【アーカイブ】ダイハツ・ラガー試乗記(週刊Car&レジャー・1984年5月掲載)

週刊Car&レジャー アーカイブ

今秋の東京モーターショーで、ダイハツから登場するのでは?と噂されているのがコンパクトSUV。人気が高いカテゴリーだけに大いに期待したいところである。そこで今回はダイハツの小型SUVの歴史を少し振り返り、昭和59年に登場した「ラガー」を試乗記で紹介。現代版SUVとは少し趣が違うが、目指す方向性は今も昔も同じようだ。

 

<週刊Car&レジャー 昭和59年5月19日発行号より>

●乗った!走った!楽しんだ!ライト感覚の4WD

かつてスペシャル化された存在であった4WD車は、いまや駆動方式の一形式として通常に選択できる。そのスパルタンな機能が先行して市場拡大が図られたわけだが、ユーザーニーズに対応して4WDの中で、昨秋の第25回東京モーターショーのダイハツコーナーに参考出品され、デビューが待ち望まれていたのがラガーだった。

試乗したのはソフトトップDX。初夏の風に包まれながらのドライブを楽しみたかったからだ。夏の陽ざしを受けて海岸道路をという状況ではなかったが、箱根の景色を楽しみながら全身でドライブフィーリングを味わうことができた。ボディタイプには他に、ワゴンタイプで豪華装備のレジントップ、多用途性に富んだハードトップがある。さらに、機械式ウインチ装着の有無によりグレードが分けられ合計5タイプと、選択に不自由することはない。

レジャー感覚に富み機動性が特徴のソフトトップ。そのスタイルは堅実な剛性感の中にシンプルなカット処理によって、都会的に洗練されたもの。4WDにありがちな居丈高な威圧感はない。ライト感覚の4WD、つまり軽快なスポーツ心をフィットさせる。しかも、その本領は大地を掴んで進むラガー(ラグビー選手)スピリットに溢れたもの。

コクピットに乗り込む。乗用車感覚のハンドルとインパネ。チルト&パワーステアリングや各種メーター&レバー類は素気内従来の4WD感覚に乗用車感覚をプラスしたものだ。フロアシフトが採用されているので前席は2名乗用、後席は折りたためるベンチシートに2人掛けとなる。そして、多彩な演出が楽しめるのがソフトトップの強み。幌を脱いでエンジン始動。

室内音はどうか?という判断はムリだが、DL型ディーゼルの回転音は静かで振動も少ない。多用途性を配慮したトルク指向のディーゼルエンジンを搭載。最高出力79馬力/3600回転、最大トルク18・0㎏・m/2200回転と、トルク重視型。そのトルクウエイトレシオは74・4㎏・mで、4WD他車を圧倒している。

強めの発進加速をトライ。クイックでしかもマイルドな加速が楽しめた。的確なギヤ比によるエンジンとのマッチングもよく、2速・3速の加速感は相当なものだ。しかも回転数を低く設定してあるため、小気味よいシフトチェンジにより、軽快なスポーティ走行を生んでいる。

●ガサツな操作は似合わぬ

また、トランスファは一般走行用の2H、積雪路やラフロード用の4H、急坂や泥ねい地などのオフロード用の4Lに加え、Nポジションを持つ本格タイプ。2Hと4Hの切り替えは走行中にも自在で、高速道路からラフロードまで、道路条件を問わず走破。高トルク指向のガッツなレスポンスを引き出し、それがトップまで均一に伸びていくので、ガサツな操作は似合わない。パワーステアリングがオン・オフロードを問わず、均等に機能してくれるので取り回しの良さは申し分なし。ソフトでしっかりとした操作で乗りこなすのがふさわしい。

もちろん、レジャー感覚を強調したソフトトップには、自分のアイデアを吹き込むことによっていろいろなカスタムメイドで楽しむことができる。広い荷室スペースと4WD機能を有効に使えば渓流釣りやサーフィン、スキーなどオールシーズンのアウトドアスポーツに役立つ。オプション装備には、乗用車感覚のハロゲンフォグランプやリヤヒーター、AM・FMカセットステレオなどのオーディオセットなどがあり、オフロード走行にはリミテッドスリップデフ、ワイドラジアルタイヤなどが用意されている。手広い用途に対応した都会派4WDラガーは4台分の楽しさを兼ねたクルマだ。

【ラガーソフトトップDXの主要諸元】
全長 : 3655㎜
全幅 : 1580㎜
全高 : 1830㎜
ホイールベース : 2205㎜
トレッド前/後 : 1320㎜/1300㎜
車両重量    : 1340㎏
エンジン型式  : DL
総排気量    : 2765㏄
最高出力    : 79PS/3600
最大トルク   : 18・0㎏・m/2200
60㎞/h定地走行燃費:16・0㎞/ℓ
サスペンション前後:半惰円リーフスプリング式車軸懸架
ブレーキ 前   :ブースター付ディスク
後   :リーディングトレーディング
ステアリング   :ポールナット(パワーステアリング付き)
タイヤ : 6.00-16-4PR

 

 

<解説>
ダイハツ「ラガー」は、昭和49年に登場した「タフト」の後継モデルとして登場した小型クロカン4WD。搭載するエンジンは異なるが、トヨタにも「ブリザード」名で供給されていた。

先代のタフトは、ランドクルーザーなどの大型クロカンと、軽のジムニーの間を埋める車種として登場した小型クロカン4WDである。半世紀を経た現在もクロカン市場の状況はあまり変わっていないことに驚かされる。当初はガソリン1Lエンジンを搭載したが、その後エンジンラインアップが変更され、最終的には2.8Lディーゼルまで拡大されている。

後継となった「ラガー」は、この2.8Lディーゼルを搭載。ボディサイズは一回り拡大されたが、他車と比べると依然としてコンパクトなサイズに収められており、取り回し性に優れていた。ラダーフレームに4輪リーフスプリングを組み合わせた本格4WDだが、快適性にも配慮されているのも特徴で、ダイハツとしてはレジャー用途も重視していたことが窺える。

ラガーはその後も様々な改良が施され、ダイハツのオリジナル車としては現在まで唯一となる3ナンバーボディ車も用意されるなどしたが、商業的には苦戦。エスクード、RAV4など、より乗用車ライクな新型車が登場する中で伸び悩み、97年に国内販売を終了している。

Tagged