【アーカイブ】スバル・2代目レオーネ試乗記(週刊Car&レジャー・1982年2月掲載)

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雪国やアウトドアレジャーユーザーにとって欠かせない存在が4WD車。現在では軽自動車からSUVまで幅広い車種で4WDが設定され、選択に困ることもない。しかし、乗用車の4WDが登場したのは意外と新しく、1970年代になってから。75年に発売されたスバル・レオーネに搭載されたのが量産車では世界初。さらにAT車でも4WDが選択できるようになったのは81年で、これもレオーネであった。

そこで今回は、そのAT車で初めて4WDを搭載した2代目レオーネの試乗記を紹介しよう。

 

<週刊Car&レジャー 昭和57年2月13日発行号掲載>

・反骨精神でAT完成

以前は特殊な職業用でしかなかった4WDだが、ここ数年レジャー分野に進出し新しいマーケットが生まれた。そして、また新しいユーザー層が生まれようとしている。

4WDは、そもそもが軍用からだから、どの車もゴツイ。そればかりでなく少量生産でしかも頑丈さが要求されるから、高価なのが普及をさまたげることになる。だが、量産乗用車をついに4WD化することに成功した富士重工のレオーネと軽の4WDだってあるさと登場したジムニーにより、4WDが気楽に日常生活に溶け込んで来たのだ。

早い話が雪国に住むサラリーマン、商人、さらに主婦が買い物に。遊び好きの都会人もということになれば、当然ながら起こる問題は四輪駆動車運転の技量低下ということになる。安全なはずの4WDがかえって事故を起こすようになったのである。

そこで出てきた声が、4WDのATがないだろうかということだったのだ。「そんなもの無理ですよ」と断ってしまえばよかったのだが、反骨精神が強い技術屋集団の富士重工は、これにチャレンジし見事に4WD-ATを完成させてしまったのである。

この車の車種は4ドアセダン158.1万円とツーリングワゴン166.8万円の二種だが、どちらかというとワゴンの方がスポーティな感じだ。オプションでパワーウインドー、デジタルメーターが11万円高で付く。

装備のグレードが高いとはいえ、この価格は少々高い気もするが、4WDの性能を加味すると決して高い気はしないはずだ。

・停車の必要もなし

土台がFFレオーネだから、4WDといっても走行性能に差はなく、0-100キロは15.1秒、1800AT車」としてハイレベルな加速力を誇っている。追い越し加速もDレンジで、40~60 3.1秒、60~80 4.1秒、80~100 4.5秒と平均した実力は使いやすいものだった。

レオーネが他の4WDと違う大メリットは、このような高速を含め、走行中に4WD-2WDとシフトできる点で、これはマニュアル時代からATにも引き継がれている。他の4WDのように一度停車する必要もなく、しかもデフが作動しているコーナリング中でさえシフトが可能なのである。

山の北斜面を回り込んだら、凍っていたという例はよくあるが、レオーネならその瞬間に4WDにすることができるのである。そして、その切、断はATになって、マニュアル時代よりさらに短時間というより、ほとんど瞬間にやってのけられるようになった。

4WD ATはFF ATのアウトプット軸を延長してから、湿式多板クラッチを介し、後部デフに動力が伝えられる仕組みになっている。

2WD-4WDの切り換えは、シフトレバーを握って、ちょうど親指の当るところのスイッチを押す動作を繰り返せばいい。まことに簡単だし、何の抵抗ショックもなく、実にあっ気ない。しかもいつ変わったのかも判らず、瞬時にして変わっているのである。また、押ボタンは目立たないので、気がつかなければFFとして乗っているだろう。

4WDのON、OFFは計器盤のランプで知るだけだ。気を付けていれば4WDになると、いかにも路面をつかまえたというようにグリップが向上し、ステアリングが多少重目に(といってもパワーステアリングだから軽い)、そして、急発進時に、そのまま水平にトビ出すのでFFと違うなと判るだろう。

砂地のような柔らかいところでは、かなりアンダーになるので、アクセルを一定に速度のコントロールを上手にやる必要がある。もちろん、かなりな所でも苦もなく通り抜けてしまう。

乗用車ベースだから、大きなギャップでは下回りがぶつかるが、それさえなければ何処でも走る。泥道を2WDで走り、滑り出したらボタンを押す。嘘のように、そのまま走り続ける。

よく深みにはまった時に使う手だが、前後進を素早く繰り返して脱出するのがあるが、これをマニュアルでやるには、4WDでもかなりな熟練を要する。ところがATではアクセルをホンの少し踏んで、シフトレバーを前後、R-Dと動かしていればいいのだから、高等技術がウソのように簡単になる。

 

・高等技術も簡単に

ATで特に良かったのはトルコンのせいで、トルク伝達がスムーズなことである。従来のように半クラッチで微妙にトルクをコントロールする必要がないし、それにつれアクセルにも気を使わないで済むようになった。

レオーネ4WD・ATの目的は、見事に果たされていた。平均的ドライバー、いや、もっと初歩的ドライバーですら、そのままの技術で、難しい4WDトライアルが可能になったのである。

日常使用、生活に溶け込んだ使用により、このようなドライバーが増加しても、むずかしいドライブに気を取られることもなく、ゆとりが生じれば事故もトラブルも大きく減少するだろう。そして普段は、だれが見ても普通のFFセダンなのである。

CMキャラクターは81年読売ジャイアンツ入団のルーキー、原辰徳を起用。新人王も獲得するなど大活躍だった

<解説>

試乗車は79年に登場した2代目レオーネで、81年11月に追加されたAT車の4WDモデル「レオーネ4WDオートマチック」である。4WD車でATは世界初であった。

当時のスバルは新しい市場開拓に積極的で、まず81年6月、ステーションワゴンの「ツーリングワゴン」を設定し、アウトドアレジャー用途の獲得を目指した。「ツーリングワゴン」の名称は、ライトバンとの差別化を図るためのものとしている。

これに続いて登場したのが4WD車のATで、乗用4WDの普及を促進する役目を担った。当時は乗用4WD車そのものがまだ珍しい存在だったが、ATとすることでユーザーの選択肢を大きく広げることとなったのである。試乗記でもその点を高く評価している。また4WDとFFの切り替えもスムーズで、当初から完成度の高い4WDシステムであったことがうかがえる。

搭載した4WDシステムは、「MP-T(マルチプレートトランスファー)」と呼ばれるもの。ATの油圧を利用して多板クラッチを制御し、必要に応じて後輪側に駆動力を伝える。センターデフが不要なシンプルな構造のメカであった。その後、87年には電子制御によって前後トルク配分をコントロールするフルタイム4WD「ACT-4(アクティブトルクスプリットAWD)」へと発展、改良を続けながら現在まで搭載されている。

一方、レオーネは84年に3代目にモデルチェンジ。そして89年には後継のレガシィにバトンタッチされると同時に大ヒットとなり、ツーリングワゴンブームの牽引役となった。2代目レオーネで蒔いた種が、ここで結実したものといえるだろう。