【アーカイブ】トヨタ・初代カローラ試乗記(交読新聞・1966年11月掲載)

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日本のモータリゼーションを大きく飛躍させる原動力となったのが、トヨタ・カローラだ。トヨタ長谷川氏の「80点主義」で開発された初代カローラは、デビュー直後から高い人気を獲得。長谷川氏の狙い通りの大ヒットモデルとなった。当時の日本人の好みや要望にピタリとマッチしていたといえる。そこで今回は、その初代カローラがどのように評価されたのか、週刊Car&レジャーの前身、交読新聞に掲載された当時のインプレッション記事を見てみよう。

 

<交読新聞 昭和41年11月10日発行号掲載>

・ゼロ戦の如き軽快さ

ゼウス・ブルーのトヨタ・カローラ1100DX「品5も3499」をトヨタ自販から提供を受け、東京都内、郊外、第三京浜から箱根まで、二日間で279.9キロを走行してみた。スタート時のオドメーターは1497.9キロを指していたので、まだ調子はそれほど出ていないとみていい。

一日目は都内走行のみ。四段のフロアシフトがノロノロ運転でどれだけの負担になるかを調べてみたが、結論からいうと、例えば甲州街道のラッシュ時、銀座のラッシュ時でも、ほとんど苦痛を感じないということだ。

クラッチの踏む感じはコロナよりも柔らかい。ダイヤ・フラム式の特徴といえばそれまでだが、力を入れず、軽くギヤ・チェンジができる。従って、九段坂とか目黒の権之助坂でのラッシュ時でも、ブレーキから半クラッチにしてアクセルをパッと踏んでチョロチョロと前進する走り方も、おそらくこういうことに不得意な女性ドライバーや初心者でも楽にできるのではないか。

ダイレクト・チェンジ特有のコツン、コツン、コツンと当る感じもコラムチェンジにはないさわやかさがある。ただ、トップ側にスプリングを入れてひっぱっているので、慣れないうちはローギヤからいきなりトップギヤに入れてしまう危険性もある。スプリングなしにしてもいいのではないか。

ギヤの入り方はスムーズで、特にバックは非常に入りやすい。身体側にひっぱって引けば、入ったのか入らないのか分からないうちに入っている。よく上に持ち上げて入れるやり方がバックギヤにとられているが、カローラは力もいれず簡単にすばやく出来る。

都内、郊外を問わず感心したのは出足と加速の良さ。銀座の交差点で両側に中型タクシーが並んだが、それまでに追いかけてきた彼らも、交差点GPでは文句なしに負けた。一瞬、両車が先に出たが、それでも交差点を渡りきるときはトップを奪い返し、バックミラーにその姿をうつすことが出来たくらい。これは、各ギヤが非常によく伸びる(ローで40キロ近く、セカンドで65キロ前後、サードで105キロぐらい)ことと、ギヤ・チェンジがすばやく出来ることが大きな原因だ。

出足の点ではコロナといい勝負だ。両方ともSS1/4マイル19.7秒という快足の持ち主である。

第三京浜でもこの快足ぶりは証明された。アクセル・レスポンスがいいというか、アクセルを踏んだ途端にエンジンの回転が上がり車速がグンと増す。従って追い越しが非常に楽だ。

箱根の坂ではトップとサードで70キロ/時で登り切れる。大型トラックが5台続いているのをサードで一気に抜いたが、このときが60キロ/時。それでもフル・スロットルではなく、アクセルに余裕がある。乗用車が7台続いたときでも、割と急坂だったのでセカンドに落とし、一気に60キロで追い抜きをかけた。

この点は三段ギヤでは出来ない四段ギヤの良さだ。1500cc以下はどうしてもパワー不足になるので、四段にし、それを補った方が無理もかからず、トルクの低下も避けられて、快足ぶりを満喫できると私は日頃から思っているので、なおさら感じるのかも知れない。

内装面は可もなく不可もない。メーターが見やすいこと、ボンネットが下がっているので、前方視界が妨害されないことが良い点。1000ccクラスなので、1500ccクラスの室内調度は望む方が無理。だが、最大限の努力は認められる。

室内騒音もアイドリング時は分からないほど静かだが、走行中は“静かだ”と大声をあげるほどではない。しかし、同じクラス車と比較してみると、確かに“随分、静かじゃないか”という声が同乗者からおきた。特に気がついたのは、路面からの音がほとんどなかったことだった。

二日目は雨だったが、ロードホールディングは良い。6・00-12と幅の広いタイヤの威力が感じられた。ボルボの6・50タイヤにほぼ匹敵するコーナリングの良さを感じた。

出足、加速、運動性はやはりこのクラスではピカ一で、軽快な戦闘機というのがこの車の身上だろう。

 

当時の新聞広告。「プラス100ccの余裕」でライバルである日産サニーに差をつけた

 

<解説>
軽快な走りを重視して開発された初代カローラだが、試乗記を見てもその狙い通りの出来であったことがわかる。現在ではおとなしいファミリーセダンという印象のあるカローラだが、当時としては今で言うスポーティセダンに近い性格だった印象だ。

本文中で比較しているのは3代目コロナだが、1500ccと1クラス上のコロナに対して引けを取らない走りの良さは、大きなアピールポイントとなったといえるだろう。当時は高速道路の整備が進められており、名神高速が前年、東名高速、中央自動車道は翌年に部分開通という時代だったから、走りに対する関心が高まるのも無理がない。ライバルである日産サニーに対抗すべくエンジン排気量を拡大し、「プラス100ccの余裕」として速さやゆとりをアピールしたのは、まさに慧眼だったといえる。

反面、インテリアはクラスを超えた豪華さを狙わず、ここはキッチリと上級のコロナと差別化が図られていたこともうかがえる。メリハリの付け方、引き算の巧みさはいかにもトヨタらしいところだ。

試乗車は登場直後の2ドアセダンだが、初代カローラはその後、4ドアセダン、2ドアクーペ(カローラスプリンター)などを加え、バリエーションを拡大。発売2年後の68年にはコロナを抜いて国内販売第1位を達成。その後も代を重ねながら2001年までの33年間に渡ってトップセラーを続けていくこととなった。

<関連記事:初代カローラ開発者、長谷川龍雄氏が語る「設計者の意図」>

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