを押し出してくれるような感覚だ。

乗り心地も満足できるところ。硬すぎず柔らかすぎず適度なバランスで、街乗りから高速ドライブまでこなす実用コンパクトとして文句はない。今回はサーキットでの試乗だったため荒れた路面を走行する場面はなかったが、それでもパドック内での移動など、細かい段差がある場所でもショックを緩やかに吸収し、余計な振動は伝えない。ボディの剛性が高められたことで、サスペンションがスムーズに動くようになったことが体感できる。

静粛性も高く、エンジンを高回転域まで回した時でも、ウルサイとは感じなかった。エンジンはガソリン、ハイブリッドとも3気筒のため、本質的には音や振動の面では不利なのだが、室内への浸入は巧みにシャットアウトされており、このクラスではトップレベルである。

というわけで、プロトタイプとはいえ、実用性、走りともにその完成度は極めて高い。荒れた路面での走りがどうなるかはまだ未知数だが、中高速での領域では確実にこれまでの実用コンパクトカーの領域を超えているといえるだろう。今後の熟成が大いに期待されるところだ。(鞍智誉章)

 

写真で見る新型ヤリス(プロトタイプ)その1

 

写真で見る新型ヤリス(プロトタイプ)その2

 

写真で見る新型ヤリス(プロトタイプ)その3

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