新型カローラ試乗 滑らかで快適な走りには文句ナシ!

試乗レポート

トヨタを代表する車種の一つが「カローラ」だ。1966年の誕生以来代を重ね、新型は12代目となる。まずハッチバックの「カローラスポーツ」が昨年先行して登場したが、9月にはいよいよセダンの「カローラ」とワゴンの「カローラツーリング」が登場し、ようやく勢揃いしたことになる。

ちなみに当編集部の社用車は、まだ併売はしているものの、先代になってしまったカローラフィールダーの1.5Lガソリン車。さらにその前はアクシオのHVだった。それだけに、特に新型カローラは気になるモデルなのだ。

さて、新型カローラを実際に眺めてみると、ボディタイプは異なるものの全体のデザインは共通したテイストで、特にフロント側から見るとよく似た印象だ。いずれもスポーティ感を演出しつつも余計な線は抑えられており、スッキリとしたイメージである。先代アクシオ、フィールダーはモデルライフ中盤でフロント、リヤのデザインを大きく変えたことで、サイド部分も含めた全体のバランスとしてはややチグハグな印象もあったが、新型では当然ながらバランスよくまとめられている。

フロントから見たカローラ(セダン)
リヤから見たセダン。ツーリングと印象がかなり異なる
フロントから見たツーリング。なかなか精悍な顔つきだ
リヤから見たツーリング。先代に比べスポーティな印象を強めている

 

 

ボディサイズはセダンの場合、全長4495㎜×全幅1745㎜×全高1435㎜。先代よりも全長は95㎜、全幅は50㎜ほど大きくなり、5ナンバーサイズから3ナンバーサイズになったことでも話題を集めることとなったが、わずかに5ナンバー枠を出た程度に収められており、見た目の感覚としては数値ほど大きくなった感じはない。これが全幅1800㎜を超えるようになれば、取り回し性でも問題が生じてきそうだが、新型カローラでは従来の取り回し性を維持するよう配慮が払われていることもあり、その心配はないのはうれしいところだ。

室内のパッケージングは、従来アクシオ/フィールダーよりも前席重視。アクシオ/フィールダーでは運転席に座るとアップライト気味になり、運転操作がしやすいとは言い難かったが、新型ではより適正なドライビングポジションをとれるように改善された。シートも厚みがたっぷりとしたものが採用されており、これなら長時間のドライブでも快適に過ごせそうだ。特に腰回りのサポートがしっかりとしているので、姿勢が崩れにくい。

座り心地の良い前席シート。スポーツ専用シートほどではないが、適度なホールド感もある

 

結果、前席の快適性は大きく向上したが、トレードオフとして後席や荷室のスペースが犠牲になっている。後席の足元スペースはやや狭く、着座位置が若干下げられていることやドア開口部があまり大きくないこともあり、後席の居住性、乗降性は少し不満の残る部分といえるだろう。ハッチバックのスポーツはそういうものと割り切れるところもあるが、セダン、ツーリングは少々厳しいところではある。

後席スペースはややタイト。膝周り、頭上空間ともあまり余裕はない
ツーリングのリヤハッチ。開口部が絞られたデザインで、容量そのものも若干縮小

 

インパネ周りのデザインは、カローラスポーツと共通。一部改良されたスポーツも含めて新たにディスプレイオーディオ(DA)が搭載されたことで、インパネ上部のディスプレイ裏側がスッキリし、クリーンかつ上質な印象だ。インパネ周り全体で過度な演出がないのも好印象である。新搭載となったDAも、選択キーやボリュームなどが独立したハードキーになっていることもあって操作性はよく、ストレスは感じない。CarPlay/AndroidAutoを利用するにはTVとセットのオプションを購入しなくてはいけないのはちょっと疑問に感じるが、スマートフォンの操作に慣れている人ならば、快適に使いこなせるだろう。

インパネ周りはスッキリ。シンプルかつ上品にまとめられている
新たに搭載されたディスプレイオーディオ。操作はしやすい

ただ気になるのは、USBの位置。DAはスマホと連携する際にケーブルで接続するが、USBの位置が目視しにくい位置にあり、しかも斜めに端子を差し込む感じになる。従来のナビよりも、使用頻度が高いだけにここは改善して欲しいところだ。

iPhoneと接続したところ。USBの差込口は見にくい。ケーブルも邪魔になりそうだ

一方、走りに関しては非常に驚かされた。一言でいえば、足回りとステアリングの反応が抜群に良い。これは駐車場で移動する程度のごく低速域からハッキリと体感できる。しなやかだが余分な動きのないサスペンションと、曖昧さがないステアリングの感覚が非常に心地よく、かつ安心できる。余計な動きが多く、ステアリングの反応も頼りない我が編集部のフィールダーとは大違いである。

そして、その差は走り出してみると、さらに明確になる。荒れ気味の路面から伝わる細かな振動もきっちりと抑え込まれており、コツコツ、ゴツゴツとした不快なショックは皆無だ。これは一部改良前のカローラスポーツと比べても大きく異なる部分。改良前のカローラスポーツは細かな振動が室内に伝わってくるのに対し、改良後のカローラスポーツはそれが見事に抑えられ、極めてスムーズ。2クラス上と言っても過言ではないほど上級な乗り心地だ。もちろんセダン、ツーリングも同じ。細かくいえばスポーツよりもラグジュアリー寄りのセッティングだが、雑味のないクリアな乗り味は特筆できるレベルである。

また余計な動きがないことに加え、前後サスの動きも細かくチューニングされたことで、特に上下の動きに対する挙動が自然になった。フロントの動きに対して、リヤが素早く追従するので一体感が損なわれず、機敏に走らせることができる。足回りに関してはまさに一級品で、まったく不満がない。静粛性も高く、上級セダンやワゴンから乗り換えるユーザーでも乗り心地に関しては大いに満足できるはずだ。

ただしパワーユニットに関しては、きわめて普通、という印象。ガソリン車は1.8Lと1.2Lターボ、ハイブリッド車は1.8L+モーターを搭載しており、今回は1.8Lのガソリンとハイブリッドに試乗したが、どちらも実用性重視のエンジンで、日常でのドライブに不足はないが、スポーツ性や高速域での余裕は若干不足気味。低回転域から素直にパワーが出てくるので扱いやすいが、アクセル操作に対しての応答性や、高回転域でのパワー感は今ひとつ。今回は試乗できなかった1.2Lターボも、昨年乗ったカローラスポーツの感覚からいうとターボの割にパンチがなく、足回りの高い実力から見るともう一声欲しいというのが正直なところだ。

というわけで、細かなところでは気になるところもあるが、新型カローラの基本的な実力は極めて高く、クラストップレベルといって間違いないだろう。特に日常域での走りの質はズバ抜けており、多くのユーザーが満足することは間違いない。一方で伸び代も残されており、今後の発展が期待できるのも注目ポイント。さらなる熟成が楽しみだ。(鞍智誉章)

Tagged