【アーカイブ】三菱・初代パジェロ試乗記(週刊Car&レジャー・1982年7月掲載)

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今年はマークX、エスティマ、キューブと、生産を終了するビッグネームが多い。三菱パジェロもその一つ。今年8月に生産を終了し、4代37年間に及ぶ歴史に幕を閉じた。とても残念である。

というわけで、今回はその初代モデルが登場時、どのように評価されたのか試乗記を見てみよう。試乗記はデビュー直後のもので、4ナンバー車(小型貨物車)として登場した時のものである。

初代パジェロ・キャンバストップ


<週刊Car&レジャー 昭和57年7月3日発行号掲載>
・三つの特徴備える

モーターショーに度々登場しているから「パジェロ」の名は知られている。だがショー用モデルと思っている人たちが多かったから、それの市販はマニアにとっては大歓迎されているようだ。ちなみにパジェロとは、アルゼンチン南部パタゴニア地方に生息する「パジェロキャット」--野生の猫のことだ。

用意されたエンジンは、ガソリン110馬力2000、75馬力2300ディーゼルに、95馬力のターボディーゼル。人気が高いのはこの2300ディーゼルのメタルトップ(189万円)だが、今回のテストはガソリン。キャンバストップの135.6万円だ。

スタイリングについて、いまからとやかくいうよりは写真を見ていただこう。

4WDらしい精悍さはあるが、なんとも人なつこいスタイルだ。RV指向の4WDとして見事なレイアウトである。スタイルからしてベースは当然ジープと思っていたが、そうではない。走行性能で定評のあるというより、優れたサスペンションの同社の4WD、フォルテの系統のようだ。

・便利なオートフリー

車軸のワインドアップ防止のため、センターを前方にオフセットしたリーフスプリングがリアサスで、フロントはダブルウィッシュボーン。スプリングはトーションバーを使用した独立懸架と、こったものである。

パジェロの特徴のひとつは、乗り心地がいいことである。オフロードだけを考えれば、もっとハードなものをということになろうが、RV指向の4WDの大部分が、90%以上オンロードを走っているのだから、むしろオンロードで乗り心地がいいという方が、この種のサスとしては正解だろう。

強いていえば、ラフロードでフロントの上下振動の吸収に難があるが、それ以外ではWウィッシュボーンらしいストロークの長さにより、接地力が強いから、路面によってはオフロードをハイスピードで駆け抜けることができる。

また独立懸架のせいで、四輪のうち一輪だけが浮いてトラクションを失う率がグンと低いということも、オフロード性能を飛躍的に向上させている。

第二の特徴は、オートフリーハブの採用である。4WDが2WDで走っている時は、フロントの駆動系は逆に前輪に駆動され空転している。そのために燃費が低下し、騒音が発生する。これを防ぐためにフリーハブが開発された。だがマニュアルでは、そのたびに車を降りて指先でロックしたりフリーにする必要がある。雨が降っていたり、特にスタックしてからでは、水や泥の中に降りなくてはならない。こんな思いをした人たちが、かなりいるはずだ。

オートフリーならば、2Hから4Hまたは4Lに入れる。次に車を前進させる。これだけで自動ロックしてしまうのである。4WDから2Hにシフトし、1mもバックすればロックが解かれフリーになるのである。トラブルを経験した人なら、必ず「コイツァいいや」というパーツだ。

第三は、5速ミッションの採用である。4WDの大部分は作業用が出発点だから、どうしても4速型全盛である。ところが4WDといえども、RV指向車はハイウェイ走行がかなりある。そこで5速目が役に立つのである。

まず、騒音の低下、燃費の低下というメリットがあるが、このほかに各ギアがクロスしてくれば、4WD時の性能もグンと向上するのである。

ステップの高さは、それほど4WD的ではない。フロントシートから前は乗用車ムード。特にシートはバケット度も高く、クッションも良好だった。

後席の出入は助手席側からだけで、後席はシートバックが立ち過ぎ、お世辞にも快適とはいえない。4ナンバー登録の犠牲だろうが、せっかくの車だけにワゴン5ナンバー登録にして、ゆったりとした後席が欲しかった。

三角窓を付けたのはうれしかったし、さすがという威力もあった。乗用車に何故なくなったのだろうか。後席を折りたためば大きな荷物室になる。

・急坂もグイグイ登る

パジェロは本格派4WDだから、トランスファーには高低2段のギアを持つが、普通のオフロードで、まず4Lの必要はなかった。4Hでどこでも走って行けた。ステアリングが軽いのはうれしいが、グリップが細い。4WDにはもう少し、たくましいのが欲しいところだ。

タイヤのパターンのせいか、砂地では傾斜があると横滑りをしたが、登坂力は抜群にあり、オーバーハングの少なさでアプローチ45度、デパーチャー40度という大きなアングルは、この種の車としても一級である。

チャーミングなスタイル、しかも乗り心地がいいとくれば、RV指向の4WDとしては鬼に金棒、しかも4WDとして性能面で犠牲になっている部分がまったくないのだからうれしくなる。

 

登場時の広告。キャッチコピーは「パジェロは道を選ばない」。都会もオフロードも似合う乗用4WDであることをアピールしていた

<解説>

初代パジェロは、乗用車感覚で使いこなせるまったく新しい多目的4WD車として、82年5月7日に登場した。デビュー時は4ナンバー車のみの設定だったが、当初から街乗りやレジャー用途を強く意識していたことが、当時の広告からもうかがえる。装備も充実しており、5段変速トランスミッション、サイレントチェーン付トランスファー、4WD車としては日本初のサスペンションシート、傾斜計など、当時の4WD車としては豪華な装備・新技術がふんだんに盛り込まれていた。なお記事中に出てくる「オートフリーハブ(オートマチック・フリーホイールハブ)」は新開発されたもので、オプション装備であった。

上級乗用車に匹敵する乗り心地の良さと、クロカン4WDならではの悪路走破性の高さの両立がパジェロの人気の要因となったが、それは初代デビュー時からのものであったことが試乗記からは伝わってくる。後席に関しては厳しい評価だが、翌83年に5ナンバーの乗用モデルが追加されてより快適なものになり、同時にエンジンもガソリンターボが搭載されるなど強化が図られ、その後のRVブームを牽引。91年には2代目モデルにバトンタッチされて人気はさらに高まり、92年には月間販売台数1位を記録するまでの大ヒットとなった。

その後はRVブームの沈静化とともに人気は落ち着いたが、それまでの業務用4WDから現在の乗用車ライクなSUVへの橋渡し役として、パジェロは大きな役目を果たしたことは間違いないだろう。

初代パジェロのインパネはとてもシンプル。中央部に3つ並んだメーターの中央が「傾斜計」。左は油圧計、右は電圧計が装備されている

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